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社会福祉事情

Vol.2

父親と政治家の両立は難しい?

日本ではよく「仕事か、育児か?」の二者択一を女性だけに迫る傾向がありますが、最近、ノルウェーの新聞では、男性政治家にこの問題を迫った特集がありました。

ご存知、ノルウェーが誇る売上ナンバーワンの新聞、VG(タブロイド紙です)の2002年2月13日版のフロントページは、労働党の国会議員ビャルネ・ホーコン・ハンセンの大写真と共に「子供より政治を選んだー後悔はしていない」とキャプション付き。
以下、特集より紹介しましょう。記事を提供して下さったのは、「男女平等の本」作者であるアウド・ランボーさんです。

まず、ヘッドラインにはかなりショッキングなことが書かれています。
それによると、ビャルネ・ホーコン・ハンセン国会議員は、1ヶ月にたった1回の週末にしか子供に会わないことを告白したそうです。ちなみに彼は、前労働党内閣時に、農業大臣を務め、次期労働党副党首でもある有力政治家
彼の家族構成ですが、やはりちょっと、(日本人の感覚では)複雑ですので、解説しましょう。

現在、ハンセン議員はオスロで妻と3人の子供と暮らしているが、上の2人の子供は妻と前夫の間との子供であり、一番下の子供だけが妻との子供。一方、北ノルウェーのナムソスには、前妻と彼と間の子供3人が住んでおり、彼が訪ねるのは4,5週間おき

同紙の記者とのインタビューで、ハンセン議員は率直に自分のプライベートを明かしています。
確かに子供を少ししか会えないことは、とても寂しいし、子供たちも寂しがっているが、今の自分には、子供との時間よりも政治のほうが大事であること、またオスロの家でも、あまり家族と過ごす時間がないこと、家事をやろうとはしているが、妻に任している現状も語っています。
そして、国会の女性議員たちにも触れ、「彼女たちの多くは、家の外と中で二重に働いている」とも付け加えました。

VGがハンセン議員に取材する前に、同じく有力政治家のスポーンハイム農業大臣(自由党党首)と子供たちとの関係が記事になったそうです。その際、大臣が9年間も自分の子供の誕生パーティに出席していないことが明らかになり、大きな波紋を呼びました。
日本の政治家のみなさんはどうなんでしょう?小泉首相は、まだ三男に会ったことがないんでしたよね?(ノルウェーだったら、この事実だけで、リコール運動?)

そして、同紙のコラムでは、ハンセンが、現在、子供よりも政治に優先権をおいていると述べている事実は、彼がこれから作り出していく労働党の新しい政策の根底にある価値観を考える上で無視できない、とあります。
「男女平等をうったえる当事者が、家では何もしていなかった」...よくありがちです。

さらに男性議員との比較で、「小さい子供を持った女性議員もたくさんいるが、子供よりも自分のキャリアが大事と公言する議員は、誰もいない。彼女たちの多くは、仕事場から駆けつけ、誕生日ケーキを作り、子供のパーティを催している。1週1週、細かいタイムテーブルを作り、子供と一緒に過ごす時間は惜しまない」。と同コラムにあります。

男性政治家と育児、家事の関係性は、ノルウェーでもまだ理想的とは言えないようですが、日本ではまったく「話題にも上らない」テーマで、問題視されるだけでも、うらやましい限りです。なんてったって「ムネオハウス」の国ですから...

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・「日本の女性は優しすぎ」?

