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2013年2月15日(金)
<番外編>ノルウェー映画「キング・カーリング」鑑賞記

今年で3回目を迎える「トーキョーノーザンライツフェスティバル」。(TNLF)
ノルウェーから来日したポール・シュレットアウネ監督の「チャイルドコール 呼声」(原題「Babycall」が日本初上映となり、トークショーが行われ、不肖・青木が通訳をつとめました。

それ以外に特筆すべきは、今年は「ノルウェー特集」ということで、同国映画を3本も上映してくれたこと。
プログラムに載っていた強烈な写真に魅かれ、コメディー映画を観に行くことにしました。
タイトルは、「キング・カーリング」(2011年)です。
生徒さんと「課外授業」と称し、渋谷のユーロスペースへGo!

冒頭、ノルウェーで屈指のコメディアン、Atle Antonsen(アトレ・アントンセン)がカーリングをしている姿で、普通のノルウェー人は爆笑すると思います。
その顔、その姿でもうそれだけで笑えてしまう・・・。
この「箸が転がるだけで笑える状態」は、とあるノルウェーの番組を思い出させました。

95年、初めての留学で西ノルウェーの田舎町のカレッジ在学中。
学生寮である晩、テレビの前に隣人たちがどんどん集まってきます。
「なになに?」と事情が分からぬまま、私もテレビの前に鎮座しました。
そこから始まったのは、お笑い番組です。
ノルウェー語がよく分からない私も、大いに笑える番組でした。というか、周りの学生たちが、ともかくひーひー笑っているので、それにつられたのかもしれません。
タイトルは、「Lille lørdag」(ささやかな土曜日)。
伝説的なお笑い番組です。

この番組にAtle Antonsenは出演していませんが、彼の相棒である、やはりメジャーなコメディアンであるHarald Eia(ハーラル・アイア)が主役を務めます。
(蛇足ですが、彼は「キング・カーリングで最後のラジオパーソナリティーに友情出演(?)しています)。

「キング・カーリング」を見て、この「Lille lørdag」と同じ系統を感じました。
観客は無条件に笑ってしまう、「箸が転がっても笑う」映画です。

とはいえ、ノルウェーのお笑いと日本のお笑いは異なる点も多々あります。
特筆すべきは、「キング・カーリング」では、メンタルに病んでしまった主人公をお笑いにしてしまっていること。
これは2001年にアカデミー外国映画賞にノミネートされた「Elling」という映画を想起させました。
「Elling」に出てくる主人公たちも、多かれ少なかれメンタルに問題を抱えていますが、ユーモアのあるタッチで、「可哀想」でなく、「面白い」と感じる映画になっています。
「キング・カーリング」では、メンタル面に問題を抱えた人々が集う「グループセラピー」のシーンが登場しますが、これも完全に「ギャグ」シーンになっています。
日本のお笑いも随分と過激なことに挑戦しているように見えますが、少なくともテレビや映画といったメジャーな媒体では、その手のジャンルは「タブー」になっている印象があります。

どちらがいいとは判断できませんが、国民性の違いなのでしょうか。
「お笑いの対象になる」という意味では、精神疾患を抱える人もそうでない人も「平等」に扱われているのが、ノルウェーと言えるのかもしれません。

また、「キング・カーリング」がある種のノルウェー映画の法則性に従っている点は、「全然、ルックスのいい男性が出てこないこと」。
「おじさん図鑑」に登場するような、見事な「おじさん」っぷりです。

顔のみょーに濃いおじさん。
おたくなおじさん。
カツラでヘアスタイルを決めまくっているおじさん。
ロッド・ストュアートになりきっているおじさん。
MCハマーで踊りまくるおじさん。
おじさん好きにはたまらない仕上がりです。

・・・ということで、貴重な映画を上映して下さった「TNLF」のスタッフに感謝します!


キュッパカフェ@トーキョーノーザンライツフェスティバル

2013年2月5日(火)
早くもノーベル平和賞候補?

