最近の話題
ジャンルを問わず、ノルウェーの新聞などから、
面白い・興味深いニュースを紹介するページです。
この度、日記風にリニューアルしました。
ちょっと昔の「最近の話題」はこちらからお楽しみください♪

←最近の話題トップへ
 

 
2012年11月7日(水)
仕事のアイディアはどこで生まれる?

ノルウェー人は、「散歩が娯楽」と最初の留学先で、すぐに気づきました。
晴れの日はもちろん、雨が降ろうが、雪だろうが、ひたすら散歩しています。
一人でも、友達とでもカップルとでも、犬とでも、スタイルは様々。
散歩はもちろん体にいいのは分かりますが、他にも効用があることが分かりました。
早速、関連記事をご紹介しましょう(Aftenposten紙、2012年11月6日)。

スウェーデンでこんな調査がなされたそうです。
「あなたはどこで仕事のアイディアが浮かびますか?」
その答えのトップは・・・「散歩中」と答えた人が31パーセントでぶっちぎりです。
2位は、「睡眠中」で14パーセント。
3位は「その他」ですが、ベッドで起きている状態で思いつく、という答えが目立つようです。

他にも、「友達を会話中」(10パーセント)、運転中(9パーセント)などが挙げられています。

衝撃的なのは、「職場」と答えた人がたったの7パーセントだという事実・・・。
ノルウェーとかスウェーデンとか、職場は広々していて、個室とか下っ端でも与えられますよね?
それなのに・・・・。職場をcozyにするのは無駄なのでしょうか?

あと笑えるのが「トイレの中」が4パーセントありました。うん、何かわかります!

エコノミストで作家のJon Morten Melhusは、こう分析します。
「素晴らしいアイディアは、ルーティンワークや静かに座っている状況から解放されて生まれてきます。だから、会社は従業員により自由を与えるべきでしょう。パソコンの画面の前に、7~8時間も座ったら、創造性を殺してしまい、古臭い考え方しか期待できません。」

・・・お言葉ですが、ノルウェーのオフィスって、かな~りフリーダムな雰囲気だと思うんですが、まだ不十分だったんですね!!

さらに「ノルウェーのオフィスは白い壁ばかりで退屈だ」と指摘します。
「もっと明るい色のオフィスにして、卓球台をオフィスに導入してみてはどうだろう?」

・・・確かにノルウェー人や北欧人は意外と卓球が上手ですよね。
いいアイディアかもしれません(←懐疑的)。

まぁ、でもこの記事納得できる箇所多いです。
私も、ただ歩いている時とか、ジムで走っている時にアイディアが浮かぶことがあります。
あとトイレで座っている時に「あ!」と思いつくことも何度か。
すっかり一流ランナーになったYoko管理人は、走っている間にアイディアが浮かぶみたいですよ。

秋深し。
散歩でアイディアが浮かぶのを待ちましょう♪


10月でも半そでよ!

2012年10月31日(水)
高齢者だってOnline!

今年6月の「ノルウェーツアー」で、オスロの高齢者センターの訪問がプログラムに含まれていました。
センターには、トレーニングルームや美容院などいろいろな施設があったのですが、そこには「パソコンルーム」もありました。
何台かPCが置いてあり、「パソコン教室」が開かれる、と説明を受けました。
ノルウェーはネットバンクがかなり普及しており、PCおよびネットが使えないと、公共料金の振り込みなどもできない、と説明を聞き、「なるほど~」と思ったことを覚えています。
そのエピソードを思い出させる記事を見つけたので、早速、ご紹介いたしましょう(Dagsavisen紙、2012年10月30日)。

「シニアバロメーター2012」という調査には、こんな統計が載っています。
  • 経営者の95パーセントは、50歳以上の従業員は若い従業員と同じくらい新しいことを学ぶ能力があると思っている、と回答。
  • 経営者の57パーセントは、50歳以上の従業員は、若い従業員に比べ、PC、ネット、新しいテクノロジーを学ぶのに劣っていると思っている、と回答。
  • しかしSSP(中央統計局)の統計によれば、50歳以上の人がPC、ネットの能力に劣ると考えている人が、2003年の45パーセントから2012年の28パーセントへ減っている。
さてここは、オスロ郊外のFurusetシニアセンターです。
センターでは高齢者向けの「パソコン教室」が開かれています。
「1948年生まれだって?君は若いなぁ。ここで生徒になれるくらい若いよ」とパソコンの先生、Webjørnさんは生徒にからかわれています。
授業では、ノルウェー人は「これなしでは生きていけない」というくらい大人気のSNS、Facebookの登録の方法を教えていました。

