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この度、日記風にリニューアルしました。
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2012年1月31日(火)
ランチ休憩で内覧♪

ノルウェーの不動産市場は、新築よりも中古の方が活況というイメージがあります。
不動産を内覧するにあたっては、日本のように「いつでも内覧できます」体制ではなく、日にちと時間を設定しているのが一般的のようですね。効率的といえば聞こえがいいですが・・・。
最近その内覧時間に変化があったようなので、ご紹介いたしましょう(Aftenposten、2012年1月30日)。

ノルウェー不動産協会の会長によると、「共同内覧は、ランチ時間に行われることが一般的になってきました」とのこと。お昼休みに内覧ですか~?こりゃまた日本とはずいぶん違いますね!

ノルウェーでも伝統的な内覧時間は、平日の午後~夕方、または週末でした。人々が仕事を終えた後、または日曜日の1~2時間が内覧時間に設定されている、という次第です。
こうした「伝統」に対して新しいトレンドが「ランチ休憩に内覧」です。
11時~13時の間に内覧時間を設定する、という動きが見られるようになりました。

なぜこのトレンドが生まれたのか?
子どものいる家族にとっては、ランチ休憩に内覧できれば、子どもなしでゆっくり内覧できるというメリットがあります。
また中心部の物件を求めている場合、気軽に内覧に出てこられる、という感覚のようですね。
さらに前述の会長によると、「住宅探しをしている人たちは、毎週末を内覧に使っています。内覧以外のことを、週末にしたいのでは?」と推測しています。

オスロの不動産屋さんに取材しました。ランチ休憩に内覧をしたお客さんが物件を購入したそうで、満足気味です。
「日曜日は伝統的に内覧にベストな時間帯でした。でも今では木曜日12時~13時の時間帯にも日曜日と同じくらいたくさんの人がやってきます。」

ノルウェーでは「内覧」が気軽にできることに驚きです!
日本では(少なくとも私の場合は)、物件を内覧する前に、自分の年収やら自己資本やら細かいデータを書いて、それからやっと内覧させてもらえる、という手順だったと思うのですが。
なんせ「一生で一番高い買い物」ですからね。

いずれにしても、どこまでも、平日の夜や週末は「休みたい」のがノルウェー人なのだなぁ、とこの記事を読んで改めて思い知りました。

おうち!

2012年1月26日(木)
ニーノシュクの存続危機!

ノルウェー語は面白い言語です。
わずか500万弱の国に、似たような公用語が2つあります。ブークモール(bokmål)とニーノシュク(nynorsk)です。
ブークモールは、デンマーク語にノルウェー語的な要素を加えた書き言葉、ニーノシュクは方言を基に作られた書き言葉ですが、互いの優位をめぐって争ってきたことは、拙著や「ノルウェー語にトライ!」で触れてきました。
現在、それぞれの使用人口はブークモール9割、ニーノシュク1割とブークモールが圧倒的に優位です。

しかしながら、1885年に採択された法律により、ブークモールとニーノシュクは「平等」を保障されています。
ただ、この「平等」の建前(と敢えていいますが)が、様々なやっかいごとを生みだしました。
例えば、ブークモールの自治体の子どもたちは中学・高校でニーノシュクの授業と試験を受ける必要があるのですが、これがすごぶる「不評」なのです。
「なんで田舎の言葉(と敢えていいますが)のニーノシュクを勉強しないといけないの?」と、ぶーたれる生徒たち続出。
そんな不人気の「ニーノシュク授業&試験」について新しい動きがあったので、ご紹介しましょう(NRK、2012年1月24日)。

教育大臣のKristin Halvolsen(クリスティン・ハルヴォルセン/左派社会党)が、「第2国語のプライオリティーを下げるべき」と考えていることが表明されました。
ブークモールの自治体の学校では、第1国語(ブークモール)と第2国語(ニーノシュク)の授業と試験が行われていますが、大臣の発言は、第2国語=ニーノシュクの弱体化につながることは必至です。