ノルウェーが管轄のノーベル平和賞の選考は、最近とみに評判が芳しくない気がします。
オバマ大統領は時期尚早だったのでは?
EUにあげるって、単にヤーグラン選考委員長がEUのシンパだからあげたの?
などなど、ここ日本でも疑問の声があがることも目立っていましたね。

来年のことを言えば鬼が笑う、ということわざがありますが、早くも今年のノーベル平和賞候補が記事になっていましたので、ご紹介しましょう(Aftenposten紙、2013年2月2日)

・・・というかもうすでに2/1が候補者推薦募集の締め切りだったようです(私は絶対推薦されていない自信アリ!)。
ちなみに昨年の候補者は231人。
多い、それともこんなものでしょうか?
ここから25人~30人までに絞り込んだ「ショートリスト」を作成し、最終選考、となるようです。

今年の平和賞候補者の顔ぶれですが・・・。
平和研究所(PRIO)所長、Kristian Berg Harpvikenはすでに自分のショートリストを作成しました。
そのリストのトップは、パキスタンの女の子、Malala Yousufzai(マララ・ユサフザイ)です。
彼女はまだ15歳ですが、タリバンに怯えながら教育を満足に受けられない女子教育や平和の必要性を訴え、テロリストたちから銃撃された事件にまで発展してしまいました。
日本を含む世界で大きく報道されたので、みなさんもご存知でしょう。
マララさんはノルウェー労働党の3人の国会議員から推薦されました。
所長は語ります。
「ノーベル憲章には、子どもにノーベル賞の候補にしてはいけないとはどこにも書いてありません。
たとえ選考委員会が、平和賞をこれほど若い人に与える影響について長い議論が必要になるとしても、ね」。

同所長のリストには、ロシア人女性3人の名前もあります。それぞれ人権活動家です。
プーチン政権下では、人権抑圧などが問題となっていて、さらに言論の自由を抑制する新法を作りました。
そうした中、果敢に活動する女性たちを推薦するノルウェーの国会議員たちがいます。

3人目の候補者で、かつ「本命視」されているのが、Dennis Mukwege氏。
コンゴで婦人科医療に携わる同氏は、レイプ被害者支援や戦争における性犯罪を防止する活動をしています。

同所長のコメントを再び引用しましょう。
「Mukwege氏の名前は今までも何度も上がってきました。
そしてノーベル平和賞選考委員会は、同氏を高く評価していると確信しています。」

3月にならないと、誰が推薦されたか公表されないそうです。
今年は大多数の人が、「うん、納得!ノルウェーやるじゃん」って思えるような選考に期待したいですね。


オスロのノーベル平和賞センター

2013年1月30日(水)
ノルウェーで働く外国人たち

あまり情報が入ってこないのですが、2/1から日本とノルウェーの「ワーキングホリデー制度」が始まりますね。行く人いるのかしら?って私が心配することでもないのですが・・・。
ワーキングホリデーを飛び越えて、ノルウェーで働く外国人についての記事があったのでご紹介しますね(Dagsavisen紙、2013年1月30日)。

2012年の統計でみると、外国人労働者は49294人ということで約5万人。
うちEUまたは欧州経済領域内からの労働者は、39756人。
それ以外は9538人となっています。

国別でみると、ポーランド、リトアニア、ルーマニア、ドイツ、ラトビア、英国が上位を占めています(スウェーデンは北欧内ということで、登録外扱いです。実際はポーランドよりもスウェーデンの労働者が多いです。)
EUおよび欧州経済領域外の労働者は、労働ビザおよび滞在ビザが必要ですが、そのほとんどが、「スペシャリスト」扱いです。つまり専門の高い技術を持っている人のことですね。
分野としては、IT、高等教育機関での講師、石油・ガス分野の専門家などが目立っています。

