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2013年7月2日(火)
ノルウェーの嫁姑問題

そもそもノルウェー語には、「嫁」という単語も「姑」という単語もありません。
それぞれ「義理の娘」と「義理の母」という単語があるだけです。
・・・ということをお断りして、ただ日本語的には「嫁姑」と書いた方が早いので、そちらで記述しますね。

ノルウェーにも「嫁姑問題」ってあるんでしょうか?
私の交際範囲で見ていると、1人の「お姑さん」が執拗に「嫁」の悪口を言っているのを聞いたことはありますが、あとはみんな「あっさり」している印象です。
まず「同居」もありえませんし、介護も「嫁の仕事」なんて考えは現代のノルウェーでは考えられません。
個人を大事にする国民性。だから、多少の不満はあっても、「Yahoo知恵袋」や「発言小町」に投稿するレベルではないだろうなぁ・・・と思っていました。

さて先月のノルウェー旅行の帰国便にて。
軽めに読める雑誌ということで、「Hjemmet」(家)という女性向けの雑誌を買いました。
同誌は、日本の「婦人公論」のような読書投稿原稿がウリなのですが、その中に「姑がとうとう戦いに勝った」という見出しの原稿が目に留まりました。
「どれどれ?」と、好奇心が沸いた私。
皆さまにもご紹介しましょう(Hjemmet、2013年No.25)。

この投稿は女性からのもの。彼女=「私」は夫となる人と20代で知り合います。
「私」の家庭は、母親が病気で専業主婦、父は工場勤務でした。父は他の女性を見つけて「私」が10歳の時に家庭を捨てます。
当然、「私」と専業主婦の母の家庭の家計は苦しく、「私」は15歳からアルバイトをすることになりました。
「私」は大学進学をあきらめ、工場で働き、家元を離れささやかなアパート暮らしを始めます。その頃、夫となる彼と恋人関係になりました。

夫となる彼は、安らぎを感じる男性でしたが、彼の家族を訪ねた時に、「私」は「格差」を感じます。
彼の両親は二人とも教員で、母親はこんな質問を浴びせかけます。
「あなた、大学へは行かないの?あなたの母親は仕事をしたこともないの?」
(注:ノルウェーでは女性も仕事を持つのが一般的で、「専業主婦」は、あまり聞きません。)

「私」は彼の母からの厳しい言葉に耐え、また彼も「母の言葉なんて気にしないで」と慰めます。そして二人は結婚し、「私」は妊娠しました。
無事に赤ちゃんも出産しましたが、「私」の不満は残りました。夫は、姑に立ち向かうほどの強さがなかったのです。
姑は赤ちゃんを見て、こんな言葉を浴びせました。
「うちの家族には、教育を受けさせることが何よりも大事。私の孫には工場で働くようなことにはしません。」

「私」の母も、彼の家族と一緒に時間を過ごすのが苦痛でした。夫の母から皮肉を言われるのが常だったからです。
とりわけ、「私」の母が料理を作ることができず、クリスマス料理も満足に娘に教えられなかったことは、姑の格好の攻撃材料になってしまいました。

「私」は度重なる姑の皮肉に耐えてきました。
しかしクリスマスに、遂に事件は起きました。
「私」は気が進まなかったのですが、夫の両親もクリスマスに招待し、一緒に過ごすことにします。
クリスマスディナーの席、乾杯の時に姑はこんな挨拶をしました。
「嫁のリーセは料理も作れないから、あなたは皿洗い担当ね。息子は子どもとゲームするのが天才的よ。」
「私」は姑の冷たい言葉に、改めて怒りをおぼえます。いつものように夫は「そんなに気にしないで」と慰めますが、彼女は決心します。
これ以上我慢できない、離婚しようと。

・・・という経過を経てとうとう「私」は離婚を選びます。
姑の思惑通り、という気もしませんが・・・。

この記事を読んで、「こんな深刻な嫁姑問題ってノルウェーにもあるんだ~」って感動にも近い感情がこみ上げてきました。
相対的にはノルウェーの方が圧倒的に少ないと思いますが、でも人の感情の数だけ何らかの葛藤やいさかいは起こるんですね。
当たり前でしょうか?

