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この度、日記風にリニューアルしました。
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2012年4月11日(水)
ノルウェーの歴史の闇~映画「孤島の王」~

「悪いことをすると、バストイ島に連れて行かれるよ!」
これは、もう80歳近くのノルウェー人の友人が、小さな頃、叱られると脅されたセリフだそうです。
バストイ島は、オスロフィヨルドのHortenとMossの間に位置する孤島。
ノルウェー映画「孤島の王」は、このバストイ島が舞台となっています。
GW公開の同映画を一足お先にDVDで鑑賞しました。感想文をつづりたいと思います。

物語は1915年。
銛(モリ)に打たれたクジラが瀕死状態で、海を漂流しています。この主人公の回想シーンから映画はスタートします。
エーリングは何か問題を起こした少年たちが送られるバストイ島の矯正所に収容されます。
ここではキリスト教の名のもと、厳しい規律、激しい重労働が少年たちを「矯正」できるという信念により運営されています。

今では各囚人がテレビやPCのある個室が与えられ、「ホテル並み」と揶揄されるノルウェーの刑務所。
しかしバストイ島の矯正所は過酷でした。
容赦ない体罰、性的虐待、そして理不尽なまでの重労働と粗食。
そして少年たちは名前ではなく「C19」「C5」など番号で呼ばれ、管理されます。
すぐにエーリングは脱走を試みますが・・・。

そもそも私がこの映画に興味を持ったのは、ノルウェーの小説家・脚本家、Lars Saabye Christensen(ラーシュ・ソービエ・クリステンセン)が原案を書いたことで、「お!」と思ったことによります。
クリステンセンは、少年や青年を描かせるとノルウェーの小説家でもトップクラスではないでしょうか。
映画化もされた小説「Herman」(ハルマン)では、いじめにあっているけれども、ユーモアを忘れない少年Hermanを見事に描き切りました。
「孤島の王」には、主人公エーリングを始め、オーラヴといった「優等生タイプで正義感あふれる」青年、性的虐待の被害者少年など様々な青年・少年が登場します。
演技の素晴らしさもさることながら、きちんとしたキャラクター設定が、「孤島の王」を厚みのある作品に仕上げています。

さて、この作品では憎々しい寮長を演じているKristoffer Joner(クリストッフェル・ヨーネル)は、他のノルウェー映画でもよく見かけますね~。コメディから悪役まで幅広い役者です。
また院長役のStellan Skarsgård(ステラン・スカルスガルド)は、スウェーデン人の俳優。
劇中でスウェーデン語でセリフを話していますが、全然、違和感ありません。
時に、弱さを見せる非情な院長を演じています。

ノルウェーの冬景色も、少年たちが置かれた過酷な状況とマッチしていて、凍てつくような気分にさせてくれます。
そして冒頭のクジラのシーンが象徴的な意味を持つエンディング。
ひたすら世界観に引きこまれました。

映画に「ハッピーさ」だけをお求めの方には、不向きかもしれません。
また、北欧はただの「おとぎの国」だと信じ込んでいる人にも、キツい映画でしょう。
私は、現在では、世界でもトップの「高福祉・人権国家」であるノルウェーの残酷な歴史に向き合ったノルウェー人たちの勇気に感動しました。
そしてノルウェーや北欧について、多面的に知りたいという方には、強く「孤島の王」の鑑賞をオススメします!


映画「孤島の王」公式ホームページ:
http://www.alcine-terran.com/kotou/
公開:4/28(土)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順公開
配給・宣伝:アルシネテラン

映画「孤島の王」より
©les films du losange

2012年4月4日(水)
ノルウェー学生留学先、中国は人気なし?