「国語の科目を重視する上で、第2国語の成績評価を下げることが現実でしょう。これが国語教育計画の改革への提言です。」とコメントする大臣。

ここで言及された国語教育計画の改革ですが、現在、教育省で作業の真っ最中です。
その中には、第1国語(ブークモール)のプライオリティーを上げることが含まれています。

しかし現在はまだ「作業中」の段階であり、決定には至っていません。今後、関係者によるヒアリングも残っており、結論は1年後が目途になっています。

こうした動きに反発しているのは、当然、ニーノシュク擁護派のNorges Mållagです。
「大臣からの提案は全く、現実的ではありません。ニーノシュクと第2国語のステータスが低下することにつながります。これは学校にネガティブな影響を与えてしまいます。」

都市部の政治家たちが、今までも第2国語の授業・試験撤廃という提案を行ってきましたが、ついに省庁が検討する段階にまで来てしまいました。
ニーノシュクがマイナーなことは事実ですが、現代ノルウェーを代表する劇作家Jon Fosse(ヨン・フォッセ)は自作をニーノシュクで発表しています。他にも面白い作品が、ニーノシュクで書かれています。なので、ニーノシュクが全く「滅亡」ということは考えられません。
ですよね?

さぁ、ノルウェー語名物の「2つの公用語」の運命はいかに??

「ノルウェー語にトライ!2011」より

2012年1月18日(水)
あなたは神を信じますか?

ノルウェーの人気ミステリー作家Jo Nesbø(ヨー・ネスボー)の小説は、本格的に売れているようですね。
ハリウッドでも映画化が決まりましたし(監督はなんと、マーティン・スコセッシ)、生徒さんからも「書店の洋書コーナーにたくさん並んでいますよ」情報を聞きました。
実はサロンの第1回目で彼の作品を紹介しましたが、「"男の美学"に酔いしれるナルシストな作品」みたいに茶化した記憶が・・・。すみませ~ん!

で、この大人気のネスボーの作品よりも売れている本があるというニュースを読みましたので、ご紹介します(NRK、2012年1月17日)。

2ヶ月で8万部も売れて、在庫ももうすぐなくなる人気本とは・・・。じゃ~ん、「聖書」の新訳です。
「10月に出版してから、たった3週間を除けばずっとベストセラーのトップですよ。これってすごくないですか?」と聖書協会の会長Ingeborg Mongstad-Kvammenさんは満足そうに語ります。

最後に聖書がノルウェー語に翻訳されてから13年がたちました。
今回の「新訳」では、12人の著名な作家が翻訳に携わっています。
ナント、Karl Ove Knausgård、Håvard Rem、Jon Fosseなどキラ星のような有名作家が翻訳に名を連ねているとか。

Knausgårdは、自分の私生活を赤裸々につづった「Min kamp」(私の闘い)でここ数年、ノルウェー文壇を席捲しています。でもこの人、女性問題とか「煩悩のかたまり」のような印象があるのですが、そーゆー作家でも「聖書」の翻訳やっていいんですね。
かえって、「迷える子羊」のほうが神に近づけるのでしょうか?
いずれにしても翻訳協会のチャレンジングな人選にびっくりです。

それにしても、ノルウェー人がそんなに聖書の新訳を買うとは新鮮な驚きです。
特別に信心深くなったという印象はないのですが・・・。
日本語の聖書を読破していない私ですが、ノルウェー語で挑戦してみようか・・・な?

これは大昔の教会です

2012年1月11日(水)
家事やってますか~?

ノルウェーに留学中、東欧からの女子学生たちは、「ノルウェー人が男女平等を目指すとかってバカみたい」と鼻先で嗤っていました。
それをアジアから来た留学生(←不肖、編集人)は「どうして?」と不思議がっていました。

段々わかってきたのですが、東欧とかロシアって女性が外で働くのは「当たり前」のことで、さらに家事労働においても男性の参画率が低く、いわば「家でも外でも女性が働く」という構造だったようですね。
だからそれらの国々では、外で働かなくてもいい「専業主婦」への憧れがすごく強い、ということがうっすらと理解できました。

では、「男女平等先進国」と言われるノルウェーの「家事と仕事の分担」はどうなっているでしょうか?
Aftenpostenからの記事をご紹介しましょう(2012年1月10日)。