Aker Solutionsというノルウェーの企業では、同国のオフィスに70もの国籍の人々が働いています。
メキシコから来たJuanさんはこう語っています。
「ノルウェーは仕事をするのに素晴らしい国だよ」と。
彼はエンジニアであり、ノルウェー人の妻との間に子どももいます。
ポジションも責任あるディレクター職ですが、ノルウェーでは仕事とプライベートの両立が可能であること、またノルウェーの福祉制度に満足しています。
「メキシコの家族や友だちに、僕がノルウェーでどんな生活をしているか話をすると、ほとんど妬まれるほどなんだ。
母親と父親の育児休暇制度なんて、まるでディズニーの映画のように聞こえるみたいだね。」

人口500万人のノルウェーはさらに外国人労働者を必要としているようです。
とりわけエンジニア職の不足が目立つ、と指摘されています。
また労働大臣は以下のようにコメントしています。
「私たちは、特別な技能を持った外国人労働者を必要としています。エンジニア、医療従事者など。しかし、外国人労働者だけに頼るのではなく、ノルウェーできちんと教育し、人材を育てることが大事です。」

日本ほどではないですが、高齢化を迎えるノルウェー。
将来を見据えて、外国人労働者の確保が火急の問題でしょう。
ジェンダー、国籍といった壁を乗り越えた「多様性」がノルウェーではすでに基盤ができつつあるようです。


これは各国の翻訳者が集まったパーティ

2013年1月23日(水)
アルジェリア人質事件~Statoilトップの苦悩~

今これを書いている1月23日9時20分現在、アルジェリアのテロ組織に拘束されたノルウェーの人質の安否は不明です。
日本でもプラント建設大手「日揮」の社員の人命が多数、奪われたことで、大きな注目を集めた事件です。
大型ガスプラントの建設には、多国籍のスタッフが携わっていました。
ノルウェーでは、最大手のStatoil社がこのプロジェクトに関わっています。
同社のトップが、NRK(ノルウェー国営放送)のニュース番組でインタビューに答えた様子がサイトに掲載されていましたので、ご紹介いたしましょう(2013年1月22日)。

Statoil社のトップ、Helge Lundが事件の第一報を聞いたのは、実に日本へ来た直後だったそうです。
「私は事件の重大性をすぐに理解し、できるだけ早くノルウェーへ戻らないと、と決断しました」

-石油会社のトップとして、今回のテロ事件は悪夢でしたか?

「アルジェリアで起きたことは、悪夢よりもっとひどいものです。
私たちの会社は、安全性を何よりも最優先しています。今回の事件は、私たちの会社が未だかつて経験したことがないものでした。」

-あなたは人質の家族たちに会いましたね。どんな印象でしたか?

「恐怖と不安にさらされた人たちと会うことは、非常に強い印象を私に与えました。
人質の家族の皆さんが望んでいる答えやはっきりしたこと、安心を与えられないことは、わが社全体としても、とても辛いことです。」

-あなたは今回の事件でとても苦しんでいる。こんな状況で睡眠は取れますか?

「いろいろです。今週はあまり眠れなかった。しかしながら、私たちがきちんと休息を取らないと、組織全体がこれから長期にわたって機能しなくなるでしょう。」

-誰があなたを支えていますか?

「私には身近にいてくれる同僚がたくさんいます。また会社以外でも、政府はサポートをしてくれています。」

-これからStatoilがどうなっていくか、という議論はありますか?

「私たちの活動について議論していくことについては、歓迎しています。しかしながら、今回の事件は国際的なテロ事件であり、テロリストたちが直接、ある会社や社会に攻撃することは望みません。
と同時に、私は会社の代表として、全従業員が安全に仕事ができるよう腐心することが大事です。」

-今回の事件は強い体験となりました。あなたはトップとして変わりましたか?