ここの熱心な生徒たち、KristiansenとHjorthaugは、SNSの活用に積極的。特に、Hjorhaugはもう何年も前からFacebookのアカウントを持ち、頻繁に利用しています。
「ノートパソコンも持っているから、ヒュッタ(セカンドハウス)にも持っていくんだ。そうすれば、世界で何が起きているか分かるだろう?」

パソコンのWebjørn先生は、自身のFecebookを開き、生徒たちに、「いいね」ボタンを押すこと、友達の探し方、そして「友達申請」を送る方法を実演してみせます。
「もし友達申請が送られてきても、承認したい時だけすればいいです。距離を置きたい人もいるでしょうから。」

生徒のKristiansenは、1986年からパソコンを使っています。
「習うことは難しくないんだ。でも覚えていることが難しいね」と語ります。
彼には、もっとSNSをうまく使わないと、というプレッシャーがあるようです。
「私には、SNSをアクティブに使っている子どもや孫がいるんだ。そして妻が私に教室へ行くように、と言ったのさ。ここで習って妻に教えているんだよ。」

ノルウェーの高齢者は、体も健康で、長い距離を歩いたり、クロスカントリースキーができる人たちというイメージですが、この分野でも積極的な様子が分かりました。
SNSは、離れて暮らす家族にとって、大事なコミュニケーションツールになっています。
ノルウェーでは、子どもや孫と別居が普通なので、特に必要性があるのかもしれませんね。

前向きなノルウェーの高齢者が、なんだか愛おしいです。


高齢者センターのパソコンルーム

2012年10月19日(金)
元配偶者の暴力から子どもを守るために

昨年、父親のDVを扱った「パパと怒り鬼~話してごらん、だれかに」の出版に携わりました。
出版を記念し、本書のアドバイザーであるATV(オルタナティブ・バイオレンス)というDVに取り組んでいる団体のオイヴィン・アシェムさんが来日しました。
それについては、以前の本コーナーをご参照くださいね。

さてオイヴィンさんの講演の後、こんな質問がありました。
「ノルウェーでは暴力が原因で離婚した場合、子どもは暴力をふるう親との面会権はどうなっているんですか?」
その答えは、え?と意外なものでした。
要約すると、ノルウェーでは離婚しても、子どもは親権を持たない親ともなるべく会う、というのが大原則。
たとえ離婚の理由がDVや児童虐待であっても、面会権の存在は大きく、オイヴィンさんたちのような運動をしている人は頭を悩ましている・・・とのことでした。

確かに離婚した場合でも、子どもにとって両親は必要である、という理想は素晴らしいです。が、子どもに暴力をふるうことが懸念されるような親にまで面会権が与えられるなんて、おかしい、と素人の私でも感じました。

ですがこの現状に変化があったようです。早速、記事をご紹介しましょう(Aftenposten紙、2012年10月13日)。

まず現行の、強固な面会権について、子どもオンブッドの前代表Reidar Hjermannが批判的であったことが記事で紹介されています。
「両親の権利よりも、まず子どもの望みを優先させるべきだ」と主張していたようです。

そうした世論を受け、子ども・平等・社会省は法改正に乗り出します。
そして以下のような提案を行いました。
「子どもの親権を持たない親は、子どもに対して精神的・肉体的な暴力をふるうおそれがある場合、面会権をはく奪することができる」。

同省の法改正提案について、この問題に取り組んできた人々は、「歓迎」を表明しています。
「近親者の性虐待に反対する支援センター」のセンター長もその一人です。
同センターでは、しばしば困惑した母親が、わが子を別れた父親のもとへ送らざるを得ないケースを見てきました。子どもの意思に反してです。
「両親だけではなく、子どもの意見が尊重されるのは素晴らしいこと」とセンター長はコメントします。
同提案では、7歳以下の子どもの意見も聞かれることになっています。
「虐待の危険にさらされる子どもにとって、この法改正提案は、本当に大きな大きな前進です」と喜びを表現しています。