今回の記述は、ノルウェーの新聞などを基に書くのではなく、非常に個人的なことになってしまうことを、あらかじめお断りします。

さて、このサイトで何度か名前が挙がっている「男女平等の本」著者、アウド・ランボーさんが先月、観光で来日されました。
私の家に1週間ほど滞在されましたが、ほぼ付きっきりで行動していたので、いろいろなお話を聞くことができました(彼女はとてもきれい好きで、いつもお家をきれいにしているのがプレッシャーになり、来日2日間ほどは、死に物狂いで掃除に没頭!って早速の脱線、すみません)。

アウドさんは、常にノルウェーの「女性問題、ジェンダー問題」に敏感なアンテナを張っており、たとえノルウェーが、「世界一の男女平等国」と認められた現在でも、「まだまだ問題が多い」と監視の目を緩めません。
彼女は来日を3回も果たし、日本の知人も多いのですが、よく「日本の女性は優しすぎる」と苦言を呈しています。
「私たちの男女平等は、勝手に手に入ったわけではないのよ、女性たちが闘って前進してきたの」と、私たちが安易に「あ〜、ノルウェーうらやましい〜」と言うたびに、強調してました。
今回の滞在中も、私が3月にベルゲン大学のジェンダー研究所を訪問した時に、とても素敵な建物でうらやましかった、とポロって言ってしまったら、「黙っていて、そんなにいい場所が手に入ったわけではないの。手に入れるために闘って来たのよ!」と釘を刺されました....。確かにその通り、と言われた後に気付いた次第です。

「一体、私たちは何から始めればいいのでしょうか?」と、ノルウェーのジェンダー関連施設を訪問する日本人が、こうした質問が寄せると思います。
アウドさんは今回、「日本の女性は優しすぎ。もっと闘う姿勢が必要」と強調していました。
3月に私がノルウェーのジェンダー関連施設を訪問した際に、ノルウェーの担当者たちは、「日本の女性たちは、もっと男性の負の面を強調したら?」とアドバイスしてくれました。

確かにノルウェーの女性たちは、男性は女性に比べて、仕事のストレスを多く抱え、早く死んだり、事故死や自殺者も多い。おまけに犯罪者になる確率もとても高く、受刑者のほとんどは男性、といった男性にとって耳の痛いマイナスの統計を積極的に公表しています。
その意図は、男性をいじめてやろう、というものではなく、「男らしさ」の幻想に縛られた男性を、そうしたものから解放してあげよう、という優しいものなのです...もしかしたら、ノルウェーの女性の方が、本当の意味で男性に優しいのでしょうか?
「男女平等の達成された社会は、女性にとっても男性にとっても、住みやすい社会です」というアウドさんの言葉で、この稿を終わりにします。

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「ノルウェーの痴呆ケアシステム」とは −ある修論を読んで−
※「痴呆」→「認知症」に読み替えてください

「何によらず、専門家の話は面白い」。
という言葉、これには私も賛成です!ただし、「素人にも理解できるようわかりやすく」が条件ですけどね。
自分の専門を、全く知らない人にもわかりやすく伝える、ということは簡単そうで難しい − その難事業に挑み、みごと成功した例が今回、紹介する「ノルウェーの痴呆ケアシステムに関する一考察」というタイトルの修士論文です。

筆者のちえさんは、日本の大学でスウェーデン語を専攻し、卒業後はノルウェーに留学を果たした「若き北欧のエキスパート」(←本人から「やめて〜!」の声が聞こえてきそう)。
この修論のために、昨年5月から約半年間、ミョーサ湖にほど近いヨーヴィーク(Gjøvik)市に滞在し、現地調査を行いました。

ちえさんの修論では、まず日本の痴呆ケアにまつわる問題点、「痴呆症の高齢者を精神病院に入院させるのが当たり前」「痴呆ケアを受けるまでのルートが確定しておらず、良いケア先を見つけられるかどうかは運、または家族の熱意次第」などが提起されています。
こうした日本の問題点を、最初にクリアにしてくれたおかげで、私のような「痴呆ケア素人」でも、続くノルウェーの現状報告が、「日本とは違うな〜」と比較でき、内容をより一層興味深いものにしてくれます。