今日は4月4日。ゾロ目マニアにはたまらないですね~。(って、この前フリ何?)
常に心は「学生」の心を持ち続ける編集人は、また学生ネタを書きたいと思います(Nettavisen、2012年3月14日)。

見出しは「ノルウェー人学生は中国に行かない」。え?どういうこと?
ちなみにノルウェーの大学やカレッジには、結構な割合で中国人留学生がいます。
私の母校、Voldaカレッジのノルウェー語コースも半数は中国人学生と先生から伺っています。
私がオスロに留学していた1999年~2000年はそれほど中国人の台頭は分からなかったのですが、いつも学生寮の共同台所に集って、中華料理を作っていましたね~。
そこへ偶然通りかかったフリして、おすそわけを頂く日本人学生(不肖、ワタクシ)。
今では全てが懐かしい思い出です。

さて海外へ飛び立つノルウェー人留学生について。あ、これ大学生の話ですよ。
昨年、6000人の交換留学生がノルウェーを離れたそうです。ちなみに全学生数は、236000人。交換留学の道を選んだのは、3パーセント以下です。
そしてその留学先は、ヨーロッパ、オーストラリア、北米がほとんど。10人のうち8人はそのエリアです。
英語以外の母国語のヨーロッパ諸国を選んだ学生の割合も非常に低いです。

一方、ノルウェー学生協会(NSO)は、今、経済が発展しつつあるエリアへ留学生が選んで行って欲しいと願っています。
具体的には、BRIKS諸国。ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカなどです。

NSOのリーダーは懸念を表明しています。
「私たちは、将来、経済的に重要になるエリアと文化的な交流が持てないことが、問題になってくるでしょう」と。
え~っと日本は眼中ないですか?とツッコミを入れたいところですが、日本は「新興成長国」ではないですものね。

ノルウェーは何でも流行が諸外国と比べて何年か遅れて来るみたいですから、5年後くらいには状況が変わっているのではないでしょうか?


Voldaカレッジに留学した学生たちの国旗

2012年3月29日(木)
風変わりな受信料支払法

NHKは「国営放送ではなく、公共放送です」とよく強調している印象がありますが、ノルウェーのNRKは「国営放送」です。
受信料で放送をしている点では、NHKもNRKも同じ。
あまり歓迎されている存在とは言えないことも、両国とも共通しています。
さてこの度、あるノルウェー人が風変わりな方法でNRKへ受信料を払ったという記事を見つけたので、ご紹介しましょう(NRK 2012年3月27日)。

ノルウェー北部のMo i Ranaの受信料課へある荷物が届きました。重さは11キロ。郵送料は255クローネ(約3600円)。
中身は黒いプラスチックの袋で、1499.50クローネ(約21000円)が入っていました。受信料を送りつけてきたのですが、問題はその内訳です。
全て、一番小さな単位の50オーレ硬貨で、枚数にして2999枚!

受信料課の男性は、「こんな支払方法は今まで一度もありませよ!」と笑います。
ちなみにこの荷物の送り主は、トロムスの若い男性でした。
この若い男性は同封の手紙で、今後の受信契約の打ち切りを丁重に申し出ましたが、それまでの受信料は、このやり方で支払った次第です。

ノルウェーは日本以上にキャッシュレス社会です。
極端な話、コンビニでチューインガム1つ買うにもカードで支払うことも多々あります。
ですから受信料も、ネットバンクを通じた支払が大多数で、現金での支払は珍しいそうです。
しかし、NRKはその現金での支払方法も受け付けています。

なお、この受信料課では風変わりな小包を、以前も受け取ったことがあるそうです。
ジンジャークッキーの箱が届いたのですが、中身は何とたくさんのエビ!
おそらく送った時には新鮮なエビだったかもしれません。しかし、NRKに届いた時には、「ひどい悪臭だった」そうです。合掌・・・・。

また、何年か前は、切手で受信料を払ってきた人もいたそうです。その契約者は長年、切手で払っていましたが、現在では、その方法は無効になってしまいました。
受信料セクションの本音は、「切手は私たちも使うし、別に構わなかったんだけどね」だそうです。

受信料をめぐる悲喜こもごも。
日本もノルウェーも同じでしょうか。


50オーレ硬貨

2012年3月23日(金)
心理学科、男子学生にポジティブ・アクション?