早く提案が、正式な法改正につながることを願わずにはいられません。


誰もが安全な環境に・・・

2012年10月10日(水)
政治家とPR会社の蜜月関係

ノルウェーでは日本と同じように政治家の討論番組が盛んです。
そこは、まさに格闘技の世界。
ある政治家が「これを見て下さい!」と数字を提示すれば、他の政治家は別の事実で反論。
政治家たちは、膨大な政治事項から、国民が興味を持つであろう事実を披露することに余念がありません。
もちろん、わかりやすい言葉でです。
留学当時に見た討論番組では、進歩党(Frp)のSiv Jensenが、現首相のJens Stoltenberg(労働党)に、本当に「食ってかかっている」姿をみて、「こわ~」と思ったことを覚えています。

こうした討論番組に加え、政治家はいろいろな場面で「語る」ことが求められます。
そう、彼ら・彼女らは「しゃべりのプロ」なのです。
そうした政治家たちを影で支えているのが、とある会社の存在です。ご紹介しましょう(Aftenposten紙、2012年10月6日)。

こうした「見られる」政治家たちを支える業界がノルウェーには存在します。
PR会社やPR業界とノルウェー語では表現しますが、日本では広義の意味において「広告代理店」も含まれるのでしょうか(すみません、業界に不案内で)。
いずれにしても、昨年、ノルウェーの政界がPR業界に使ったお金は75000000クローネ(約10億円)。かなりの金額になります。

政治家たちが、PR業界に頼るようになったのは、90年代以降顕著だそうです。
各政党ごとに、使っているPR会社があり、支払っている金額も様々。現政権の労働党よりも、Frpの突出が目立っています。
Frpは、移民制限やより小さな政府を求めている政党です。現政権に対して、一番、「物申す」的なポジションにいるので、コミュニケーションにより多くの投資をしていることがうかがえます。

では具体的にPR業界の人はどんなことをしてくれるのでしょう?
労働党のPR会社は、Corporate Communicationsです。専属のコミュニケーション・アドバイザーが個別の政治家に付きます。
アドバイザーは、すべての新聞に目を通し、クライアントの政治家に「取り上げるべき案件を選び、それに対してどう振る舞うか、そしてどの案件をフォローすべきか」助言を与えます。
アドバイザーはまた情報収集や、ジャーナリストとのコンタクト役も果たします。

この記事には書かれていませんが、私がノルウェーで印象的だったのは、雄弁な政治家たちには、優秀なスピーチライターがついていて、どう発言すればいいのか細かい指示が飛び、ボディーランゲッジに至るまでアドバイスする専門家がいることでした。
今ならば日本にもいるんでしょうね。
それにしてもお粗末な出来栄えなのが残念ですが・・・。

ノルウェーは学校からプレゼンテーションやディスカッションに多くの時間を割き、個々の生徒を鍛え上げていく伝統があります。
その中からさらに選ばれし者が政治家になり、そして専門家の手でさらに磨き上げられていく、という図式でしょうか。

ノルウェーはよく様々なことで、「ノルウェーは最悪だ」って自虐的に言いますが、こと政治家のレベルについては、羨ましいです!おまけに、イケメン率が高いんですよ~(当社比)。

来年の国政選挙が楽しみです!


カジュアルな国会議事堂前

2012年10月3日(水)
ノルウェー系アメリカ人

ノルウェーの歴史を学ぶと、19世紀後半~20世紀前半にたくさんのノルウェー人が「新天地」アメリカへ移住したことを知ります。
例えば1900年~1910年のわずか10年のうちに、人口の8パーセントがアメリカへ渡りました。全部で85万人がアメリカへ移住したそうです。ノルウェーの人口を考えると、すごい数ですね!

私が2回参加したオスロ大学のInternational Summer School(ISS)は、もともとアメリカに渡ったノルウェー系の子孫のために作られたプログラムでした。
ノルウェー系アメリカ人が、自分たちのルーツを知るためにISSに参加するのです。現在では、たくさんの国から参加者がいますが、依然として一番多いのはアメリカからの参加者です。

というように、世の中には「ノルウェー系アメリカ人」という人たちが存在します。
今日は珍しく女性用雑誌「Hjemmet」から記事を引用したいと思います(2012年9月3日)。

何でも民放のTV Norgeには、「Alt for Norge」(すべてはノルウェーのため)というリアルティー番組があるようですね。
そこに出演するのが、Jessica Brustad(ジェシカ・ブルスター)さんという28歳の女性です。
そう、彼女は「ノルウェー系アメリカ人」なのです。