嫁いびり?私たちはしないわよ~

2013年6月6日(木)
ノルウェーへの観光客、減少傾向

ノルウェーに行かれた方は、ほぼ全員が「物価が高い!」と感想をもたれるかと思います。
毎年渡ノルして、ノルウェーには慣れている私でも、「この値段はないよなぁ」とため息はしばしばです。
もともとの値段の高さと、インフレでしょうか、毎年、交通費とかちょこちょこ上がっているんですよね。
物価の高さでノルウェー旅行を諦めてしまう方も多いでしょう。

さて本来、観光資源が豊富な国であるはずのノルウェー。
その「観光国」としての地位を危ういものにしているという記事を見つけました。
ご紹介いたしましょう(Aftenposten紙、2013年6月5日)。

記事の冒頭、インタビューされているのはオスロ旅行中のスイスの老夫婦です。
「昨日、レストランで食事をしたけれども、とても高かったわね。」
スイスも裕福な国で物価もそれなりに高いと思うのですが、それでもノルウェーの方が高いんですね。
「たくさんのノルウェー人の友人に勧められて、ノルウェーに来たんです。ここは本当に物価が高いですね。でも、すでにノルウェーへ行くことを選択してから知ってはいました。」
何だか「諦念」という印象のスイス人ご夫婦です。

昨日、公開された「観光指数」調査によると、今年の夏、ノルウェーへ訪れる観光客数は2009年以降、最低の見込みで、昨年よりもずっと低いことが予測されています。
欧州で続く経済危機や将来への不安などが要因として挙げられますが、Innovation Norwayの旅行部門トップは、以下のように分析しています。
「低い観光客予測は、物価の高さやノルウェークローネ高のせいだけではないでしょう。旅行客は、これだけの高い値段を払うのだから、それに見合うトップクオリティを期待しています。ノルウェーの旅行業界は、そこをもっと上手になる必要があります。」

また同調査によると、ノルウェーの代わりにフィンランドやスウェーデンを旅行先に選ぶ傾向が分かったそうです。
「もっと値段が安くて良いサービスの選択肢があるのに、物価の高いノルウェーを売り込むのは難しいでしょう。」とスペインの旅行関係者はコメントします。
同様に、オランダの旅行関係者も、同国の経済状況から、ノルウェーを旅行先に選ぶ金銭的余裕が人々の間であるのかはっきりしない、とコメントしています。

このオランダとドイツからの観光客の減少が、今夏、見込まれています。
経済状況の不安定さ+ヨーロッパの寒かった春も、ノルウェー旅行をためらわせる要因です。
「今年は、ノルウェーよりも暑いエリアへの旅行が人気でしょう」とInnovation Norwayは予測しています。

実はノルウェーで観光をする数が減っているのは、外国人だけではなく、ノルウェー人自身もその傾向があります。
中央統計局(SSB)の統計によると、10年前に比べ、国内旅行に使うお金が減っているそうです。

・・・とネガティブなことばかり書き連ねましたが、明るいニュースもあります。
大型クルーズ船の来航が増えているのです。
ただし、大型クルーズ船はノルウェーの業者には、あまりお金を落としてくれません。
Innovation Norwayは、このクルーズ船のお客さんたちをうまく取り込むツアー実施などを計画しています。

前述の「高い値段を払う=トップクオリティ」について、Innovation Norwayは、「アジアのホテルのようにゲスト一人につきスタッフは増やすことは無理ですが」と断りつつ、ノルウェーにおけるサービス業の地位向上を目指すことも大事、とコメントしています。
確かに、ホテルやレストランの仕事は、低賃金で待遇も良くないというイメージがノルウェーにはありますね。

ノルウェーへ毎年行っている私は本当に「酔狂な人間」なんだなぁ、としみじみ感じる記事でした。
ノルウェーは確かに「宝の持ち腐れ」的な国ですよね。
たくさんの観光資源があるのに、活かされていない、十分にPRされていない、と感じます。
物価高は、あの値段に世界トップクラスの「高福祉」が含まれているので、仕方ないと思いつつ、一時の滞在者である旅行者にも同じ値段はキツいよなぁというのが偽らざる心境です。
「なら、来なくていいよ」ってノルウェー人は言いそう。
そういう人たちです。

フィヨルド!!

2013年5月21日(火)
Sushiが、新たなピザに?

スシ、喰いね~という「しぶがき隊」の歌は、全てを予見していたのでしょうか。
寿司、ひいてはsushiが世界を席巻する日が来ることを。すごい!
・・・と少々、強引な始まりですが、そのsushiブームにノルウェーがすごく貢献しているんだよ、という自画自賛的な記事を見つけたので、ご紹介しましょう(Aftenposten紙、2013年5月18日)。

在ノルウェーのHong Tranさんは語ります。
「僕がノルウェーに来た1989年、スシのことを話題にしている人は誰もいなかった。でも段々、スシの人気が高まってきてたんだ。そして2年前に自分もスシレストランを開くことに決めたんだよ。」
Hongさんは、オスロ中央駅の商業施設にSushi Cityという店を開き、毎日、500人ものお客さんが来るそうです。すごいですね~。

Hongさんの店だけに関わらず、ノルウェー全体でスシの消費量は増えています。
ここ3年で消費量は実に2倍に増えました。

別にノルウェー人が、「スシ、いけるじゃないか!」と初めに目を付けた訳ではありません。
世界的なスシの流行にノルウェー人というか在ノルのアジア人が乗っかった、というのが実のところです。