さらに「素人に優しい」配慮として、ノルウェーの社会保障制度について、医療制度システムの説明と歴史、高齢者福祉と痴呆ケアサービスの発展について、わかりやすい説明があります。
この説明から、地方分権が進んだノルウェーにおいて市・県・国が管轄するサービス分野、他の欧米諸国と足並みをそろえた「脱施設化」の流れが、「ふむふむ」と分かる仕組み。

...ここまで読んで、日本の痴呆ケアの問題点と、ノルウェーの社会・保健サービスに関する知識を得て、「おトク感いっぱい」になった読者に、ちえさんは惜しみもなく、現地で汗水たらして集めた(に違いない?)調査・インタビューの成果を教えてくれます。

ノルウェーでの調査場所は2ヶ所
ちえさんがホームステイしたヨーヴィーク市と、オスロから南に60キロの町、ボッレ(Borre)市というコミューネです。
この2ヶ所を選んだ理由として、福祉予算が平均以下の市(ヨーヴィーク)の現状を知ることと、国のモデル自治体として先進的な痴呆ケアの取り組みを行っている市(ボッレ)を比較する意図があったようです。
駆け足の視察旅行では、先進的な、いわば「優等生」的な施設ばかりが紹介されることが多いですが、比較的長期間、ノルウェーに滞在することによって、筆者の現地調査はより厚みを出すことに成功しています。

両市の概要紹介、ケア体制((幾つかのケア地区に分割)、痴呆ケアサービスの内容、保健・福祉サービスへのアクセス方法などの基礎知識から始まって、実際に筆者が痴呆ケアの現場へ足を運び、彼女が見たもの、聞いたこと、疑問に思ったこと、感じたことなどが率直に記されています。

最初に提起された日本の痴呆ケアの問題点(「痴呆性高齢者と精神疾患の混合」「痴呆ケアを受けるまでの確定したルートがない」)は、ノルウェーでは、福祉予算が平均以下のヨーヴィーク市でさえも、存在しないことが明らかになります
その他、痴呆の進行度合によってきめ細かく分かれたケアユニット(ボッレ市)や、早期に痴呆患者を見つけるための「痴呆早期診断チーム」(両市とも)の存在、看護関係者・痴呆ケアの専門家から高い評価を受けている、国立の「痴呆ケア研究所」の活動ぶりなども、筆者は積極的に評価します。

しかし、ヨーヴィーク市やボッレ市の痴呆ケアに問題がないわけでは、ありません。
そうした点も筆者の鋭いツッコミが入ります。中でも印象的だったのは、ヨーヴィーク市の痴呆ケアに関わる人たちのネットワークが欠けている、という指摘。
ヨーヴィークで痴呆ケア専門看護師としてアクティブに活躍する女性と、市民団体「痴呆協会」の地元代表。
交流がありそうなのになかった二人を、ちえさんが間を取り持ったエピソードがありました (ヨーヴィークの人たちは、ちえさんに感謝するように!)

さて、この「ネットワーク作り」という重要課題。
ボッレ市には、すでに行政・現場スタッフ・市民が含まれたネットワークが確立していますが、ネットワーク作りに尽力したあるキーパーソン、リッレさんの活躍も紹介されています。
看護師という立場から同市の痴呆ケアの問題点を認識していた彼は、痴呆ケア研究所、市行政、現場スタッフ間のコーディネーターとして働き、それまで普通レベルだったボッレ市の痴呆ケアを押し上げました。
普通、自分の職場に何か問題がある、とわかっていてもそれを改善しようと実際に行動するのは面倒。せいぜい同僚と愚痴るくらいが関の山、という人からすれば、まぶしいほどの活動家です。ちえさんは実際に、リッレさんと会っていろいろお話しているみたいですが、きっととても魅力的な人だったんでしょうね〜。

この修論には、比較的たくさんのノルウェー語が登場します。

まだ英語などに比べて訳が定着していないことに配慮してでしょうか、「訪問看護」、「配食サービス」などといった日本語の後ろに、それぞれhjemmesykepleiekjøp og utkjøring av matときちんとノルウェー語が記載されています。