オスロ大学留学中に、「心理学」は人気がある分野という印象がありました。
人気があるのは今も変わりがないようですが、学生の性別に偏りがあって問題発生という記事を見つけましたので、ご紹介します(Universitas、2012年3月16日)。

みなさんのイメージだと心理学は、男子・女子どちらの学生が多いですか?
少なくともオスロ大学では、圧倒的に女子学生が多く、女子:男子=8:2の割合になっています。
2753人の志願者数のうち、2000人以上が女子というのが現状です。2010年から男子学生の志願者は減り、女子はぐんぐん伸びています。

心理学科は、こうした「性の偏り」をなくすため、2013年から選抜の際に、男子学生へポジティブ・アクションを行う計画をしています。
ノルウェーの大学では「入試」はありません。高校卒業時の成績などが加味されて、志望の学科に入れるかどうか審査されます。
その審査の際に、「男子」という理由で、特別な加算がなされるのです。

このようなポジティブ・アクションは、理系・技術系の学科に女子学生を増やすために行われた例が有名です。
本来は男性優位の社会において、女性を参入させる目的だったポジティブ・アクション。
その逆のことも行われるのは、いかにノルウェーが「性のバランス」に敏感な国であるかの証と言えるでしょう。

ただし大学内には、男子学生へのポジティブ・アクションに反対の声もあります。
教授の中には、「性の偏りを是正することには反対ではないが、だからといって特別加算が解決法とは思えない」というコメントがありました。
そしてもっと時間をかけて、別のアプローチを図るべき、と提案しています。

いずれにしても、心理学科としては、女子:男子の割合を6:4にする目標を持っています。そして学科としては、男子学生へのポジティブ・アクションを進めたい意向です。

私は昨年、DV被害者・加害者プログラムに取り組むATV(オルタナティブ・バイオレンス)のアドバイザーと仕事を一緒にしましたが、彼曰く、ATVの心理カウンセラーの割合は、女性・男性が半々だそうです。
きっと理想はそうなんでしょうね。

人気のある学科だけに、この試みがどうなるか、大きな注目を集めるでしょう。


オスロ大学の学食

2012年3月14日(水)
Facebookの「友達」に家族は含める?

ノルウェー人のFacebook依存症は、いろいろな機会で言ったり、書いたりしてきました。
確か人口500万人中、Facebookユーザーは300万人。
最近では、ここ日本でもどんどんメジャーなSNSになり、それにつれて「Facebookから個人情報が漏れてとんでもないことに・・・」みたいな、まるで「フリーメーソン」のような怖いロジックで語られる記事も散見します。
というように毀誉褒貶が絶えないFacebookについて、ノルウェー人の「ちっちゃい」悩みを扱った記事を見つけましたので、ご紹介いたしましょう(Aftenposten、2012年3月13日)。

「ママは私が何かFacebookに書いたり写真をUPすると、必ずコメントをしてくるの。まるでママが私を監視しているようで怖い。だからママには見えないようにブロックしたんだ。」とJenniferは地方紙のStavanger Aftenbladにコメントしました。

13歳から22歳の若者の38パーセントは、家族をFacebookの「友達」に加えることを拒んでいます。18歳から22歳に絞ると、36パーセントになります。
これらの調査はノルウェー工科大学(NTNU)で行われました。
「家族に、自分がUPした写真の全てを見られたくないと思う気持ちがあるのでしょう。逆に両親は、なぜ自分たちがその輪に入れないか、いらいらするでしょうね。」
こんな女の子もいます。
「私は両親にすべてオープンにしています。でも、どんな写真をUPするかはより慎重に気をつけているの。」

NTNUで調査を行ったメンバーは、この結果に驚いていません。
「Facebookから両親を遠ざけたいのは、若者たちです。Facebookはプライベートの領域でありそれらは隠したいでしょう。両親の干渉を望まないのです。
彼・彼女たちが書いているテーマは恋人だったり、ナンセンスな話題だったり、写真です。自分だけの空間なんです。」

この調査では、39歳以上のケースも含まれています。この年齢層で家族を拒んでいるのは、わずか10パーセント。
「若い人ほど、家族に見せたくありませんが、年齢が上がるにつれ、それは関係なくなります。と同時に13歳以下の年齢層では、多くの場合、両親がFacebookを閲覧しています。」

では両親以外に、ブロックしている場合があるのでしょうか?
18歳から22歳の若者のグループでは、69パーセントが、自分が好きではない人からの友達申請を断っています。
それと同時に一度、友達として承認しても、嫌になったらば「縁を切る」行為もごく普通です。