例えば花の都、パリ(死語?)。
パリでもスシレストランが爆発的に増えて、今では1400店舗もあるそうです。
そして何と、テイクアウトのピザよりもスシの方が人気があるとか・・・。

そう、ピザ。
こうしたスシの人気ぶりは、70年代、80年代の西側諸国における「ピザ」を想起させると記事にあります。
度々、嘲笑の的になっているノルウェー人の冷凍ピザへの偏愛。
当然、イタリアで食べられるピザとは異なったものになっています。
スシも似たような運命をたどっています。
外国で提供されるスシが日本のオリジナルとは別物である点は、日本人のみならず、日本を訪れ、実際に寿司を食べた外国人でさえも指摘する事象です。

そうなんです。
日本のオリジナルの寿司とスシを大きく分けたものに、ノルウェーのサーモンという存在があります。
「日本ではもともとサーモンを寿司のネタにする伝統はありませんでした。これはノルウェーの水産輸入業者が考え付いたもので、今ではすっかり定着しています。
日本以外の国のほとんどでは、マグロよりもサーモンの方がメインになっているのが現状でしょう」とノルウェー水産業研究者は誇らしげに語ります。

ところで、肝心のノルウェーサーモン。
ご近所のスーパーでは、チリ産の方を多く見かける?という方も多いのでは?
実はノルウェーサーモンの価格の高騰が理由として考えられます。
半年で60パーセントも価格が上がってしまった、とのこと。
これは昨年の海温低下が原因で、生産量が減ったことと関連があります。

同記事では、価格の上昇でノルウェーの輸入業者が儲かると楽観的に分析していますが、どうなんでしょう?チリ産に取って代わられるのでは?と、日本人の私は心配してしまいます。

サンタクロースやオーロラをフィンランドに「取られた」ように、
サーモンもチリに「取られないでね」と、
遠く極東から祈るばかりです。


ノルウェーでは超高値のマグロの赤身

2013年5月8日(水)
オスロの名物書店、短編小説に

知らない街に行って必ず立ち寄るところ。
スーパーマーケットと本屋さんです。

オスロというかノルウェーは書店の寡占化が進んでいて、どの町にいっても、同じような書店チェーンが展開しているのが現状です。
でもオスロには、ユニークな本屋さんがあります。名前はTronsmo
自分で見つけたのか、友達に教えてもらったのか記憶は定かではありませんが、オスロに行くたびに立ち寄るお店です。
このTronsmoの記事について興味深い記事が載っていたので、ご紹介しましょう(Dagsavisen紙、2013年5月8日)。

Tronsmoは創立が1973年。5/15で創立40周年を迎えます。
最初にTronsmoに足を入れた時、そのユニークな品ぞろえに夢中になりました。政治、社会、文学、ジェンダーそして豊富な海外文学と、まだ当時では珍しかった「漫画」のコーナーもありました。いわゆる「セレクト書店」ですね。

前述したように同書店では、40周年を記念し、様々な記念ボックスを販売します。
その中に「純文学」ジャンルがあるのですが、執筆者に名を連ねるのが、現代ノルウェーを代表する作家、Per Petterson(ペール・ペッテルソン)がいます。
彼の代表作は、日本でも「馬を盗みに」(白水社)というタイトルで翻訳出版されました。

実はペッテルソンが作家として成功する前に、1981年から1993年までTronsmoで働いていたのです。
「あの書店で働けたことは素晴らしかった。お客さんたちと僕は一緒に店を良くしようと努めたんだ。とても活気のある時期で、12年間、ほぼしゃべりっぱなしの時期だったね。」と以前のインタビューで語っています。
ペッテルソンは、Tronsmoのことを「僕の唯一の世界」と表現し、今では会社の役員にもなっています。

ペッテルソン以外にも著名な作家たちが、同書店の記念ボックスに寄稿をしたようです。しかも無料で。
いかに作家たちに愛された書店であるかの証でしょう。

以前、Tronsmoは倒産危機があったのですが、書店を愛する文化人たちの働きかけで回避できた、というエピソードを覚えています(このサイトでも取り上げたかもしれません)。

日本にはたくさんのセレクト書店がありますが、ノルウェーではこのTronsmoの存在は非常に貴重です。
次にオスロを訪ねるときには、また立ち寄りたいと思える書店であり続けて欲しいです。


Tronsmo外観
Photo by Erik S.