ノルウェー語の翻訳や通訳をする者からすると、ちえさんのように社会福祉に精通した人が訳語を見つけてくれるのは、大変ありがたい!と同時に、どんな日本語を訳語に使ったらいいか、という議論が今後、オープンになると感じました。
中には、「別の日本語の方がいいのでは?」という意見もあるでしょう。理解できる人が少ない言語の翻訳は通訳は、それだけ間違いも発見されにくいですが、ちえさんが細かく原語を示してくれたおかげで、「情報開示」の流れが生まれたと思います。
下手をすれば、「誤訳見つけた!」と言われかねない表記スタイルを貫いたちえさんの潔い姿勢を、見習いたいもんです。

修論の最後、「本研究を終えて」と題されたページには、ちえさんの地元である滋賀県大津市の痴呆ケアサービスが触れられています。
大津市は、筆者の予想を超えた痴呆ケア体制の整備に努めているそうですが、市行政も指導できない分野の問題点は存在します。 それは、「精神病院の痴呆性高齢者」問題です。
こうした事実を軽視し、修論で紹介されたノルウェーの痴呆ケアを、ただうらやむだけでは、自分の家族や自分自身が痴呆症患者になった場合、一体どういうケアを受けることになるのか、という不安は消えないでしょう。
読後、様々な刺激を受けた修論でした。


NB!ちえさんは、ノルウェー文化サロンで講演を行いました。講演レジュメはこちらからどうぞ!

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大人は判ってくれない?− 離婚後の子供たちを守る試み

およそ半分の夫婦が離婚を選ぶノルウェーでは、離婚後、母親が子供を引き取り、父親は隔週末&クリスマスや夏休みのある一定の時期、子供と過ごすことが一般的です。
ただし以前本コーナーで、離婚したノルウェーの政治家が、子供と過ごす時間が少なすぎることで批判を浴びたケースを紹介しましたが、こうした問題は、決して一部の人だけに存在するものではありません。

2003年5月27日付、アフテンポステン紙に興味深い関連記事が載っていました。
ノルウェーにあるオンブッドのうちの一つ、子どもオンブッド(Barneombud)が、両親が離婚した子供の権利を守るべく、新たな提案を国会の児童・家族委員会に提出予定と書いてあります。
今回は、その提案内容について紹介しましょう。

まず今回、子どもオンブッドによる提案の大きな目的は、離婚する夫婦が子どもの日常生活について「取り決め」を交わすことにあります。
この提案の背景には、「離婚する際に、夫婦が十分な話し合いをしないことにある」とのこと。
さらに、毎年1100件の離婚裁判の半分は、子どもをめぐる争いという事実を踏まえ、子どもオンブッドは以下の3つを取り決めに含めるべきと主張しています。

・子どもたちが、どれだけの期間、それぞれ父親と母親のもとで暮らすか
・父親と母親の住居を行き来するために必要な旅費
・保育園や学校に関する約束

両親を話し合いの席に召集するのは、知事の責任にゆだねられ、子どもは7歳以上であれば、その場に同席することができます。
子どもには、あらゆる情報や選択肢が提示され、十分に考える時間が与えられますが、自分が発言したくない場合、その権利は守られます。
取り決めは、離婚後3ヶ月以内に結ばなくてはなりません。6ヶ月経っても、同意がない場合、地方自治体の公的機関が子どもの住居を決めます。

子どもオンブッドは、子どもを守るために、「子ども自身が、自分の人生を決める影響力を持つこと。両親といえども、子どもに対する権利には境界線を引き、子どもの自由や安全を乱すことは許されない」ことが、重要と指摘しています。

離婚後、子どもとの接触を失ってしまう父親が多いことを、ノルウェー人から聞いたことがありました。
そうした問題が、今回の子どもオンブッドの取り組みによって顕在化され、様々な議論が起きること、さらにそうした議論に当事者の子どもたちが、加われることを期待したいですね。