この記事がAftenpostenのFacebookのページに紹介されていたのですが、多くのコメントが寄せられていました。
おそらく両親世代でしょうか、「みんなオープンにするんは当然」という意見がありましたね。
また子どもでも、「親に見せることに何の抵抗もない」というコメントがありました。

いずれにしても、冒頭のJenniferさんは1日に数時間もFacebookに費やしているそうで、そちらの方が心配です!
いつの日か、ノルウェー人がFacebookに飽きる日もくるでしょうか?人間関係もややこしくなりそうですし・・・老婆心ながら「依存」にご忠告いたします。


Facebook大好き~

2012年3月7日(水)
高校生の高齢者施設実習

私自身は、ノルウェーの高齢者施設は「高齢者センター」にしか訪問したことがありません。ここは基本的に自立している高齢者が、一緒に夕食を食べたり、サークル活動をする場です。
昨年、ノルウェーツアーで訪問した際に印象的だったのは、利用している高齢者たちの生き生きとした姿でした。
久しぶりにDagsavisenに面白い記事を見つけたのでご紹介します。内容は高校生が高齢者施設で、楽しく実習しているレポートです(Dagsavisen、2012年3月5日)。

オスロのストヴネル高校の「医療・ソーシャル科」を選択したモハメド・アビディサマドゥ(17歳)は、救急車の運転手になることを考えていました。
ですので、高齢者や病人のために働くことは全く想定外で、「そんな仕事は退屈だろうなぁ」と思っていたそうです。
でも現在の彼は意見を変えました。
「僕は将来、介護施設で働きたいです。高齢者たちは僕たちと同じです。お話していて楽しいんだ。」

モハメドが意見を変えたきっかけは、「高齢者と生活を楽しむ」というプロジェクトです。ストヴネル高校が昨年秋、医療・ソーシャル科1年生のために導入したものです。
「1週間に1日、生徒たちは実習へ出かけ、様々な職業を体験します。」と同校の先生は解説します。

「高齢者と生活を楽しむ」プロジェクトでは、一緒に散歩に出かけたり、クイズ大会、ビンゴ、歌を歌ったり、ボーリングをしたり、パソコンや携帯の講座を実施したりと盛りだくさんの内容です。

こうした活動をすることによって、介護職とはおむつの交換や食事の提供よりも、もっとバラエティーに富んだものだ、ということを生徒たちは体験できます。
さらに様々な活動によって、高齢者と生徒の関係は、ぐっと近いものになります。
「生徒たちはお年寄りに楽しみを提供し、また自分たち自身もいろいろなことを学ぶのです。」先生は続けます。

「私たちはこの仕事が、”世話をする”だけのものという神話を壊したいのです。
高齢者たちが清潔で満腹の状態であることだけが重要ではありません。彼または彼女が毎日、笑っていることが大事なのです」。

実は、高校で「医療・ソーシャル科」を選択しながらドロップアウトする生徒の数は少なくありません。
先生たちは、こうしたプロジェクトの導入が、冒頭のモハメドのように、意見を変えるきっかけになるのでは、と期待しています。
「医療・ソーシャル科を選択した若者たちが、そのまま続けて欲しいと願っています。
若者たちは高齢者が白髪でシワがあるだけの人間ではないと体験できるでしょう。全ての人間は、自分の人生をまっとうする権利があります。
介護施設の高齢者は、身体的なケアだけではなく、もっと多くのものを必要としているのです。」

昨日、ストヴネル高校の1年生たちは、介護施設にやって来てビンゴ大会を実施しました。高齢者たちも、若者の訪問を喜んでいます。
オーラフ・ルンドクヴィスト(81歳)は、モハメドと笑い合っています。
「これは素晴らしいプロジェクトだよ」とオーラフは評価しています。

全国で「高齢者と生活を楽しむ」プロジェクトを実施している高校は67校。
オスロではこのストヴネル高校だけが、唯一の導入校です。
同校の生徒の一人、スタイナル・レーネ・ルンデ(16)はビンゴの思い出を語ってくれました。
「ある時、女性の高齢者がビンゴを当てたんだ。数か月ぶりにビンゴを引き当てたんだよね。景品のチョコレートを受け取った時、彼女の目には涙が浮かんでいた。それを見たら、僕の目にも涙が流れたよ。」

