本・映画・音楽紹介
Vol.1


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●Vol.4 No31〜 ●Vol.3 No21〜No30 ●Vol.2 No11〜No20 ●Vol.1 No 1 〜No10 





No10(1/19)

遅まきながら、デンマーク映画「Dancer in the dark」を観てきました。この映画については、No.2でも触れているように、私がノルウェーにいる間、主役のビョークと監督のラース・フォン・トリアーのトラブルばかりが注目され、揶揄されることが多かったのですが、映画上映中は、他の観客同様、泣いてしまいました。パンフレットには、監督からの「決して結末を他人に話さないで下さい」という、昔、はやったオカルト映画の宣伝文句みたいな言葉が載っています。みなさん、守りましょう。

ノルウェーで集めた関連の新聞記事を読み直してみると、いろいろ興味深いインタビューがありました。カンヌ映画祭で監督と共にインタビューを受けた出演者のカトリーヌ・ドヌーブはビョークについて以下のように語っています(ダーグスアヴィーセン紙、2000年5月18日)。
「ビョークは、(撮影中)大きな苦痛を味わっていた。学校が耐えきれず逃げ出す子供のように、彼女は何度かセットから消えてしまった。(...)ビョークは俳優ではないけど、まるでプロのように見えるのが驚きです。彼女は他の俳優のように演技しませんが、その代わり、全てを感じるのです」。

ドヌーブのこのビョーク評はとても納得できます。ビョークもドヌーブについて「良き理解者」と表現してます(映画のパンフレットより)。実際、映画の中でドヌーブは目の不自由なビョークを陰に日向に支える役柄ですが、実際の撮影現場でも、そうだったのかもしれません。余談ですが、このインタビュー記事には、ドヌーブとトリアーがお互いにとても近い距離で見つめあっている写真が大きく載っています。とてもいい雰囲気、というかあやしい雰囲気をかもし出している写真で、私は好きです。





No9(1/8)

今回は、日本語で書かれた本の話題です。
新聞に出ていた文芸誌の広告を 「一体、どんな人が買っているのかしらん?」と思いつつ眺めていると、「Norgeノルゲ」という文字を見つけました(Norgeとは、ノルウェー語で「ノルウェー」を意味します)。
ということで、講談社の「群像」2月号の巻頭新連載「Norgeノルゲ」佐伯一麦(かずみ)著を立ち読みしてきました。1冊買う勇気と資金がなくて...。今回の稿は、6頁あまりでしたが、すでに主人公がオスロの美術学校に留学する妻に伴って、ノルウェーに来たいきさつが明かされています。フォルネブ空港と書いてあったので、時代設定は、98年秋以前ということでしょうか。2人は、実際に存在するオスロのUllevål(ウッレヴォール)の学生寮に暮らす設定になっています。タックとかわずかにノルウェー語も書かれているので、マニア必読の書と言えましょう。今後の展開が楽しみです。
佐伯一麦氏の経歴など全く知らないのですが、これは実体験に基づいた私小説なのでしょうか?おわかりの方、ご一報を。





No8(1/3)

以前、この欄に紹介したノルウェーが誇るサッカーのスタープレーヤー、ミュッゲンことエリック・ミィクランの本、「Erik Mykland」、興味があるけど、あまりに値段が高いので購入を控えていたら、クリスマスプレゼントで、もらえました。著者は、Håvard Remというライターで、ミュッゲンと同じ南ノルウェー出身。彼は、a-haのボーカリスト、モートン・ハルケットに詩を提供しています。
まだ読了していませんが、ざっと見た感じ、よくありがちなスカスカ・アイドル本とは一線を画す凝った構成になっています。この本をくれたノルウェー人と日本人ご夫婦に聞いたら、本書は売れているそうです。裏表紙に各紙の評論からの引用が載っていますが、それを見る限り評論家受けも良かったみたいですね。





No7(12/16)

ノルウェーは、人口がおよそ400万人しかいないのに、正書法が2つもある複雑な言語事情の国です。しかし、2つの正書法は、勢力が拮抗しているのではなく、ブークモールと言われる方の正書法が圧倒的に浸透しており、西ノルウェーを中心に利用されているニーノシュクは、年々、肩身がせまくなってきています。
12月15日付ダーグスアヴィーセン紙によると、ノルウェー文化審議会が、外国文学がノルウェー語に翻訳される場合、ニーノシュクで翻訳されることが非常に少ないとして、大手出版社に注意を促した旨の記事が出ていました。しかし、出版社側からすると、ニーノシュクに翻訳すると売上が落ちるという事情があるようです。
確かに、ノルウェー人の友人たちは、「ニーノシュクだと詠む気がしない」と言ってました。そのうち、ニーノシュクの本を読むのは、ノルウェー文学を勉強している外国人学生だけになってしまうかも..





No6(11/26)

本のカタログ紹介の中で触れたEdvard Hoemの新作評が、11月25日付ダーグスアヴィーセン紙に掲載されていました。ほぼ絶賛に近い書評でした。
新作のタイトルは、「ドライエル夫人の音楽学校」(Frøken Dreyers Musikkskole)で、舞台は、50年代のベルゲンとのこと。非常によく構成された美しい小説であり、愛、悲しみ、破れた芸術家の夢など大きなテーマに取り組んでいるそうです。特に、女性の人物像が素晴らしいともありました。
Hoemの小説は1つしか読んだことないのですが、なにか失ったものを探している孤独な登場人物が印象的でした。前にも書いた通り、彼の小説はニーノシュクというマイナーな正書法で書かれていますが、彼のニーノシュクは、保守的ではないので、それほど抵抗なく読めると思います。書評を読んだら買いたくなりました。