2013年5月2日(木)
カロリー気にしようね

私が愛するノルウェー人男性の一人、Jonas Gahr Støre(ヨナス・ガール・ストーレ)氏。
彼は長年、外務大臣で、ノルウェーという小国ながらクラスター爆弾の禁止でイニシアチブを取るなど、国際的に活躍をされていました。
しかし昨年、内閣改造で一番不人気なポスト「保健大臣」に就任。
「え~、ストーレ外相が保健大臣、かわいそう!」と叫んだのは、私だけではないはずです(ワタシだけ?)。

なぜ不人気なポストなのか?
は~い、ノルウェーの福祉政策の中でとりわけ悪評なのが、医療分野だからで~す。
ストーレ保健大臣は、問題が山積の病院改革に取り組んでいるようですが、まぁ叩けば出るホコリのように出るわ、出るわ、病院のスキャンダル・・・。
心中、お察し申し上げます。

ですが今回、目についた記事は病院の問題ではありません。
ストーレ保健大臣が、新たな「提案」を行ったと記事にあります。
さて何でしょうか?ご紹介しましょう(Aftenposten紙、2013年4月27日)。

それはストーレ保健大臣が、今春、ニューヨークを訪れた時に閃いたアイディアでした。
ニューヨークではレストランやカフェのメニューにカロリー表記が載っている!
「カロリーはさまざま。これを知ることは役に立つだろう」とストーレ保健大臣は思いつきました。
そして「ノルウェーでもこうした試みはできないだろうか?」と考えたのです。

そのアイディアは、早くも「ノルウェーの外食産業におけるカロリー明記」という形で提案につながりました。

では外食産業の反応はどうでしょうか?
オスロのショッピングモール、Aker Bryggeのバブリー・レストラン(死語?)のOnda Restaurantのオーナーは、お客さんがメニュー選びでカロリーを気にしすぎるのでは?と懸念しています。
「メニューにカロリーを記載するのは、あまりにもお粗末かつ単純な方法です。お客さんが気にしているのは、”この食事はヘルシーかどうか?”であり、カロリーの明記はその答えにはなりません。
カロリーが高い食事の中にも”良質な脂肪”が含まれる場合があります。
クオリティーの高いレストランが提供するサーモンは、大きなハンバーガーに匹敵するカロリーとなるでしょう。」

一方、年々、肥満化するノルウェー人のダイエット指導を行っている人物は、ストーレ保健大臣のアイディアは、「素晴らしい」と絶賛。
立場によって意見が分かれています。

実はこの記事をご紹介するに当たって一番驚いた事実は、ノルウェー人の年間平均外食回数です。
夕食を家で食べる回数は年に291回。
そして、レストランなどで夕食を食べるのは・・・・少ないとは思っていましたが・・・何回だと思います?
答えは・・・10回です!
いや~、私、記事を何回も読み直しましたよ。それでも、「以前より外食の回数が増えている」って、どんだけ~!!(またもや死語)
まぁ、ノルウェーのレストランは高くつきますからね。それにしても、年間、10回とはトホホです。よく、レストランもつぶれないですね~。

ストーレ保健大臣のアイディアは、私はいいと思いますけどね。
だってノルウェーの食事のカロリーってバターたっぷりで、「これ何カロリー?」ってビビることありますから。
ま、保健大臣は外務大臣と違ってなかなか「抵抗勢力」が大きいかと思いますが、はるか極東からエールを送ります♪


このサーモンは何カロリー?

2013年4月25日(木)
オペア制度~光と影~

フランス語でau pairと書く「オペア」。
何のことだかご存知ですか?
実は、私がノルウェー語のレッスンで使っているテキストに「ラトビア人のオペア」が登場します。

オペアは、しばしば若い女性です。
外国へ行き、ある家庭に住み込みで家事や育児を手伝い賃金をもらいながら、地元の語学学校などに通い「言葉を学び文化交流をする」というのが、定義となっています。
ビザの取得は簡単です。
ここ最近、ノルウェーの「オペア」が注目を集めています。なぜでしょうか?
早速、関連記事をご紹介いたしましょう(NRK 2013年4月23日、Dagsavisen 2013年4月24日)。

UDI(移民局)の統計によると、2000年にオペアとして来ノルした外国人は691人。
2013年には、その数が3045人に増加しました。実に4倍増です。
なぜここまでオペアが急増したのか、ベルゲン大学の研究者は解説します。
「ノルウェー人家庭が裕福になったことが、まずその理由でしょう。家事や育児を手伝ってもらうことに、お金を払えるようになったのです。
昔は、自分の家の掃除は自分でしなさいでした。でも今は違います。」

ではオペアの国籍を見てみると、フィリピン人の多さが目を引きます。
2012年、オペアとしてビザ取得をした外国人の81%がフィリピン人たちです。
同記事では、「ノルウェーの家庭にとても満足している」というフィリピン人オペアを紹介していましたが、問題点もあるようです。

水曜日、ファーレモー(Faremo)法務大臣(労働党)は国会で、このような答弁を行いました。
「オペア制度が"文化の交流”から、多くの暗部を抱えた制度になってしまったことは明らかです。このオペア制度の見直しが必要でしょう。」
法務大臣のこの答弁には、どのような背景があるのでしょうか?