「雨が降っていても、雪が降っていても、寒くて風が強くても屋外にいることが可能なんだってことが分かりました。そんなことは今までは考えたこともなかったけど。でも服装を気を付ければいいのよね。
楽しいこと、面白いことがあれば、どんな天気でも外に出ればいい。これがノルウェーに来て初めて学んだことです。ここは天気が悪いことが多いから。」
とジェシカさんは語ります。

ジェシカさんはカリフォルニアで生まれ育ちました。そこでは太陽は輝き、雨は少ししか降りません。
ジェシカさんのお母さんはイギリス系ですが、お父さんの家系はノルウェー系でした。
そのためでしょうか、彼女は近所でも一番肌が白く、髪がブロンドだったそうです。こうしたルックスは、カリフォルニアでは「北欧的」とみなされるそうです。

彼女のおじいさんはノルウェー語を話すことができました。
家では、ノルウェーのナショナル・デーである5月17日を祝い、クリスマスもノルウェー式。
おばあさんは、ノルウェーの食べ物、レフセを作ってくれました。
「私は、ブラウンチーズも大好きよ!」ジェシカさんは語ります。
ブラウンチーズとは、ヤギの乳で作った独特なチーズのことですね。
DNAがノルウェー人だったのでしょうか・・・。

そして再び・・・・。彼女は、「ノルウェー」という国と関わりを持つことになります。
12年越しの恋人と結婚し、ノルウェーに移住することになったのです(恋人がノルウェー人なのか書いてありません)。

私の経験では、アメリカ人はノルウェー語がすごく上手になるか、全くできないか両極端なのですが、ジェシカさんはどうでしょうね?
いずれにしても、「新天地」での生活が、素晴らしいものでありますように!


ノルウェーの結婚式

2012年9月20日(木)
方言ごとのキャラの違い

すでに3回、「ノルウェー語にトライ!」というイベントをノルウェー大使館で行ってきました。
そこで私は毎回、「ノルウェーの方言」についてご紹介します。
というのも、ノルウェー語を使う上で、方言は切っても切り離せないものなので。
日本だと、地方の人が東京へ引っ越してくると、何とか「標準語」に近づける努力ってしているようですが(除:大阪の人?)、ノルウェーでは「方言」を押し通すケースが多いですね。

そうした「ノルウェーの方言」について興味深い記事を見つけたので、ご紹介しましょう(Klar Tale、2012年9月13日)。

トロンデラーグ地方(Trøndelag)とは、ノルウェー第3の都市、トロンハイムを中心とした中央ノルウェーの一帯です。
ここで話される方言は、トロンデシュク(Trøndersk)と呼ばれ、しばしば、「あの方言、わかりにくいよね~」と他の地方のノルウェー人から言われてしまいます。
例えば、「私」を意味するjeg(ヤイ)が、æ(ア)になってしまうんですよね~。
はい、正直、私も苦手意識があります。

で、そのトロンデシュクは、子ども番組や子ども映画で、「変人役」が使っているケースが多いことが、研究によってわかりました。
ベルゲン大学で方言の研究をしているAnn-Kristin Moldeさんが、「(変人役はトロンデシュクを使うことによって)子どもに、悪影響を及ぼしてしまう」と警鐘を鳴らしています。

Moldeさんの研究によると、熱血漢の役は「ベルゲンの方言」でしゃべることが多いそうです。
ご説明の必要はないかもしれませんが、ベルゲンはノルウェー第2の都市で、西ノルウェーに位置しています。
そして「変人役」のトロンデシュク方言は、まさにトロンデラーグ地方の田舎で話されるような話し言葉を再現しているようです。

そして「真面目な役」は、オスロを中心とした東ノルウェーの言葉で話していることが多い、とのこと。ふ~ん、なるほどね。

Moldeさんは、こうした映像に触れる子どもたちが、ステレオタイプを持ってしまうことを恐れています。
さらに、東ノルウェーの言葉が支配する子ども向け番組・映画では、方言が平等に扱われていないとのこと。
トロンハイム工科大学(NTNU)で北欧語科教授のEideさんも同じような心配をし、こうコメントしています。
「子どもたちは、小さなうちからたくさんの方言に触れるべきです」。

方言が当たり前のように、公の場面でも使われるノルウェーらしい記事だなぁと感じました。ちなみに私が見たお笑い番組では、北ノルウェーの方言が嘲笑の対象になっていましたね。
なかなかみんなが、「ポリティカル・コレクトネス(PC)」になるのは難しいようです。


「熱血漢の街」ベルゲン?