No5(11/26)

このページで、ノルウェードグマ映画計画をお知らせしましたが、11月25日付ダーグスアヴィーセン紙に映画評が出ていたので、紹介します。
タイトルは「夜が長くなる時」で監督は、モーナ・ホール。かなり辛口の批評で、この映画は「デンマークドグマ映画のコピーに過ぎない」みたいな風に言われています。特に、あらすじが「祝祭」(Festen)というデンマーク映画に似ているそうな。大家族がある大きな祝い事を機会に集まり、過去の辛い思い出などが蘇り、やがてそれはカオスに発展していく、という話しらしい。
ただこの映画は、よりノルウェー色を出すため、ヒュッテ旅行(セカンドハウス)やクリスマスのお祝いを取り入れているとのことです。偽のコーラみたい、なんてひどい書かれようでちょっとかわいそうな気もします。
あーー、「ジャンクメール」「卵の番人(エッグス)」みたいな、ユニークで面白いノルウェー映画戻って来い!





No4(初回更新)

本のカタログが出る季節になるました。これから、クリスマスプレゼントを決める上でも、ノルウェー人には大事なアイテム。
こうしたカタログは、本屋さんにただでおいてあります。この季節に旅行する人は、ぜひチェックしてみては、いかがでしょうか?
写真入りなので、見ているだけでも楽しいです。
以下、目に付く物を列挙します。
・サッカー好きなあなたにお薦め!ノルウェーを代表するプレーヤーで現在、ドイツのチームで活躍しているMyggenこと、Erik Mykland本が出ました。その名も「Myggen」。読みたいけど、298クローネはちょっと...。

・ノルウェー最大の劇作家イプセンの全集がまた出ています。I−IVまでで、1巻は599クローネ(!)。きれいそうですよ。

・ノルウェーでも、俳句を作る人はいます。Olav H.Haugeという詩人ですが、彼の日記全5巻が出ました。5巻で2490クローネ。

・なぜ、こんな本が必要?クロスワード辞典、398クローネ。でも、買ってしまうお年寄りは多そう。

・ちょっと一癖ある出版社、Oktoberから、Edvard Hoemの久々の新作が出てます。ニーノシュクを勉強したい人にはお薦め。

・同じくOktoberの看板作家(?)、Hanne Ørstavikの新作もでてます。これは、買うと思います。

・日本語にも翻訳された推理作家、Anne Holtの人気”ハンネ・ヴィルヘルムセン”シリーズの第7作も出ました。

・ノルウェー人の書いた「Japan」という本が出たみたいですね。表紙になぜか「青」という漢字が刷られてます。

・ノルウェーの大人と先生は怒ってます。もう、ポケモンはうんざり?大手出版社、Cappelenから、商魂たくましく、ポケモン本が何冊も!




No3(初回更新)

・ もうクリスマスの話なんて、早すぎる気もしますが...。
10月18日のアフテンポステン紙によると、ノルウェーの国営放送NRKが、恒例のクリスマス子供番組に、昨年、放送して人気を呼んだ「青い山のクリスマス」の新シリーズを製作するそうです。でも、放送は早くても2003年以降とあるので、やっぱりノルウェーペースですね。



No2(初回更新)

・ 久しぶりにアフテンポステン紙の映画ガイドを見たら、最高評価の6点として、カンヌで金賞を取った「ダンサー イン ザ ダーク」とノルウェーを代表する大女優リブ・ウルマンが監督した「不実」が載っていました。
「ダンサー..」の、監督は今をときめくデンマークのラーシュ・フォン・トリアーとアイスランドの歌姫ビョークの、撮影時のトラブルばかりがメディアで注目を集めていましたが、カンヌの受賞以来、おおむねメディアの評判は好意的ですね。もちろん、全く否定的な批評も読みましたが。ラーシュ・フォン・トリアー一派のドグマ的映画作り(?)は、眠れるノルウェー映画界を起こしてくれるのでしょうか?ノルウェーでも「ノルウェードクマ」映画製作が計画されています。
さて、「不実」の方は、ノルウェーの前評判を裏切り、カンヌで何も受賞できなかったことに対して、ノルウェーの新聞は「おかしい」「審査員は、トリアーと仲良しだった」など、往生際の悪い記事をいろいろ載せていました(どこの国でも事情は似てますね)。「不実」は、日本で見られる可能性はゼロに近いでしょうか。脚本がベルイマンなので、スウェーデン好きの人が、上映運動を起こしてくれると嬉しいですね。ちなみに、リブ・ウルマンは、スウェーデンでの暮らし・仕事が長かったせいか、ノルウェー語が変になっています。





No1(初回更新)

・10月16日のダーグスアヴィーセン紙の書評には、トーリル・ブレッケ(Toril Brekke)の短編集「後家さんの天国」(Enkenes Paradis)が紹介されていました。スペインの海岸町に住むノルウェー人の年金生活者の物語と聞けば、はっはーん、と思い当たる方もいるでしょうか?年を取ったら温暖な外国で暮らしたいと移住する日本のお年寄りのように、ノルウェーでも、物価も安く気候も暖かく明るいスペインに移住するお年寄りの姿は、よく報道されていて、スペインに施設を買って、お年寄りに移住を勧める自治体もあるくらいですから、社会現象と言ってもいいでしょう。
この本には、10の短編が収められていて、ある話の主人公が別の話では脇役として登場するテクニックが使われているとのこと。愛、悲しみ、欲、自己顕示、愚かさといった普通の人間生活によく見られる要素を抑制されたトーンで描かれているそうです。秋にふさわしい短編集ではないでしょうか。


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