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やっぱりミニミニ方式

男女平等センターをめぐる議論

ことの発端は、ノルウェー政府のコンサルタントが発表した「男女平等センター」に関する調査分析レポート。
その内容は、同センターに対して「活動が政治的過ぎる。もっと学術的な機関になるべし」とかなり辛口の批判に終始しました。
以降、同センターを巡る活発な議論が展開。「同センターを閉鎖すべし」といった保守党若手議員の意見、「男女平等センターの役割は大きすぎるので、それに合わせた人的資源が必要」とコメントした元男女平等オンブッドのアンネ・リーセ・リーエンが目につきます。
そして当事者である男女平等センターが、レポートに対する反論をHP上で公開、「ジェンダーの問題は、政治的であることを免れない」というのが、その主旨です(http://www.likestilling.no/nyhet/?vis=156)。
(2003年6月13日「Aftenposten」紙、2003年6月14日「Dagsavisen」紙」より)

スポーツ選手へのセクハラ問題

ノルウェー体育大学のカーリ・ファスティング(Kari Fasting)教授は、ノルウェーのスポーツ界がセクハラ問題を真剣に受けとめていないと警告。
同教授の調査によると、15歳から39歳までのスポーツ選手のうち、3人に1人はコーチやその他スタッフから、セクハラを受けたことがある、という結果でした。
しばしば加害者の人柄が良く有能な場合が多いことが、選手からの告発を難しくしているということです。
(2003年6月15日「Dagsavisen」紙より)

DVと外国人女性被害者たち

ノルウェーには、DVの被害者が避難するシェルターが全国に約50箇所あります。
昨年度、シェルターに避難した子どもの数が前年度の2倍に増えました。その背景には、ノルウェー国内に家族や友人がおらず、シェルターに駆け込む外国人女性が急増していることと関連が指摘されています(彼女たちの夫は、同じ外国人である場合、ノルウェー人の場合の両方あり)。
シェルターの運営費は、国と自治体が半分づつ負担しています。が、現家族省大臣は、自治体100パーセント負担へ変えるように提案し、それに対して財政難に苦しむシェルターは反発。特に予算が少なく経済的に困窮しているシェルターは、閉鎖せざるを得ない状況にまで追い込まれています。
(2003年6月23日「Aftenposten」紙」より)

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ノルウェーの文学界を男女比でみると

日本では3年前に、活躍する女性作家たちのブックガイド「L文学完全読本」(斎藤美奈子編、マガジンハウス社)が出版され、その後もJ文学と並び、L文学という言葉が浸透しました。ノルウェーでも、こーゆーブックガイドを出版してくれればいいのに、と思っています。

ですが、興味深い記事をもらいました。
ノルウェーの各出版社における男女の作家数の比較や、男性・女性作家がどのようなジャンルの小説を扱っているかの比較に関する内容です(ダーグブラーデ紙Dagbladet、05.05.20)。

調査の対象となったのは、見事、ノルウェー文化審議会Norsk Kulturrådの「図書お買い上げ制度」innkjøpsordningに合格した小説です(2004年)。すでに出版された本が「品質検査」に合格すると、同審議会により一定部数(成人向け1000部、子ども向け1550部)を買い取られ、公共図書館や学校図書館に送られる仕組みです。ですから、この「お買い上げ制度」にパスした製品=図書は、「一定以上の品質」である証となっています。

前述の記事によると、昨年、小説のジャンルでお買い上げになったのは、103タイトル。
そのうち、3分の2が男性作家、3分の1が女性作家です。
そしてそれぞれが扱っているジャンルは以下の通り。女性作家の方がより「地に足がついた現実路線」、男性作家の方が、ファンタジック傾向なのでしょうか。

分類 女性作家   男性作家
成長譚・家族小説   40%  15%
ミステリー      9%      24%
歴史 9% 12%
アウトサイダー・存在小説  9% 13%
社会小説  9% 16%
諷刺・ファンタジー     0%      16%
その他 25% 15%