「そう思います。私の最も重要な責任は、従業員すべての安全です。このことはトップになってからずっと考えてきたことです。
今、まだ5人の社員の安否が不明です。このことが頭を離れることは無理でしょう。」


さて、日本とノルウェーでは、対応に違いが見られました。
日本では殺害された方々、また人質の氏名は非公開ですが、ノルウェーでは写真とともに氏名が公表されています。
これは一概にどちらがいい、とは言えないでしょう。
(注:日本政府は人質の死亡確認と遺体の到着後、氏名公表に踏み切りました。)

ノルウェーは石油・ガスといった主要産業なしでは、経済が成り立ちません。
今後、リスクの高い国への進出はどうするのか、大きな問題として立ちはだかるでしょう。

まだ、いろいろな国の人質の安否が不明です。
亡くなられた方々に哀悼の気持ちを表すとともに、まだ不明の方々が1人でも無事でありますよう祈りたいと思います。


平和な日常が一番

2013年1月9日(水)
警察官の武器携行はNei

2013年初の更新です。
今年もメジャー&マイナー、暇ネタなど取り上げていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

さて、ノルウェーは、「世界一快適な刑務所」や、武器を携行しない警察官など、こと刑事関連に関しては、「性善説」に基づいて物事が進んでいる、という印象があります。
今回は警察官の武器携行について新しい動きがありましたので、ご紹介しましょう(Dagsavisen紙、2013年1月8日)。

前述したように、ノルウェーの警察官は武器を携行しません。
しかし、極右テロの影響があったのでしょうか、こんな動きがありました。
昨年の11月、警察共同委員会の全国集会で、ノルウェーの警察官の一般武器携行を支持をする、と採決があったのです。

スカンジナビア3か国で見てみると、スウェーデンとデンマークは警察官の一般武器携行を認めています。
この間の日曜日、デンマーク警察によって麻薬の密輸を試みたノルウェー人が射殺されるという事件がありました。もちろん本国では大騒ぎです。
また金曜日は、スウェーデン警察が、ノルウェー人の強盗に発砲するという事件もありました。彼は重体です。

2011年の統計によると、スウェーデン警察の発砲は76件、デンマーク警察は87件です。
ちなみにノルウェー警察は1件です。
似ているはずのスカンジナビアですが、ずいぶんな違いですね!

そして、ノルウェー政府は警察側からの提案を受けて、こういう結論を出しました。
「ノルウェー警察は、一般武器携行はしない」
つまり現状維持ですね。
では、ノルウェーの警察官は武器を持たずに平和に市民を守る、というスタイルが続くのかというと、そういう訳でもないようです。
クリスマス前に、警察官の武器携行に関するワーキンググループが、パトロール中のパトカーに武器を載せることを認めることを提案しています。
現在、パトカーの75%が武器を載せているそうです。

「すべてのパトカーに武器を載せるのかの結論はまだ時期尚早です。しかし、直に、もっと多くのパトカーが武器を載せることは確実でしょう」と法務省の事務次官はコメントしています。

ノルウェーは世界的にみても治安のいい国であることには違いありません。
ですが、極右テロをきっかけに「安全保障」について、警察や行政、そして市民の意識が変わったことは否めません。
今後の動きに注目したいと思います。


これは警察音楽隊です

2012年12月26日(水)
第3外国語は何がお好み?

ノルウェーに留学して、いろいろな国の学生と知り合いました。
驚くことはたくさんありましたが、中でも「何か国語も話す」ことは、さして珍しくないこと。
東欧の学生だったら、母国語+英語+ドイツ語+ロシア語とか・・・。日本では英語ができるだけで重宝がられるのに、ずいぶんな違いです。

かくいう北欧人、ノルウェー人も多言語をマスターしている例は珍しくありません。
小学校2年生(日本では小1に相応)で英語の授業が始まり、そして中1で第3外国語を学び始めます。

私がノルウェー語を始めた18年前頃は、第3外国語はフランス語かドイツ語の選択と聞いていました。
でも現在ではスペイン語もメジャーな選択肢として加わっています。
最近の第3外国語の人気分布が載っていましたので、ご紹介しましょう(Aftenposten紙、2012年12月15日)。

今の統計によると、このような結果です。
  • スペイン語・・・34.9%
  • ドイツ語・・・26.4%
  • フランス語・・・14.7%
すごいな~、スペイン語の人気!
やっぱりバカンスで、スペインのグラン・カナリアとかに旅行するノルウェー人が多いから、学習欲につながっているのでしょうか?これくらいしか理由は思いつきません・・・。

これ以外の言語についても載っていました。わずか0.4パーセントの生徒たちがロシア語、中国語を選んでいるそうです。日本語は~?