ノルウェーのメディアは、常に高齢者介護の実態についてネガティブな記事を多く書いているので、こんなに前向きな記事は「珍しい!」です(80歳近いノルウェー人の友達は、「ノルウェーの介護施設はいい場所なのに、新聞が悪口を書きすぎ!」と憤慨しています。。。)
この記事を読みながら、自分が訪れた高齢者センターのお年寄りたちを思い出しました。
今年もぜひ訪問したいなぁ・・・と思いつつ。


オスロの高齢者センターにて

2012年3月1日(木)
「北欧発」ミステリー、世界へ!

日本人と同じように、ノルウェー人もミステリー小説が大好きです。
本屋さんでも大きなスペースを占め、ベストセラーランキングでも上位を占めていることが多いです。
「北欧」のミステリー作家たちが、外国でもたくさんの読者を獲得しているという記事を見つけたのでご紹介いたします(NRK、2012年2月27日)。

暗い森、荒涼としたランドスケープ、人里離れたエリア。
こうした景色は、しばしば北欧のミステリー小説の舞台になっています。
さらに、厳しい冬、降り積もる雪、冷血な殺人のコンビネーションが北欧ミステリーの魅力となり、外国の読者を魅了します。

「アメリカ、イギリス、その他の外国でも、スティーグ・ラーソン(Stieg Larsson/スウェーデン)、ヨー・ネスボー(Jo Nesbø/ノルウェー)、カーリン・フォッスム(Karin Fossum/ノルウェー)、Henning Mankell(ヘニング・マンケル/スウェーデン)たちの本が、世界レベルで驚異的な売り上げを記録しています。」

それにしても北欧のミステリーがそれほど人気の理由は何でしょうか?

オスロ大学の文学部教授、Hans H. Skei氏は以下のように分析します。
「海外の読者、とりわけイギリスの読者たちは、北欧のミステリーを”エキゾチックかつ社会の描写が鋭く、批評的である”と受け止めています。
北欧諸国は、高福祉国家として知られていますが、それらの暗部を描くことにより、優れた社会批評になるのです。」

ただ教授は、これら北欧諸国の作家たちを、同じカテゴリーに含めることには抵抗があるようです。
「確かに外国から見れば北欧諸国はとても似ているでしょう。しかしながら、すべてのスカンジナビア諸国はそれぞれの異なる文化があるのです。ですから、北欧のミステリー作家たちを”ノルディック・ノワール”(Nordic noir)とカテゴライズすることは、奇異に感じますね。」

「ノルディック・ノワール」!
すごい、そんな呼び名があったんですね~。まるで昔の「フィルム・ノワール」みたい!
みなさん、知っていましたか?

まあ、それにしても「ミレニアム」シリーズのスティーグ・ラーソンの人気は別格なのですが、ノルウェーのヨー・ネスボーも意外と健闘していて、翻訳版もあわせて1400万部も売れたそうです。日本では「ジョー・ネスボ」名義になっていますが・・・。
個人的には、スティーグ・ラーソン>>>>>>>>>>>>>>ヨー・ネスボーです。(いくらノルウェーびいきの私でも実力差は否めません。ごめんよ~)
ブックレビューでご紹介したカーリン・フォッスムは大好きな作家です。彼女の小説は日本語版がありますよ。

そろそろポースケ=イースターの季節。
なぜかポースケクリム(イースターミステリー)と銘打った新作ミステリーが、たくさん出版されるので、こちらのチェックも楽しみです。

あなたもノルディック・ノワールの世界へ♪


「文学の家」の地下の本屋さん

2012年2月22日(水)
田舎と都会、肥満度の違いは?