2012年9月8日(土)
「7月21日 愛の物語」~失われた恋人を求めて~

日本でも「ソフィーの世界」の作家として知られるヨースタイン・ゴルデルは、こんなメールを受け取ったことから、物語が始まりました。
「こんにちは。このメールアドレスは、ヨースタイン・ゴルデルさんのものでしょうか?もしそうならば、あなたのとてもファンで、あなたからインスピレーションを受け、あなたの本を勧めた人の話をしたいと思います。きっとその人は、自分が誰なのかあなたに知ってほしいと思っているはずです。」

・・・まるでゴルデルの小説のような出だしですね。
そしてゴルデルの作品の登場人物がそうであるように、彼も好奇心に駆られました。

このメールの差出人は、若き政治活動家のKristoffer Berg(クリストッフェル・バルグ)。
ゴルデルは、クリストッフェルに、話を続けるように頼みます。

クリストッフェルがGuro(グロー)という女の子と出会ったのは、2010年のウート島でした。はい、昨年7/21に連続テロが起きた場所です。
二人は、Facebookや電話、メールを使ってコンタクトを取り続けました。労働党の青年部の活動を通じ、彼の気持ちは段々、固まってきました。
そして、2011年のウート島でのテントで、彼の気持ちは、はっきりします。
「僕は、すっきりとした気持ちで目が覚めた。僕が求めているのはグローだけ。僕は恋に落ちた。」

別のテントではグローが眠っていました。ストーレ外相が訪問した日は快晴。
クリストッフェルとグローの距離はどんどん縮まり、彼はグローの肩に腕を伸ばします。彼女も、それを求めていました。
二人は、暗くなる中、シャボン玉で遊び、そして抱き合って、キスをしました。
そして翌日は、運命の7月22日になったのです。

ブレイヴィークがウート島に襲撃にやってきました。クリストッフェルはこう描写します。
「警官の制服を着た奴が部屋に入ってきた。僕は彼がピストルを構えて、僕たちを撃つのを見た。みんなはバタバタと倒れていった。僕は記憶が何秒か消えた。」

幸いにも、クリストッフェルは逃げることに成功します。
何とか逃げ回って、警察や父親に電話します。そしてグローにも何度も電話しました。しかし、電話では何を言っているのかわからず、助けを求めるメールだけ受け取りました。

ようやく・・・やっと警察が到着しました。クリストッフェルはグローに電話をし、自分は無事だと叫びます。ですが電話の相手は、グローではありませんでした。それは彼女の女友達だったのです。メールを送ったのも友達の方でした。
グローの安否について尋ねると、彼女は亡くなったということが分かりました。
クリストッフェルは叫び、泣き、咆哮し、物を殴ったり蹴ります。

8/3、グローは西ノルウェーの故郷で埋葬されました。クリストッフェルはグローの両親に会います。それはあまりにも悲しい出会いでした・・・。

今年の夏、クリストッフェルはヨースタイン・ゴルデルにオスロ大学の図書館外で会いました。
グローは、ゴルデルがお気に入りの作家でした。そこでクリストッフェルは、ゴルデルにグローのことを伝えようと決心したのです。
ゴルデルはグローの話を聞き、さらにクリストッフェルと哲学や死後の生、7/22の事件についてディスカッションを重ねます。
「君は本を書くべきだよ。」ゴルデルは、言いました。
クリストッフェルは、そんなことは無理だ、と考えます。そこで作家は、彼にエネルギーと自信を与えます。

その結果が、「7月21日~ウート島の愛の物語~」というクリストッフェルのデビュー作に実りました。
このデビューまでには、ゴルデルの力強いサポートがあったのです。

今でもクリストッフェルはグローを愛しています。
ただ彼は、自分は他人からの同情は欲しくないとのこと。
「これからも、グローがしていたように、外に出て生きていくこと。日常の小さな瞬間を楽しむこと、大きな疑問に考えをめぐらせ、世界を見る視線を変えようと望むこと」を果たそうと望んでいます。

7月22日のテロでは、たくさんの若い命が奪われました。
1人1人にそれぞれの物語があります。
生き延びた人にも、これからの人生が残っています。
どうか、あの事件に負けずに自分の人生を全うして欲しい、と願わずにはいられません。
(Aftenposten紙、2012年9月1日)