さてこの結果を受けて経済界は、こんな指南をしているようです。
「外国語を学びなさい。特にドイツ語を学ぶのです。ドイツ語はセクシーに聞こえないかもしれないけど、でもドイツはノルウェーにとって重要な産業のパートナーです。」とノルウェー版経団連NHOのアドバイザーは、コメントしています。

いずれにしてもノルウェーはわずか500万の小さな国。
外国語を複数操ることは、ほぼ死活問題ですね。

あとちょっと記事から外れるのですが、Facebookとかでノルウェー人のプロフィールを見ていると、できる言語のところに「スウェーデン語、デンマーク語」を加えているケースが多いですね。
これって理解できる?のレベルでは・・・。本当に話せる?書ける?とツッコミたくなります。

いずれにしても、日本の先行きは果てしなく暗いようなので、外国語の1つでもマスターして、移住できるように準備を整えたいですね♪


何て書いてある?

2012年12月12日(水)
統計でみるクリスマス

おお、もうアドヴェントカレンダーもずいぶんと開いてきましたね(って持ってないけど)。
今年のノルウェーは雪もたくさんあって、きっとクリスマスで盛り上がることは間違いないでしょう。
そんな「クリスマス」(ノルウェー語ではJul)を統計で今昔を比較した記事を見つけたので、ご紹介します(Aftenposten紙、2012年12月11日)。

まずクリスマスには、たくさんのご馳走を作ったり、家をピカピカにしたり、と家事が増えるイメージがあります。
中央統計局(SSB)の統計によると、1980年の方が2010年よりクリスマス前の女性の家事時間が多かったとのこと。
これはやはり、お料理と掃除が当てはまりますが、食料品を除く買い物の時間は減っているそうです(ネットでお買い物でしょうか?)。

年間を通じた1日当たりの家事時間は、1時間24分です。
一方、クリスマス前には、それが1時間46分に増えます。え?そんなに大したことないって思います?
ただしこれは男女の平均で、男性の家事時間は59分、女性は2時間17分ですから、やはり女性はクリスマス前にやることが多いんですね!(さすがに今では7種類のケーキ、クッキーを焼く人は減ったと思いますが)。

さてこれだけ準備に時間をかけたおいしいクリスマスディナー。
それを堪能するのには、いつもより食事の時間が延びるようです。
普段は、1日あたり食卓に座っている平均時間は1時間11分ですが、クリスマスイブから始まる3日間は、1時間40分に延びます(え?ラテンの人は毎日2時間は夕食に時間をかけている?こちとらゲルマンです!)。

そしてこの食卓に座っている時間自体が、1980年と2010年を比較すると、15分延びているようです。
もともとのんびりしているノルウェー人。もっとクリスマスにまったりできるようになったのでしょうか?

クリスマスといえば、クリスマス礼拝も連想されます。
ノルウェー人も1年に1回は教会に行くと聞いていたのですが・・・。かなり行く人少ないです!
1980年には、国民の10パーセントがクリスマス礼拝に行っていました。
2010年には、その数が5パーセントに落ち込んでいます。
でも普段の日曜日は平均して2パーセントの国民しか教会へ行かないので、確かに「クリスマスに教会へ行く人は増えている」は間違いではありません。
みんな神様に赦しを乞うようなモードではないのでしょうか?罪深い人が少ないと解釈しましょう。

今週末のサロンでは、ノルウェー人のエレンさんにクリスマスのお話が聞けるので楽しみです。
毎年、ノルウェー人にクリスマスを語っていただいていますが、みなさん、微妙に違っていて面白いんですよ。