実は、ここ数年、フィリピン人オペアがいかに「ひどい扱いを受けているか」がメディアで何度か取り上げられてきました。
あたかも「現代の奴隷」とまで表現されたのです。
低賃金で雇えてしまうオペア。しかもそこに「文化の交流」など行わないノルウェー人家庭が、残念ながら存在するようです。

前述の法務大臣は、オペアを悪用するいわば「ブラック家庭」に対する罰則を盛り込んだ法改正を示唆しました。
そこまで、切迫した現実があるのでしょうか?
答えはどうやら「Ja」=yesのようです。
在ノルウェーのフィリピン大使館は、オペアにひどい扱いをする家庭の「ブラックリスト」を作成しているとか。これは実際に、フィリピン人オペアの抗議を受けて、大使館が作ったもののようです。

私自身の経験で言えば、オスロ大学のサマースクールで同じクラスにいたセルビア人の留学生が、後にノルウェーでオペアになりました。
彼女が働いているお宅にお邪魔しましたが、そこの家庭は「ブラック」ではなく、きちんと家族のように扱っているように見えました。
でもその後、彼女はそこの家が嫌になって、出ていきました。

他には、在ノルウェーの日本人の方から、「同じノルウェー語クラスのポーランド人のオペアが、ノルウェーの家庭で辛い目にあっているようだ」と教えてもらったことがありました。

もちろん、素晴らしい家族に恵まれ、ちゃんと「文化の交流」も実現しているオペアもいるでしょう。
でも制度を悪用しているノルウェー人たちも存在することも、残念ながら事実のようです。
こうした「弱い立場」の人間の人権を、真剣に取り組むノルウェー人たちの「良心」に一縷の希望をつなぎたいと思います。


幸せそうな家

2013年4月10日(水)
カフェ・ムンク@渋谷ヒカリエ

最近はノルウェーのニュース記事ではなく、「身辺雑記」風になってしまい恐縮です。
でも今日はとても面白いイベントに参加してきたので、ぜひ書かせて下さい。

今年はムンク生誕150周年ってご存知でしたか?
ということで、ノルウェーから遠く離れた日本でもイベントが行われます。

渋谷ヒカリエにて、4/10~4/23まで「カフェ・ムンク」が期間限定オープンとなりました。
主催はスカンジナビア政府観光局(STB)です。
そして今日4/10、キックオフパーティが開催され、私も参加することができました。

カメラが多数入っていて、人もたくさん!
思っていたより規模の大きなパーティで、会場は熱気に包まれていました。
私は、公認の「ノルウェー伝道師」中村孝則さんスタイルノルウェー・マガジンの吉田さん、そして北欧部メンバーの森百合子さんという楽しいメンバーと同じテーブルに着くことができました。
そうそう、森さんの最新刊「コーヒーとパン好きのための北欧ガイド」は、もう重版が決定したそうです。
恐るべし、北欧人気!(私は全く波に乗っていませんが・・・)

中村さんは昨日、パリからご帰国とのこと。
「ノルウェーのこと裏切ってませんか?」と軽く冗談を言うと、中村さんは真剣に「そんなことないよ~」と、ノルウェーへの忠誠を誓っていました。

まずノルウェー大使のアルネ・ウォルター氏がご挨拶。
大使は真顔でキラージョークを飛ばすので、通訳泣かせです。

そして、STBのKjell Ellefsen(チェル・エレフセン)さんが、ご登壇されたのですが、すごくシンプルかつインパクトのあるスピーチでした。
「叫び」がムンクの作品であることが知らない人が多い。
そして、ムンクがノルウェー人であることを知っている人はもっと少ない。
だから、「叫び」=「ムンク」=「ノルウェー」を浸透してほしい、とのことでした。
何か、予備校で授業を受けている気分になったのは私だけでしょうか?
頭に残って、おそらく忘れません。

また、今回のイベントでは、会津の起き上がりこぼしと、「叫び」がコラボした「起き上がりムンク」が復興支援限定品として販売されています。
これは、盗まれても盗まれてもちゃんと戻ってくるムンクの絵画と、起き上がりこぼしに見立てた、という説明に「そうだったんだ~」と感動。
でも、これノルウェー人には理解できるでしょうか??