追悼の花

2012年8月31日(金)
もしオスロで集合住宅を買うとしたら・・・

ここ数年、ノルウェーの都市部の住宅価格はずいぶん高騰している、という印象があります。
以前は東京の方が断然、高かったのですが、あまり差がないというか、場合によってはオスロの方が高い場合もあるような。。。あと石油の街、スタヴァンゲルもかなり住宅が高いようですね。
住宅に関する記事を見つけたので、ご紹介しましょう(Aftenposten紙、2012年8月30日)。

「もしドラ」ならぬ、「もしオスロで、250万クローネ(約3300万円)の集合住宅を買うとしたら、何を重視しますか?」というアンケートが行われたようです(Ipsos MMI調査による)。

最も大事なのは、「間取り」という回答で、87パーセントと圧倒的です。
次は、「公共交通へのアクセス」(85パーセント)、そして「バルコニー」(79パーセント)が続きます。

逆に、重視しないものとして、「共同のアウトドアスペース」(33パーセント)、「低層住宅」(31パーセント)。
もっとも日本と違うと思われるのは、新築へのこだわりでしょうか。「新築がいい」と答えた人はわずか15パーセントです。

集合住宅協同組合(Obos)の担当者によると、まずお客さんが求めるのは「良い間取り、そして専用のバルコニー」ということで、前述の調査が裏付けられます。
あと部屋は2つの物件が人気。さらに、こんな条件も求められるようです。
「近所に緑のある環境が求められますね。」やっぱりノルウェー人です!

あと私が、「ノルウェー人らしいなぁ」と感心したのは、「自分専用のバルコニー」へのこだわりです。
Obosの担当者によると、「大きさに関わらず専用バルコニーがあれば、住宅価格の価値に影響を与えます。」

戦後、オスロ郊外に建てられた、日本でいうところの「団地」のような集合住宅の前を通ったことがあります。
それほど広くもないバルコニーに、ほぼみなさん、テーブルセットを出している景観は圧巻でした。短い夏をいかに戸外で楽しむか・・・・もうこれは死活問題ですね!

調査では、こんな二者択一の問いかけもしています。
「郊外+60~80平方メートル+大きなバルコニー+ガレージ付の集合住宅か、
中心地+30~50平方メートル+小さいバルコニーor無し+ガレージなしの集合住宅」

62パーセントの人が、郊外の方を選んでいます。
やっぱり、ある程度の住宅の広さと「大きなバルコニー」が決め手なのでしょうか?

あとこの記事には載っていないのですが、そのうち「住宅バブルがはじける」という煽り記事を何度も読んできました。
さてその日は来るのでしょうか?
ちょっと気がかりですね。


バルコニーつき集合住宅

2012年8月16日(木)
少女失踪事件とその余波

日本ではお盆明けですが、ノルウェーでは長い夏休みが終わってそろそろ学校が始まるという時期になってきました。
8月になって、連日、ノルウェーのマスコミをにぎわせている事件をご紹介したいと思います。(NRK、2012年8月15日)

その事件は8月5日の深夜に起きました。
オスロの東南部、Østensjøのエリアで、16歳のSigridという少女が帰宅予定時間に帰ってきませんでした。心配した両親は警察に通報します。
付近の人などボランティアが大勢、捜索を手伝ったり、また警察にもたくさんの情報が寄せられました。
捜索の結果、近くの保育園そばから、Sigridのコンバースの靴と靴下が発見されました。
また同時刻に怪しい車がいたという目撃情報もあります。
しかし、まだSigridの行方は不明のままです。また犯罪に巻き込まれている可能性が大きいですが、容疑者はつかまっていません。

実は、このØstensjøというエリアは、私がオスロでいつも泊まらせてもらう友人宅のあるところです。
大きな湖、たくさんの鳥がいて、のどかに散歩する人が多くみられる「事件とは無縁」のようなところです。
なので、この事件発生以降、個人的興味もあってずっと追いかけてきました。

この平和なエリアで起きた不可解な事件は、地域の人々に暗い影を落としています。
Sigridが通う学校の校長は、以下のようにコメントしています。
「新学期を控え、特別な準備をしています。生徒たちに広がっている大きな不安を鎮めることが、私たちの大きな役割です。
できるだけ、普段通りの学校生活が送れるように、安全な日常を築くよう心がけます。」