次に、各出版社別の男性・女性作家の出版数比較表。なお、系列の子会社も含まれます。

出版社 女性作家 男性作家
Gyldendal(含 TidenとKolon) 11.5 27.5
Cappelen 3  10
Det Norske Samlaget
Aschehoug(含 Oktober) 15 13
中小出版社(Damm, Eide, Kaggeなど) 12

出版社ごとにこれほどの違いがあるとは、やや意外でした。もちろん、この「お買い上げ制度」にもれた作品は、含まれていないので、この数だけで判断するのは難しいでしょう。でも、中小出版社では、女性作家が不人気なのでしょうか?

ノルウェーの新聞記事でよく、このような「数の比較」が目につきます。映画スタッフ男女比、演劇スタッフ男女比、音楽ジャンルの男女比などなど。印象だけではなく、数で分析!地道な作業の積み重ねが大事なんですね。

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新しい男女平等オンブッド長官

2006年1月から、現在の男女平等オンブッド(オンブズマン)Likestillingsombudetは、「男女平等・差別オンブット」Likestillings-og diskrimineringsombudetに組織変更されます。その初代トップが発表されました。
名前は、ベアテ・ガンゴースさんBeate Gangås、42歳です。彼女の経歴は、男女平等センターLikestillingssenteretのニュースから読めます。

オスロ大学で法学士を取得(1991年)する前に、同大学で発音学と言語学の勉強を1年(1985年)していたのが、目を引きますね。また学生時代を含めた10年間(1981-1991年)、オスロ近郊の精神病院で看護アシスタントのお仕事をされていたようです。
1992年からは、警察に勤務。2001年からは警察庁組織犯罪部門の責任者を務めるなど、警察高官としてキャリアの持ち主です。

新長官は、女性とのパートナーシップ婚関係にあり、同性愛者であることをオープンにしています。ダーグブラーデ紙は、同性愛者の全国組織(Landsforening for lesbisk og homofil frigjøring)が祝意を表明している旨、報道しました(Dagbladet.05.09.12)。
「自分がパートナーシップ婚をしていることに注目が集まると思うが、わずか数年のうちに、かなり状況は変わっている。新しい世代は、よりオープンな態度になってきた」とのこと。

組織変更に伴い、オンブッドは、性別による差別だけではなく、人種や宗教に起因する差別ケースも取り上げることになりました。新しい長官と新しい組織が、どのような活動をしていくのか、来年が楽しみです。

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女性教授増員作戦&両親と暮らす子どもの最新統計

気になる新聞記事。
切り抜いているのですが、切り抜くだけで満足。。。ではいかん!という気持ちが2年に1回くらい訪れます。気持ちが失せないうちに、ご紹介いたしましょう(Aftenposten, 2007年2月10日)。

●女性教授&助教授増員作戦をめぐる議論

女性進出世界一といわれるノルウェーでも、大学教授の男女比は、男性8:女性2というアンバランスさが以前から指摘されてきました。問題が顕在化されてから相当時間が経っているのに、なかなか成果が上がらない・・・といった現状です。
そこで、研究職における女性差別撤廃員会(KIF)が、文部省にこんな提案をしました。女性教授、助教授を採用した大学にはボーナスをあげましょう。1人の雇用に付き、50万クローネ(約9百万)。どっかの国の再チャレンジ計画よりも、太っ腹ですね〜。

KIFの提案に対し、異議を唱えている人が、「人権同盟」(Mennskerettsalliansen)代表のダーグ・オイスタイン・エンツスー(Dag Øistein Endsjø)。
曰く、「女性だけではなく、他に差別を受けているグループにも、ボーナスポイントが適用されるべし」。同団体は、11の人権団体を束ねる機関です。同性愛、障害、人種の異なるグループ・・・などを念頭に置いた発言だそうです。
保守党の国会議員は、KIFの提案を好意的に受け止めつつ、人権同盟の主張にも理解を示しています。
今度の展開に注目ですね(2年後?)。