共働きの夫婦の家事と仕事分担が、かなり公平な夫婦の割合は約40パーセント。この数字は、日本人からすれば「高い!」という印象でしょうか。

この「公平な分担」の条件として、夫婦が高学歴であること、公務員であることが重なるとより「公平」になるそうです。
それに対して昔ながらの「お父さんは外で、お母さんは家で」という仕事の分担は、より低学歴の夫婦に見られる現象だそうです。
ちなみにこの調査は、1歳から12歳までの子どもを持つ仕事をもった男女を対象に行われています。

他に興味深い調査結果として、お母さんがお父さんより外でたくさん働いている人は、わずかに10パーセント。まだまだ外で働く時間はお父さんの方が長いのが一般的だということが分かります。

逆に家事の大部分をお父さんがやっている割合も低いですが、子育てに関して言えば、かなり平等に夫婦で分担している傾向があります。

ここに至るまでの道のりには、たとえノルウェーといえどもかなりの時間がかかったと聞いています。
やはり世代が上になればなるほど、「家のことは女性」と思っている男性が多く、ジェネレーションギャップが大きいとか。
ただ、今の現役お父さん世代が普通に家事や育児をやっている姿をみれば、子どももそれに倣うのは自然の理でしょう。

平日の昼間です

2012年1月5日(木)
ノルウェーのおこづかい事情

2012年最初の更新です。今年もスクープをかっとばすぞ~!!(って、ノルウェーのヒマネタばかり拾っているし)

編集人が鋭意、ノルウェーの新聞をチェックし、見つけた話題がこれです。
「わずか半分の子どもたちがお小遣いをもらっている」。ふ~ん、どういうこと?
新年にふさわしいヒマネタで参りましょう!(Aftenposten紙、2012年1月4日)

ノルウェーの南西部、スタヴァンゲルに住むNina(13歳)とErik(16歳)はお小遣いをもらっています。
自分の部屋をきれいにすること→1週間で100クローネ(約1300円)。
夕食作りを手伝うこと→追加で50クローネ(約650円)
その他、掃除機かけや家事手伝い、学校での頑張りに応じて、金額が上乗せされる方法をこの家庭では採用しています。

昨年11月、大手銀行Nordeaは、ノルウェーと北欧諸国における子どもと若者のお小遣い調査を発案し、調査会社のSynovateが実際の調査を行いました。

ノルウェー人1000人の両親たちからの回答によると、6歳~17歳までの子ども・若者の45パーセントがお小遣いをもらっています。
残りの55パーセントはお小遣いをもらっていませんが、Nordeaの専門家によると、「その時々の要求に応じて、何らかのお金を親からもらっているはず」とのこと。
そして、「お小遣いという決まった額のお金をもらうことによって、子どもの消費に限度がかかり、良いでしょう。」とコメントしています。

月当たりの平均お小遣い金額は、
12-14歳:男の子 313クローネ(約4000円)、女の子 474クローネ(約6000円)
15-17歳:男の子 630クローネ(約8000円)、女の子 792クローネ(約10000円)
となっています。
現在の日本の子どもと比較してどうでしょうか?

北欧諸国の平均をみてみましょう(全てノルウェークローネに換算)。
ノルウェー:571クローネ(約7500円)
フィンランド:324クローネ(約4200円)
デンマーク:332クローネ(約4300円)
スウェーデン:409クローネ(約5300円)
ということで、ノルウェーが頭一つ飛び出している感じですが、これは同国が一番物価が高いこととも関連性があるでしょう。

記事を通して、「お小遣いの意義」が説かれています。
Agder大学の先生のコメントによると、「大人も子どもも物の値段がいくらするのかを知るために、お小遣いは有益」とのこと。
子どものうちから、お金のことについて学ぶ大切さは、以前、ブックレビューで紹介したノルウェーの高校社会科の教科書にも繰り返し、強調されていました。

冒頭に紹介したNinaとErikの両親は、自分たちも親からお小遣いをもらっていました。家の仕事をする対価としてです。
「お小遣いは、モチベーションを上げる手段です。何かをすればそれに見合ったお金がもらえることを知るのは大切なことです。」

お小遣いにこんな深い哲学があったなんて・・・!
「経済的自立」を個人個人に求めるノルウェー人らしい「お小遣い観」だなぁと、感じました。

おこづかいでアイス!