人の数だけいろいろなクリスマスがありますね。


アルネ&カルロスのクリスマスボールツリー

2012年12月4日(火)
1人のクリスマス~怖がらないで!~

「ノルウェーのクリスマスは、家族や親せきで集まり、楽しく過ごします」という言葉を、私は何度耳にしたでしょう。
日本のちょっとヘンな方向に走ってしまったクリスマスとは違い、家族を大事にする素晴らしいものだなぁ、と思っています。
でもその肝心の一緒に過ごす家族や親せきがいなかったら?
クリスマスが近づくにつれ、そのテーマがノルウェーのメディアで頻繁に取り上げられています。幾つかご紹介いたしましょう。

まずVG紙(2012年12月3日)の調査によると、人口500万人のノルウェーで、約50万人のノルウェー人が何らかの形で、1人でクリスマスを過ごした経験があることが分かりました。

先週、Aftenposten紙にReidunという88歳の女性が、「1人で過ごすクリスマスが怖い」と勇気を出して声を上げたことが、全国で大きな話題になりました。
Reidunのもとには、「ぜひ家でクリスマスを過ごしませんか?」というお誘いが殺到しているようです。
それだけ、ノルウェー人にとって「1人で過ごすクリスマス」の辛さが想像できるのでしょう。

再びVG紙の報道に戻りますが、Hermansen医師の興味深いコメントが掲載されています。
「みんなが集まろうという時期になると、孤独は大きくなります。クリスマスのお祝いは、ノルウェーでは最も大きなイベントです。と同時に、クリスマスは幸せで楽しく過ごさないといけない、という期待は高まります。
皮肉にも、クリスマスに不安を覚える人もいるのが現状なのです。」

「1人のクリスマス」といえば、前述のReidunさんのように家族を亡くした高齢者特有のものと思われがちですが、実態はもっと若い層にも広がっているようです。

「教会SOS」の事務総長のコメントを引用しましょう。
「実は、1人でクリスマスを祝う若者がたくさんいるんです。複雑な家族関係などが原因で、家族とちゃんと話したくない場合、1人でクリスマスを過ごすことを選ぶのです。」

VG紙の調査によると、「1人のクリスマス」を過ごす65歳以上のグループが19パーセント。20代の若者は、15パーセントということで、事務総長のコメントを裏付けています。

こうした孤独に過ごす人々に対して、赤十字は「訪問友だち」というボランティアを行っています。
全国に7000人いる「訪問友だち」は、いろいろな意味で孤独に過ごしている人を定期的に訪問するボランティアを行っています。

私が最初に留学したヴォルダカレッジの先生は、やはりこの赤十字のボランティアに参加し、老人ホームに住む高齢女性を定期的に訪れていました。
ちょうど先生のもとへはるばる訪ねた日が、その「訪問」の日を重なったので、一緒に老人ホームに伺いました。
先生を待っていた女性は、私のことも歓待してくれました。
きれいに着飾って、お菓子を用意してくれて、楽しくおしゃべりをしたことを今でも覚えています。

Aftenposten紙(2012年12月1日)には、こうした「訪問友だち」のメンバー、Runeのインタビューを大きく掲載しています。
彼も老人ホームに「訪問する友だち」がいるそうです。
そしてクリスマスには友だちのもとを訪れ、「1人のクリスマス」にならないように一緒にお祝いするそうです。
「いろいろな人と会い、様々な体験ができた」という彼の言葉には、重みがあります。

一方、こんな意見もあります。
「1人暮らし全国委員会」の委員長は、以下のように述べています。
「メディアや商売人が、クリスマスは誰かと過ごす、家族の安らぎといった期待を作り上げているのです。クリスマスに1人でも全く平気の人だっています。」

とは言え、やはりノルウェーで「1人のクリスマス」はキツいだろうと想像に難くありません(日本だって辛いですよ!)。
「私は1人です」と声を上げること。
簡単ではないでしょう。葛藤、恥ずかしさなどを乗り越えないとできないことです。