さらに、ノルウェーから成田に今朝到着したばかりというゲストたちも登壇されました。
オスロ観光協会のシャルロッテさんは、ムンクの記念イヤーで沸くオスロにぜひ訪れてほしいとアピール。
またムンク美術館館長のヘンリクセンさんとキュレーターの方が、短い時間で、PRをされます。
6/2より、国立美術館では、ムンクの初期の作品を中心に特別展示を行い、ムンク美術館では、後期の作品を中心に特別展示を行うそうです。
この日程を聞いて、にんまり。
なんと、私のノルウェーツアーに参加すれば、ムンクの特別展示を見ることが可能ですよ!

さて、メインゲストのスピーチが終わり、待望の「試食タイム」です。
喰いしんぼの私と森さんは、すぐに食べ物コーナーに行って、ノルウェーサーモンのオープンサンドや、ミートボール、「叫び」ガトーショコラなどを取ってきました。
「おいしい~」とぱくついていると、中村さんたちは動きません。
吉田さんが、「食べ物を取りに行きませんか?」と誘うと、中村さんはこうおっしゃいました。

「僕が動くと、(人に)つかまっちゃうから」

この名言には、森さんも私も爆笑!
でも中村さんがおっしゃると全然、嫌味じゃないんです。
ホント、中村さんは日本人離れしたルックスだし、誰もが寄ってきますよね~。
モテ男は大変なんだなぁと、しばしばパーティで孤独を味わう非=モテ女は、何とか心中をお察ししました。

会場にはたくさんのムンクの絵画(レプリカ)が飾られ、特別メニューも豊富です。
渋谷でムンクに思いを馳せてみませんか?


取材をうけるムンク美術館館長

2013年4月3日(水)
グロー・ダーレさん来日講演(本番!)

運命の日にも感じた3月22日。
小心者の私には、山ほどの心配事がありましたが、奇跡的にうまくいきます。
まずグローさんとちゃんと待ち合わせ場所で会うことができ、大使館へお連れします。そして、次々と手伝ってくれるスタッフが来館。
仕事をお願いしながら、館内をかけずりまわっていると、もう開場の時間になりました。
続々と入場されるお客様の様子を見ながら、講演が始まる前にすでにぐったりしている自分に気づきました。
「これで講演会の通訳できるの?」と内心、不安が広がりました。

大使館のスノーフリッド参事官のご挨拶で会は始まり、司会の荒川ユリ子さん(ボイの絵本出版プロジェクト)が、開会の辞を述べると、いよいよグローさんの講演です。

グローさんは、「原稿を読み上げるスタイルは嫌い」とおっしゃっていました。
来日直前に原稿を送っていただいたものの当日は内容が変わると思われ、いつもなら用意する日本語の下書きはあえて作らずに臨みました。

グローさんはまず、ノルウェーが世界でもユニークな「あらゆる年齢層に対応した絵本の王国」だと強調されました。子どもだけではなく、大人も読める絵本。
特に、70年代の絵本作家Fam Ekman(ファム・エクマン)の影響は非常に大きかったと語ります(私もファム・エクマンの大ファンです)。
いろいろなジャンルのアーティストたちが絵本の世界に参入し、絵本という独立したメディアが活況を呈していることを生き生きと語られました。

次にグローさんが話題にされたのは、作家たちを支える「本の買い取り制度」です。
商業的ではなく、クオリティーが高いと文化委員会に認められた本は、子供向けの純文学で1550部、大人向けの純文学は1000部の買い取りが保障され、それらの本は全国の図書館に送られます。
つまり図書館にも商業的だけではなく、クオリティーの高い蔵書が並ぶ、というシステムです。
グローさんは、これらの制度が、質の高い絵本を支えているともおっしゃっていました。
ノルウェーは人口500万の小国です。当然、書籍のマーケットも大きくありません。
国をあげてのバックアップ体制が、文化や芸術を守っているという事例は、「さすがノルウェー」と言いたくなりますね。

さらにグローさんは、唯一の邦訳本「パパと怒り鬼」(ひさかたチャイルド)について、質問に答えるという形で言及されました。
本書では、表面的な「お話」の下に何層も、隠されたテキスト・メッセージが込められていること(心理的、社会的、哲学的)、オイヴィンさんとの共同作業、DVについてどのように知識を得たか、などなど。

最後にグローさんは、私が試訳を行い出版を渇望している「Snill」(いい子)に話を移します。
本書に出てくるルッシのような「いい子」の女の子は、ノルウェーの特に大きな学校に必ず2,3人はいること、自分の声を取り戻すことの大切さを訴えます。

遂に、朗読の時間になりました。
そう、私たち関係者が揃って「それやっても大丈夫?」と心配した朗読です・・・。

グローさんの朗読は、言葉にならないほど素晴らしいものでした!
たとえお客様のほとんどがノルウェー語を理解できなくても、グローさんの世界に引き込まれていく様子が手に取るようにわかります。
いろいろと声色を変え、感情が湧き出る迫真の朗読でした。
終わると、満場の拍手喝采。
こうして講演が無事に終了しました。