2011年12月28日(水)
ノルウェーに行きたいか~?~ノルウェーツアーPR~(ニュース番外編)

いや、ホント、人生って分からないものですね。
まさか私が「●●さんと行く●●ツアー」の●●さんになるとは思ってもいませんでした!

今年6月に無事「ノルウェー案内人青木順子さんと行くベストシーズンのフィヨルドとオスロ暮らしを感じる旅8日間」を催行しました。
無謀にも、来年も第2回目を催行するそうです。きゃ~、こわ~い(怖がってどうする??)
ということで、ここは案内人自らこのノルウェーツアーのPRをしたいと思います。

まず主催であるフィンツアーさんとこだわった旅のコンセプトは「コミュニケーション」でした。
通常の北欧ツアーは、8日間で4カ国を駆け巡るというものが多く、これでは現地の人とのコミュニケーションなど、到底、無理です。
このツアーは贅沢にも、ノルウェーだけに8日間の旅です。じっくりノルウェーを楽しむ旅です。
そこで、英語ではなくノルウェー語を案内人が使うことによって、お客様と現地の人との距離をぎゅっと縮めたいと考えました。

そもそもノルウェー単独のツアー自体が珍しいのです。
ベルゲンやフロム、世界遺産のネーロイフィヨルド観光などの自然を楽しむのと同時に、オスロではノルウェー人の家庭を訪問しました。
なかなか普通のツアーでは一般の人との触れ合いは難しいですよね?それに、よく言われる「北欧インテリア」を実際の目で見てみたくないですか? このツアーではそれが実現できます♪

また「福祉国家」と知られるノルウェーのことも興味があります。
今年のツアーでは「高齢者センター」を訪ねました。高齢者センターは、お年寄りが、楽しく集う場所です。ヨガをやったり、編み物や縫物をみんなでおしゃべりしながら楽しんだり。
また13時半に「夕食」が提供され、一人暮らしのお年寄りが、みんなで食事とおしゃべりを楽しむ場となっている様子がよく分かりました。
私は何人かのお年寄りに声をかけ、みなさん「ここが好き」と声を揃えます。写真撮影にも快く応じて頂きました。

さて旅には「偶然」や「アクシデント」がつきものです。
ツアーの人数が多くなかったこともあって、「ここに行きたい」という個人の希望に、みんなで付き合うことができました。
例えばフロムでは、中心地から歩いて45分(?)くらいの農場に行ってみたいというご意見があり、みんなでてくてく歩いていきました。最後はゆるい山を登って、目指すオッターネス農場(Otternes)へ。

ちょうど小雨が降っていて、私たち以外にお客さんはいませんでした。農場の管理をしている若い女性は、私がノルウェー語で話すとすごく喜んでくれて、無料で農場内のガイドをしてくれました。
彼女の素朴な方言で説明を聞き、その後、紅茶で体を温めました。とても素敵な場所で、彼女も優しくてキュートでした。
くどいようですが、普通のツアーではフロムの観光にこんなに時間は割けません。

あとベルゲンでは、名物の「フロイエン山」登山電車に上りました。すでに時間は21時~22時くらいでしたが、美しいベルゲンの景観を楽しみました。これはみなさんもご経験があるかと思います。特別だったのはここからです。
お客さんから、今度は電車ではなく、徒歩で山を下ってみたいというリクエストがありました。これは地元のノルウェー人はよくやっている行為です。

私たちは、何度も道に迷い、その度に歩いているノルウェー人に道を尋ねながら、フロイエン山を下りて行きます。途中、降りるのが難しい道があったのですが、不肖・案内人はお客様に手を取ってもらい何とか下りることができました。その時の達成感といったら!