2月22日は「ネコの日」ということで、こんなタイトルでキメてみました~(って無関係!)。
元ネタのタイトルは「田舎の人間は都会人よりも太っている」(NRK、2012年2月21日)。早速、内容をご紹介しましょう。

中央統計局(SSB)は毎日、様々な統計を発表しています。この度、ノルウェー各県の住民のBMI指数が公開されました。
首都オスロ住民のBMI指数で「肥満」(BMI指数30%以上)に達しているのは、7%。
一方、北ノルウェーのフィンマルク、中央ノルウェーのノール・トロンデラーグ、南ノルウェーのヴェスト・アグデルの住民はその倍の肥満率です。

その1ランク下の「やや肥満がち」(BMI指数27~30%)のカテゴリーは、オスロが18%。
北ノルウェーのノールラン、トロムソ、西ノルウェーのムール・オ・ロムスダールが32%です。
ノルウェー人全体の平均でみると「やや肥満がち」のカテゴリーには、27%の人が含まれます。つまりオスロは平均以下の肥満率ということになりますね。

特にオスロ住民でも、若い男性のヤセ傾向が目立ちます。
一番体重が重い西ノルウェーのソグン・オ・フィヨルダーネに比べ、オスロの若い男性は、平均体重が6キロ少ないです。

これらの数字から以下のような結論が導かれました。
「都会に住んでいればいるほど、体重は少ない。」

国民健康委員会の研究長は、「なぜ田舎の人は、太めなのか?」という問いに、「答えが難しい」とコメント。
「収入や教育レベルが影響しているのでしょうが、他にも生活様式が鍵となっているかもしれません。」と言い、こうも続けます。
「昔々、田舎の人たちは激しい肉体労働に従事していました。今でも彼らは、自分たちが実際以上に体を使っていると、過信しているのかもしれません。
確かに、重労働はあるでしょう。でも農業や森林業では、機械化が進んでいます。」

さらに、田舎の公共交通の便の悪さから、多くの人たちが自動車に依存している現状も大きな要因に挙げられています。
「都会では、バス停までちょっと歩いたり、階段を上がったり、お店から荷物を運んだりと、少しの運動が積み重なっています。」

首都の住民が一番スリムである、という結果はデンマークやスウェーデンでも確認済みです。
スウェーデンの研究者は、前述の分析以外に興味深いコメントを述べています。
「都会の方が、”スリムでないといけない”プレッシャーが田舎より強いせいでは?」

私自身の経験で言えば、ノルウェーの田舎に留学した際の方が、オスロ留学時よりも体重は増えました。
田舎にいる時の方がより「ノルウェーらしい」生活を満喫したのですが・・・。
でもジーンズはパツンパツンになってました(涙)。
そんな私でも、周りのノルウェー人からは「ユンコ(=Junko)、痩せてる!」と言われてましたね~。そんなノルウェー人が愛おしいです(ってこれがオチ?)


よーく見ると坊やのお腹がぱつんぱつん!

2012年2月15日(水)
トーキョーノーザンライツフェスティバル見参!

昨年始まった「トーキョーノーザンライツフェスティバル」(TNLF)。
北欧5カ国の映画祭をやっちゃいましょう、というチャレンジングなイベントです。
今年、ちゃんと2回目が開催。私も今日、行ってきました。
ホントはノルウェー映画を観ないといけない気がするのですが、スケジュール的に無理で、フィンランドの「ラップランド・オデッセイ」を観るために、渋谷のユーロスペース目指してGo!

道玄坂から歩いて行ったら、ラブホテル街が延々と続きます。
でもさすが年の功。なんの恥じらいもなく、ガシガシ歩いて行きます。
ようやくユーロスペースに到着。受付で整理番号をもらいます。
すると「先生!」と呼ばれて驚くと、ノルウェー語の生徒さんでした。お仕事を休んで来られたとか。世間は狭いですね~。

映画が始まる前に、運営委員の塩田敦士さんにご挨拶。塩田さん曰く、「週末の混雑がすごかった」とのこと。
確かにTwitterでも、かなり混雑している様子が伝わってきました。
私が行った時も平日の昼間にも関わらず、かなりのお客さんが入っています。
会場には、フィンツアー主催の「ノルウェー案内人青木順子さんと行くベストシーズンのフィヨルドとオスロ暮らしを感じる旅8日間」のチラシを置いて頂いていました。
でもさほど減っておらずしょんぼり。ノルウェーに興味のある人は少ないのでしょうか?