さて、グローさんも切望していた質疑応答の時間になります。
私ももちろん通訳として参加したのですが、会場の雰囲気が「優しい」ことに気づきました。
グローさんを見つめる皆さんの眼差しが、優しいのです。
幾つか興味深い質問や感想が出ましたが、「あなたがそんなに朗読がうまいのは詩人だからですか?」というグローさんも喜ぶ質問が出ました。

質疑応答が和やかな雰囲気のうちに終わり、皆さんからもう一度、温かい拍手が送られました。
グローさんは、フレンドリーに「パパと怒り鬼」を会場で買ってくれた方々にサインをしています。
私はただただ、「この講演会をやってよかった」という満足感と幸せな気持ちでいっぱいでした。
グローさんは満足そうだし、そして参加者の方々も、おそらくそうなのでは、と感じたからです。それこそが、私の望むことでした。
あとほっとしました!

最後になりますが、グローさんの講演会をサポートして下さったノルウェー王国大使館、そして主催者ボイの絵本出版プロジェクトのメンバーと、スタッフとしてご協力下さった皆々様に心より感謝申し上げます。
グローさんたちは、講演後も日本ツアーを続け、特に「熊野古道」がお気に召したようです。

もっともっとグロー・ダーレさんのユニークな絵本が日本で紹介されるよう、できることをしていきたいと思います。


朗読するグローさん

2013年3月29日(金)
グロー・ダーレさん来日講演(プロローグ)

2年前、「パパと怒り鬼」(ひさかたチャイルド)というDVをテーマにした異色の絵本の日本語版が実現し、私もその出版に関わることになりました。

そもそものきっかけは、ノルウェーで開催された「翻訳者セミナー」で聞いた、作者のグロー・ダーレさんとイラストレーターのスヴァイン・ニーフースさんの素晴らしい講演。
その時の様子は、こちらからご覧になれます。

その道のりは本当に紆余曲折がありましたが、「ボイの絵本出版プロジェクト」という強力なメンバーを味方に得られて、なんとか出版までこぎつけることができました。
お蔭さまで、「パパと怒り鬼」はいろいろなメディアに取り上げて頂き、3か月で重版という恵まれたプロセスをたどっています。

さらに同年、本書のアドバイザーである家族セラピストのオイヴィン・アシェムさんをノルウェー大使館が招聘し、講演したことも本欄で記しました。

さて昨年、私はノルウェーを訪れた際、グロー・ダーレさんにお会いするという幸運な機会を得ました。
純粋に一ファンとして、彼女の別の本についてまた詳しくお聞きしたい、とメールで所望し、人懐っこいグローさんは、「いいわよ、喜んで」と快諾してくれました。

当日。
待ち合わせ場所の国立劇場前で、やや緊張気味に待っていると、あ!あのトレードマークのツインテール姿のグローさんが、「Hei !」と声をかけ、そしてほぼ初対面であるのにも関わらず、ハグしてくれました。
そして私をオスロでも屈指の高級レストランEkebergrestaurantenに連れて行ってくれたのです。

グローさんは、この高級店にパンパンに膨らんだスーパーの袋と、かなりラフなお洋服で来店されましたが、違和感はありませんでした。
そして私は、日本で次に翻訳・出版を考えている「Snill」(いい子)という作品を中心に、その作品のきっかけ、メッセージいろいろと質問をし、グローさんは親しみやすい調子で、答えて下さいました。

パンパンに膨らんだスーパーの袋の中には、グローさんの作品がたくさん詰まっていました。
何と、私へのプレゼントだったのです。
グローさんは可愛いイラストを描きながら、1冊1冊に丁寧にサインをしてくれました!
ファンとしてこれ以上の喜びがあるでしょうか・・・。

ご参考までに「Snill」のあらすじを紹介しましょう。

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おとなしくて、いい子そのものの女の子ルッシ。
手がかからなくて優等生。
そのせいで親からも先生からも忘れられた存在になってしまっています。
そして遂に、ある日、教室の壁の中に消えてしまいます。
必死になって叫びますが、声は届きません。
ようやく周囲の人たちは、ルッシの不在に気付き、必死になって探します。
さてルッシは壁の中から出て来られるでしょうか?
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あれは秋頃だったでしょうか、グローさんからメールを頂きました。それは「来年のイースター休暇に家族で日本へ旅行を考えています。東京で講演をしてもいいですよ」というメッセージでした。
私は喜び、すぐにボイの絵本出版プロジェクトや「パパと怒り鬼」の編集者の方々に連絡を取り、そしてノルウェー大使館にもご協力をお願いして「後援」という形で様々なご支援を頂けることになりました。

関係者の方々の多忙な合間を縫って、講演日は2013年3月22日と決まり、私たちは始動しました。
「さて、来て下さる方はどれくらいいるのか?」と若干の不安はありつつ、準備を進めたのです。