こんな感じで、ノルウェーという国と同じように素朴なツアーです。
ぜひ、ノルウェーで一番美しい6月に、私と一緒に旅を体験しませんか?
詳細はこちらからご覧ください。
こんな企画を待っていました!という皆さまのご参加を心よりお待ちしています♪

オッターネス農場のガイドさん

2011年12月20日(火)
「人間に期待しよう」~「ノルウェーの犯罪者更生」講演会にて~

日本テレビで放送中の「妖怪人間ベム」にはまっています。
妖怪人間のベムたちは悪に傾いてしまった人間たちに制裁を加えるのですが、こんな印象的なセリフがありました。
「人間に期待しよう」。
どうしようもないダメおやじに敢えて制裁を加えず、ベムたちはこう言って、悪に染まってた人間を見守る道を選んだのです。
このセリフが、なぜか昨夜のノルウェー大使館の講演会で思い出されました。

講演会のタイトルは、「7月22日のテロでノルウェーの刑事政策は変わるのか~犯罪者の更生と社会安全~」。興味がすごく惹かれたのですが、果たして理解可能?
講演は、ノルウェー国立犯罪防止研究所所長のErik Nadheim(エーリク・ナドヘイム)さんとノルウェー警察大学校教授のCamilla Louise Giske(カミッラ・ルイーセ・ギスケ)さんによって英語で行われました。
会場は法務省の方々、弁護士、大学関係者などお堅い感じで、「先生!」と呼んだら、みんな振り返りそうな雰囲気でした(私とYoko管理人はちんまりしていましたよ)。

お二人の講演の前に、弁護士の齋藤実氏により、簡単にノルウェーの刑事政策について解説がありました。
犯罪者の改善更生を促し、それが社会安全を導くという大前提があります。
刑務所内でも、「ノーマライゼーションの原則」が用いられ、「1人1居室」が徹底されています。拘禁期間は、最短14日で最長21年ですが、平均拘禁日数は4.9カ月(2007年)。同じ北欧でもフィンランドは9.3カ月で最長です。
死刑・終身刑もありません(フィンランド・スウェーデンはあり)。
齋藤弁護士が視察されたHalden刑務所の写真は、とてもきれいな個室とおもちゃが置かれた家族面会室が写っていました。はっきり言って、私が住んでいた学生寮よりきれいです。

それからカミッラさんの講演にうつりました。
警察学校の教授というお堅い印象をくつがえすチャーミングな女性で、制服を着用されていました。
カミッラさんはノルウェーの警察官の非武装について強調されました。これは欧州では3カ国のみだそうです。銃の使用は厳しく制限され、ここ10年で警察官の発砲により死んだ人は2人だけ。
そしてイメージではノルウェーもどんどん危険な国になりつつある、という印象ですが、実際の殺人件数は減少にあります。日本もノルウェーほどではないですが、低い数字だということが分かりました。
またカミッラさんは「犯罪の予防」について、警察と自治体、そして「犯罪防止研究所」との連携関係があることに言及されました。

短い休憩をはさみナドヘイムさんの講演へ。
まずナドヘイムさんが属する「国立犯罪防止研究所」(Det kriminalitetsforebyggende råd-KRÅD)について簡単な紹介からスタートしました。
犯罪の防止に対する政府の機関ですが、政治的に独立性を保っています。北欧5カ国と「Nordic Model」を作り、互いに協力体制にあります。

ナドヘイムさんは、7/22に何が起きたのか改めてレポートしてくれました。
まずブレイヴィーク容疑者の4歳の写真が映し出されました。ごく普通の可愛い少年です。
父親は外交官でしたが、容疑者が1歳の時に家族のもとを離れました。その後、両親は子どもの親権争いを起こします。4歳の時、精神科医が容疑者は母親と暮らさない方が良いと判断しましたが、結局、児童福祉局は何ら措置を取らず、そのままずるずると母との生活は続きます。
容疑者が15歳の時、tuggingと呼ばれるスプレーの落書きで警察に2回逮捕され児童福祉当局へ通報されますが、しかしまたも具体的な措置は取られずに、時は流れました。

ノルウェーではテロが起きた後、ブレイヴィーク容疑者に対する処罰について世論調査が行われました。
これほどの大惨事を引き起こした容疑者に対して、「死刑執行を求めない」とする声が実に9割に上りました。同時に「生涯、釈放は反対」とする人も75パーセントもいました。