またSigridの妹が小学7年生に在籍していますが、校長はさらに付け加えます。
「地区の心理カウンセラーを集め、先生たちにも専門的なアドバイスを行っています。」

同学校はさらに、行方不明のSigridの捜索にも参加しています。
1日あたり最大で700人のボランティアが、捜索に加わった日もありました。
このまま不安を残したまま新学期を迎えるのか、それとも事件が解決するのか・・・
事態は難しいようですが、でも少しでも希望を持ちたいと願わずにはいられません。


事件近くのエリア

2012年8月12(日)
DVを逃れて~あるクライシス・センターの夏~

「夏休みをクライシス・センター(シェルター)で過ごす」という記事が、Aftenposten紙のトップを飾っていました。
早速、内容をご紹介いたしましょう(Aftenposten紙、2012年8月10日)。

東ノルウェーのRomerikeにあるクライシス・センターは、今年の夏、ここ20年で最も多いDV被害者の女性、子どもを受け入れました。
現在、8人の女性と7人の子どもが同センターで宿泊をしています。

同センターの職員で子どもセクションの責任者、Nyborgは語ります。
「多くの女性は、暴力で受けた傷の治療を受けるため、緊急医療センターへ行き、そこでDVが発覚します。子どもは自分が体験し、目撃した精神的・肉体的暴力についてヒアリングを受けます。
子どもとの対話をすると、どんなことが分かるでしょうか?
「多くの子どもや若者は、内面に大きな怒りを抱えており、さらに専門家のフォローが必要な状態です」。

このセンターに避難してくる女性の75パーセントは、外国人です。
彼女たちはネットワークを持たず、ノルウェー語の能力も極めて低いです。
また彼女たちの多くは、自宅にほぼ留まるように強制され、店に出かけることの許可も夫からもらえません。

Aftenposten紙が取材で訪れている間、18歳のパキスタン女性が「強制結婚」により、母国へ連れ戻されようとしていると、混乱状態で同センターへ電話をかけてきました。
「もし彼女が強制結婚を拒めば、殺す、と脅されたようです。"名誉殺人”の脅迫は、深刻に受け止める必要があります。彼女は午後、このセンターへやって来ます。」

クライシス・センターへ逃れた女性たちには、さらなる試練が待っています。
それは昨今の「住宅価格高騰」と関係があります。
「新聞は住宅の価格高騰を書き立て、若者たちが家を見つけられないと報じていますが、ここの女性たちはもっと悪条件です。彼女たちが住むところを見つけるのは、とてもとても難しいのです。」

同センターには、3月から小さな子どもと一緒に暮らしている女性がいますが、彼女は家を見つけることができず、ここにとどまっています。

センターの管轄であるRomerike警察もまた、DVの増加に注目しています。
昨年、1月~7月までのDVによる暴力被害通報は、223件でした。今年は、250件に増えています。
「まだまだこの数字は氷山の一角でしょう。私たちはDVを重視する問題と考えています」と、副署長のHerzbergはコメントしました。

オスロのクライシス・センターも今年の夏は、満員状態でした。
オスロもまた「住宅価格の上昇」が、センターに逃れてきた女性や子どもたちの行き場探しを困難にしています。

全国クライシス・センター事務局のSmaadahlは、今夏の状態について以下のようにコメントしています。
「"男女平等の国”と呼ばれる国において、こんなにも多くの女性が、生命を守るために家から逃げなくてはならないのは、恥ずかしいことです。
34年前にクライシス・センターを開所した時には、20年後にはセンターは必要がなくなり、閉所できるだろうと、愚かにも信じていました。
残念ながら問題は、以前も今も同じくらい深刻です。国会や地方自治体など政治への働きかけを続けていきたいです。」

同記事を読むと、「強制結婚」や「名誉殺人」など、日本ではあまりなじみのない単語が並んでいます。
しかし、ノルウェーに住むイスラム教系の住民たちが、今まで何度もメディアで注目を集めてきた要因でもあります。
ノルウェーの男女平等政策が、これらの慣習にどのように対処できるか、これは容易な問題ではありません。

さらに、昨年出版した「パパと怒り鬼~話してごらん、だれかに~」を思い出しました。
DVを子どもの視点から描いた異色の絵本です。

いずれにしても、DVという問題が可視化され、当事者たちが危機感を持ち、政治へ働きかけをしようとする、ノルウェーの取組が今後、どんな展開を迎えるか、動向に注意したいと思います。


子どもが安全に暮らせるように・・・


 ←【18】  【16】→

ホームへ戻る
Home