さていよいよ映画です。
フィンランド映画は、アキ・カウリスマキ監督のものしか観たことがないのですが・・・。
パンフレットによると、「2010年最大のヒット作」と書いてあります。
ここ数年、「北欧のおしゃれ番長」フィンランド人が作った映画なんですから、期待度UP。
で、オープニングが。。。

さえないおじさんたちが首を吊っているシーンの連続でした。
ブラックユーモア、ってやつだね、と自らに言い聞かせます。
ここから続くストーリーが、これでもか!っていうくらい「非おしゃれ」シーンが続きます。

主人公は無職で無気力そうな若い兄ちゃん。
でもちゃんと彼女はいて、その彼女が執拗に「チューナーを買え」と迫ります。
「”タイタニック”が観たいの!」(って、どんだけ前のヒット作に執着しているの?)
彼女からもらったお金は、友達との酒代に消えてしまい、彼女はキレます。
そしてどうしてもチューナーを買えと迫られ、兄ちゃんは悪友2人とロバニエミを目指すのですが。。。

ここからは「悪夢的な」シークエンスがたたみかけます。
ブラックユーモア・ロードムービーなのですが、なぜかヒッチコックの「北北西に進路をとれ」を思い出しました。というのも主人公たちが、さまざまなアクシデントに「巻き込まれる」からです。
「巻き込まれ型」映画といえばヒッチコックだよなぁ、としみじみ。

「酒とフィンランド人」の関係性も興味深かったです。
昨年のTNFLのイベントで、北欧5カ国のスピーカーがそれぞれ国のについてどう思うか、という質問に答えました。フィンランドに対して、みんなが「酒」、「アルコール中毒」などとコメントするではありませんか!え?「おしゃれデザインの国じゃないの?」とウブな日本人はキョトンとします。
でも本編では、登場人物がまるで水を飲むように酒を飲んでいました。呼吸するかのごとく自然です。
もしかしたら、あのノルウェー人たちよりもフィンランド人の方が酒好きなのかしらん?
ナゾは尽きません。

いずれにしても、ノルウェーとフィンランド映画の共通点は、「自虐性」でしょうか(って言いきるほど観ていませんが)。
様々な統計で、世界的に恵まれた国である2国なのにも関わらず、映画で描かれる世界は、全然ハッピーじゃなくて、せこくて、暗くて、ユーモアもひねこびていて・・・・。見事に私たち日本人の期待を裏切ってくれます。
そんな君たちが愛おしいぞ。

今年も大成功のTNLF。
来年のラインアップにも期待します♪

「トーキョーノーザンライツフェスティバル」のホームページはこちらから。


会場にて

2012年2月8日(水)
自由党(V)副代表、強姦罪で通報

たまにはマジネタです。
今、ノルウェーのメディアの一面を飾っているのは、このニュースです。
早速、ご紹介しましょう(Aftenposten紙、2011年2月7日)。

自由党(V)の副代表、Helge Solum Larsen氏が17歳の少女に強姦をした、と少女から警察に訴えが出されました。
「強姦」とはノルウェー刑法192条により以下のように定義されます。
「暴力または脅迫的な行為により性行為を行った者は、3年までの懲役刑に処する」。
事件の背景について、記してみましょう。

自由党がロガランド県(Rogaland)のSuldalにて県大会を、土曜日の夜に行いました。場所はSuldalのホテルです。
被害者の17歳の少女は、自由党の青年支部に属しています。ということで、県大会が強姦事件の舞台になってしまったようです。

現在、訴えられたSolum Larsen氏は入院中。
少女との間に、「性行為はあったが、強姦ではない」と主張してます。
自由党の代表、Trine Skei Grande氏は「何が起きたにせよ、副代表としてあるまじき行為に違いはありません。彼が副代表から退く以外に選択肢はありません。」とコメントしています。

Solum Larsen氏はスタヴァンゲルで、政治家として活躍をし、2010年に党の副代表に選ばれています。
被害者の少女が属する自由党青年部の代表は、被害者の少女を知っています。
「彼女はとても素晴らしい若い女性です。それだけに今回の悲劇はより深いものがあります。」とのこと。

今回の事件のせめてもの救いは、少女が事件後、きちんと自由党からサポートを受けられたことでしょう。少女の弁護士が証言しています。

当分はこのニュースがノルウェーのメディアをにぎわせるでしょう。今後の推移に注目です。


ノルウェーの国会議事堂


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