●両親と共に暮らす子どもの数、減少

中央統計局(SSB)の最新統計(2006年1月)によると、0歳〜17歳までの子どものうち、両親と共に暮らす割合が75%で、89年の82%から減少傾向にあることが分かりました。原因として、「離婚や、サンボー(sambo事実婚)解消の増加」が挙げられています。
結婚している両親と暮らす子どもの割合も減少傾向にあり59%、事実婚の両親と暮らす子どもは16%、片親と暮らす子どもは15%。

地域差もあります。西ノルウェーの県ソグン・オ・フィヨルダーネSogn og Fjordaneは、最も高く81.5%。一方、北ノルウェーの県フィンマルクFinnmarkは、66.8%。宗教観から来る離婚率の高低が背景にあるかと思います。

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ノルウェーのウリは、世界有数の・・・・

「フィンランドカフェが盛り上がっているらしいね」「また”フィガロジャポン”の北欧特集でノルウェーがスルーされたそうですよ」
「ノルウェーカフェも今年から、やるみたいですけど・・・」
「ええ〜、全く知りませんでしたよ」「一体、何をやるんでしょうね・・・」「サーモンとトナカイ?」
などど、日々、日本におけるノルウェーの認識度の低さやウリの少なさを嘆く方々は、私の周囲には多いのですが、いつものアフテンポステンの記事に一筋の光明を見出しました。タイトルは、「ドイツ人が、ノルウェーのパパ育児休暇を学ぶ」(2007年10月13日)。

そうなのです、サーモンでもフィヨルドでもなく、いわんやトロール人形やバイキングハットでなく、外国で人気なのは、世界有数と言われるノルウェーの先進的な「男女平等・家族政策」だったのです!!お土産屋さんで売ってないのが残念ですが、ちょっと記事から紹介してみましょう。

先週の月曜(15日)からノルウェーの国王夫妻がドイツを訪問されたそうですね。
国王夫妻は大変です。ただ暢気に外国訪問をするだけでは許されません。自国の商品の売り込みまでしないと国民が許してくれません。
例をあげれば、石油、エネルギー、ガス、観光業、料理、文化などです。
これらの定番メニューに加えてドイツ政府からノルウェーの子ども・平等省にリクエストがあったのは、「企業が行う男女平等施策に関するセミナー開催」でした。
ここで注目したいのは、「企業が行う」という点であることです。
今まで日本でも、様々なノルウェーの男女平等施策に関わる方々が来日し、講演をされましたが、「企業目線」というものはあまりなかったように感じます。観客も圧倒的に女性ばかりでした(それが悪いというわけでは決してありません)。

今回のドイツにおけるセミナーでは、ノルウェーのMicrosoft社の役員がスピーカーとして選ばれました。同社は2005年、ノルウェーにおける「最良の会社賞」に選ばれたそうです。その理由は、手厚い育児休暇制度にありました。
ノルウェーの国の施策として、パパ育児休暇は6週間が義務化されていますが、Microsoft社では、全てのパパに6ヶ月間の有給育児休暇が認められます。グローバル化に伴い世界の中でも、企業間の競争は熾烈を極めている昨今、かなり「太っ腹な」方針に見えますね。ですが、競争が激しいからこそ、なるべく男女平等・家族施策を充実し、優秀な人材を確保するという目的があるとか。実際に、こうした目的は、低い離職率、低い病気休暇率、そして高い収益率に結びついていると同社は説明しています。

なかなか「男女共同参画」とか言っても、耳を貸さないおじさまたちを上手に絡めとるために、今後は、「もうかりますよ」とアピールするのが良いかもしれません。
たくさんの統計で世界一または上位を占めているノルウェー。
もっと、自国の良い面をPRしても良い時期ではないでしょうか?

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