人の数だけ、多様なクリスマスがあってもいいはずです。
家族と過ごせない人に思いを馳せること、何か自分でできることはないか?と自問することをノルウェー人は始めているのだなぁという印象を強く受けました。


先生の赤十字ボランティア

2012年11月27日(火)
ドイツ人のノルウェー愛

日本人からすれば、ドイツは北欧とともに進んだ福祉国家というイメージですが、どうもドイツ人はそう感じていないようです。
ドイツ人がノルウェーおよび北欧へ熱い視線を送っている様子が記事になっているので、ご紹介しましょう(Aftenposten紙、2012年11月11月17日)。

ノルウェーの電車にドイツからやってきた女性たちのグループが座っていました。
彼女たちは、ノルウェーの男女平等省と大企業のHydroを訪問するために来ノルしたのです。
ドイツ女性の1人、Kuballaはこう語ります。
「ノルウェーはドイツに比べてずっと子どもに優しい国です。ドイツではいまだに家事と育児は女性の責任とみなされ、多くの女性は何年も専業主婦になっています。パートタイムで働いている限り、キャリアを積むことは女性にとってほぼ無理でしょう。」

「ドイツでは男性が育児休暇を活用するのは、まだ容認される雰囲気ではありませんね。」とElkeというドイツ女性は続けます。
「ドイツ人男性は、女性にコートを着せる手伝いはしてくれますが、高い社会的地位に上げる手伝いはしてくれません。
ノルウェーでは、男性は女性のためにドアを開けたままにしてくれず、顔の前でドアがバタンと閉まってしまいますが・・・。でも、どちらの方が女性にとって好ましいかは明らかですね」と笑います。

どうやらドイツ人にとっては、ノルウェーは「理想」のようです。
高い出生率、バランスのとれた社会生活と高い生活の質。
それらは羨望の目で見つめられています。

こうした分野以外に、ドイツ人がノルウェーに憧れている分野があります。
それは、クリーンエネルギー。そう、ノルウェーが豊富に有する水力発電です。
もともと環境意識の高いドイツ人は、ノルウェーの水力発電を自国で活用しようと、両国間のケーブルが2018年に完成します。

「ノルウェー愛」ひいては、「スカンジナビア愛」は、若い世代にも引き継がれているようです。
ベルリンにあるHumboldt大学には「スカンジナビア学科」があります。
今年、この学科への志願者はなんと450人!うち入学を許されたのは、150人でした。
日本では考えられない現象ですね~。

「スカンジナビア学科」の学生たちは4つのタイプに分けられるそうです。

  1. アウトドアライフ大好き学生。できるだけ北へ行って、キャンプや野外活動をすることに憧れている。
  2. ブラックメタル・ヴァイキング・中世時代に特に親しみを覚える学生たち。彼らはノルウェー語またはアイスランド語を専攻することが多い。
  3. 福祉国家に憧れる学生たち。今いちばん成長している動機。
  4. 現代アートに魅かれる学生たち。音楽、モード、デザインなど。
いずれにしても、ドイツ語とノルウェー語は共通点が多いから、学習もそんなに難しくないと思います。うらやましいですね!

あとこの記事を読んで思い出したのは、以前の「ノルウェーについて学ぶサロン」にドイツ人の参加者が、ノルウェー人のワークライフバランスを聞いて、「ドイツはこんなに恵まれていない。ノルウェーへ移住したい」と感想をおっしゃっていたこと。
ドイツも長い夏休みで知られていますし、ほとんど北欧と違いはないかと思っていたので、意外だなぁと感じました。

地味だけど、いろいろな国、いろいろな人から憧れられる国、ノルウェー。
たとえ、お間抜けなところはあっても、これからも世界の「理想」であり続けて頂きたいなぁ~と思います。


ごくありふれた風景

2012年11月13日(火)
マウンテンバイクXCの女王、来日!(ニュース番外編)