以降、ずっと緊張状態でした。
ですが、告知をリリースすると、意外にもご応募下さる方が多いことが「嬉しい誤算」でした。
こちらでお願いしたいテーマをグローさんに伝え、グローさんからもフィードバックがあり、メールのやり取りは、国内のワーキンググループ内と、対グローさんとで飛び交います。

グローさんのメールは他のどのノルウェー人と違っていました。
ノルウェー人のメールは用件のみの素っ気ないものが多いのですが、グローさんのメールはまるでそれが作品のような、詩のような美しい文章なのです。
講演の準備に追われて疲れている時には、グローさんのメールに癒され、勇気づけられました。

そして来日の直前になって、グローさんはある提案をしてきました。
「Snill」1冊をまるまる朗読したい、と。
時間的にも、そして来場者のほとんどが分からないノルウェー語で朗読することは、リスクが高いのでは?
ワーキンググループや大使館の担当者との協議になりました。
ただグローさんはどうしても譲歩しない姿勢です。

私たちは、朗読は講演の最後に持ってくること(その方が美しいエンディングになると期待)。
また、通訳を入れると時間もかかるし興ざめなので、参加者の方々に私の日本語試訳を配布することにしました。

そうして本番の日がどんどん近づいていったのです。

(つづく)


グロー・ダーレさん@レストランにて

2013年3月19日(火)
増えるカトリック信者

ノルウェーの宗教は?
たまに聞かれることがあります。
もともとは、「北欧神話」を信仰する国でしたが、ヴァイキングの王がヨーロッパ遠征中にキリスト教をノルウェーへ持ち帰り、人々に改宗を迫りました。1000年頃のお話です。
ローマ法王を頂きとするカトリックの教えに基づき、徐々にキリスト教の影響は増していきます。

ノルウェーは14世紀から、デンマークと「連盟」の名のもとに支配を受けます。
時は、16世紀。
ルターの宗教改革がヨーロッパを大きく揺るがし、デンマーク・ノルウェー王は、ルターの宗教改革を支持。
そして1536-37年、両国は「ルター派」=プロテスタントの道を選択します。

現在、ノルウェーは国として「国教会」(Statskirken)と呼ばれる国が管理、財政運営をする宗教が最も大きな勢力・影響力を持っています。

・・・・というのがノルウェーの宗教の流れです。
さて、新聞で宗教に関する興味深い記事を見つけたのでご紹介しましょう(Aftenposten紙、2013年3月9日)。

ノルウェーのカトリック信者たち、と聞いてもあまりイメージがわきません。
ですが、確実にカトリックの信者は増えているのです。
2005年には4万人強だった信者ですが、2012年の3月では登録している信者の数は12万人を超えました。
なぜに人はカトリックの道を選ぶのでしょうか?

日曜日。オスロのSt.Olavs教会には、たくさんのカトリック信者たちが集まっています。
ですが、あまりノルウェー語は聞かれません。
そう、カトリック信者の増加は、ノルウェーに移住してきたポーランド人の増加と相関関係にあります。

カトリック信者たちの国籍のパーセンテージを見てみましょう。
  1. ポーランド 31パーセント
  2. ノルウェー 28パーセント
  3. フィリピン  8パーセント
  4. リトアニア  4.4パーセント
  5. ベトナム   3.7パーセント
「ノルウェーの若きカトリック信者」という団体の代表は、「ノルウェーでカトリック信者であること」について、こう語ります。
「たくさんの人がカトリック教会について質問をしたり、誤解をしています。ですが、興味を持ってくれる人も多いです」。

この記事は、新法王誕生前の記事でしたが、もちろん、ノルウェーのカトリック信者たちは、その結果に注目していたようです。

私の知り合ったノルウェー人で1人だけカトリック信者の女の子がいました。
彼女は、ノルウェーを代表する作家、Sigrid Undset(シグリ・ウンセット)のファンだったのですが、ウンセットはカトリック信者でした。
ウンセットは代表作の「Kristin Lavransdatter」(クリスティン・ラヴランスダッテル)という長編3部作で、宗教=カトリックの重要性を説きます。
美しい主人公Kristinは、親の反対を押し切り、ダメんずと結婚。
ダメんずなので、結婚はうまくいかず、Kristinは最後は神に救いを求めるという感動作です。
(って私は1部しか読んでいませんが・・・)
ウンセットはノーベル文学賞を受賞しました。

大多数のノルウェー人は、1年にクリスマス礼拝にしか行かないほど宗教=プロテスタントにあまり興味がないのが現状です。
同時進行で、東欧の移民たちがカトリック教会を「熱い」場所に変えつつあるようです。


トロンハイムのニーダロス大聖堂

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