みなさん、「マウンテンバイク」という単語は知っていても、そうした競技があることはあまりご存知ないかと想像します。
私はノルウェー大使館経由で、ミヤタサイクルさんから、こんな仕事の依頼を頂いた時も??の状態でした。

ノルウェーにすごいマウンテンバイク(MTB)クロスカントリー(XC)の女王がいる!
彼女の名前は、Gunn-Rita Dahle Flesjå(グン-リタ・ダーレ・フレショ。注:日本では“ガン・リタ”が通称)。
アテネオリンピックの金メダリスト、世界選手権やワールドカップ、ヨーロッパ選手権での優勝は数知れず。
そんなすごい選手がノルウェーにいるなんて!
彼女は、11/10開催の「メリダ・ミヤタカップ2012in東伊豆」に参加するために来日することになったのです。
そして昨日(11/12)、ノルウェー大使館にてプレス対象の記者会見とトークショーが催され、私は通訳をつとめました。

依頼をいただいてから、「ええっとマウンテンバイクってノルウェー語で何ていうの?」のレベルから勉強を開始。
そもそもスポーツ選手の通訳は初めてなんですよね~。
役に立ったのは、Gunn-Rita選手のブログです。英語版もあるのでぜひのぞいてみてください。
彼女のプロフィールを見ると、スタヴァンゲルの郊外出身。
両親とともに、小さなころから山に出かけ、陸上のトラック競技やスキー、スケート、サッカーとスポーツ三昧だったようです。
ただ経歴で異色なのは、地方新聞の記者になって、スタヴァンゲルカレッジでジャーナリズムを勉強していることでしょう。

そして1995年、彼女はMTBを始めます。わずか数か月でなんとノルウェー選手権で優勝。その後、すぐに北欧選手権でも優勝します。
そこからはもう世界のひのき舞台で活躍を始め、2009年には男の子が生まれ、出産後も華麗に復帰を果たしました。

今日のトークショーで、「トップであり続けることの秘訣」を聞かれ、「Jobbe hardt」と答えていました。直訳すると「一生懸命働く」です。
彼女のブログを見ると、とても人間味のあふれた素晴らしい選手であることが分かります。
時に病気や負傷に苦しみながら、高いモチベーションをもって、自己鍛錬でトップアスリートの地位を保っている様子が伺えます。

実は今日の彼女も風邪気味で、声はガラガラでした。昨日は全く声が出なかったそうです。
でも彼女はプロですね。
ちゃんとイベントをこなし、いろいろな記者からの質問に誠実に答えていました。

トークショーの最後、司会の山路監督(MIYATA MERIDA BIKING TEAM)が終わりの挨拶をしようとしたとき、Gunn-Ritaは「ちょっと一言、言いたい。ある」とマイクを握りました。
「私は母親であることとトップアスリートであることの両立を保っています。
日本の女性は、出産するとキャリアや仕事をあきらめることが多い、と聞いていますが、どうかあきらめないでください」。

これを聞いて、「ああ、この人はノルウェー人だなぁ」と心から思いました。
自然を愛し、スポーツを愛し、そして家族を愛する。

この彼女のメッセージは記者の方々にも印象に残ったようで、後の囲み取材でもこれに関する質問が多かったです。

短い間でしたが、Gunn-Rita選手を通じて、MTBの世界を覗くことができました。
この機会にとても感謝し、山路監督が率いるチームの日本のトップライダー、斉藤亮選手の走りを見に行きたいなぁと思った次第です(長野まで行かないといけないみたいですが・・・)。

P.S. Gunn-Rita選手の方言はとてもきついので、「なるべくオスロに近い方言で話してくれませんか?」と懇願したら、ちょっとヘソを曲げられちゃいました。
そして別れるときに、「次にノルウェーへ来たらスタヴァンゲルにいらっしゃい。方言に慣れるのよ!」と言われちゃいました・・・・。きっとご自分の方言に誇りを持っているんですね。


美しすぎるXCの女王!


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