11/29、2人の精神学者による容疑者の精神鑑定が発表されました。「妄想型統合失調症」と判断され、刑事責任は問えないという判断はここ日本でも報道されましたね。
この判断について、さすがにノルウェーでも批判が巻き起こりました。というのも、容疑者は実に9年間も緻密に犯行を計画していたのです。精神病患者にこれが可能でしょうか?
あまりの批判を受けて、法医学者9人による見直しが行われるそうです。

質疑応答の中で、「どうしてこんなに犯罪者に対して寛容なのか?」というもっともな質問が出ました。
それに対して、ナドヘイムさんはこともなげに答えます。
「全ての犯罪者に寛大な処遇をという伝統がノルウェーにはあります。」
伝統!!これは、すごい・・・。なかなか真似ることができない一番難しいことだと感じました。
しかし、こうした「犯罪者への寛大な処遇とノルウェーの犯罪率の低さ」に関連性があるとも、おっしゃっています。確かに刑務所は居心地が良くても、「自由を奪う」という罰が与えられていることには変わりがないと。
さらに、ノルウェーの「世界人権宣言」重視を指摘され、人権意識のレベルの高さが、犯罪者に対する処遇の良さとつながっているとも述べられていました。

日本もノルウェーも犯罪率は低いという共通点がありますが、日本はより「厳罰化」へ世論が動いている印象があります。
ノルウェーのユニークな犯罪者更生の取り組みが、これからも日本で紹介されることを切に願います。
「人間に期待しよう」。この言葉を噛みしめて、会場を後にしました。


制服姿のカミッラ教授♪

2011年12月12日(月)
ワッフル・ガール

12月は、日本では「ノルウェーワッフルの月」と知られていますが・・・・
というのは軽い冗談で、私たちの「ノルウェーについて学ぶサロン」で、ここ数年、12月になると「ワッフルパーティ」を開催し、そこそこの人気を博しています。
ノルウェーに、ワッフルで成功を収めた女性がいるようなので、ご紹介いたしましょう(Aftenposten, 2011年12月3日)。

彼女の名前は、Stine Åsland。まだ29歳ですが、立派な実業家です。
彼女はテレマルクの小さな村の出身です。高校時代は成績が悪く、ドロップアウトしてしまいました。
しかし彼女に思わぬ道が開けました。彼女が働いていた大きなガソリンスタンドが、フランチャイルズのオーナーを公募し、彼女も応募したのです。
ノルウェーのガソリンスタンドには、コンビニのような売店が併設され、お菓子や飲み物を買ったり、軽食が食べられます。
このフランチャイルズのオーナー職には、58人も応募がいました。ほとんどが40代の男性です。一方、Stineさんはまだ21歳の時。
自分でも「理由がわからない」としながらも、彼女は見事、17人もスタッフがいるオーナーの職を得ました。

ここ数年、彼女はガソリンスタンドでワッフルを販売しています。
このビジネスに彼女は賭けました。2007年に自分の会社を設立し、翌年にはワッフル原料工場も作りました。
それからも彼女の快進撃は続きます。
南、東、中央ノルウェーにあるほとんどのガソリンスタンド、カフェ、キオスクでワッフルのタネを販売したのでした。
「ここまで成長させるのは、本当に大変でした。でも今は順調に利益をあげています。」

さてワッフルの作り方は、たくさんのレシピが公開されています。砂糖、塩、卵、小麦粉、牛乳、バターなどが原料ですよね。
Stineさんは語ります。「どうやって原料をミックスさせるか、どれくらいの量を入れるかそれは企業秘密です。」 う~ん、聞き出したいですね!

Stineさんはノルウェー人には珍しく(失礼!)、すごい大望を持っているようです。
「私たちは世界で最大のワッフル企業を築き上げたいのです。アメリカのワッフル・ハウス社よりも大きな企業を目指しています。まず手始めに、他の北欧諸国からビジネスをスタートさせたいと考えています。」
そしてまたまた典型的なノルウェー人と違う一面をのぞかせるコメントが続きます。「家族との生活を過ごす時間はありません。仕事が中心です。」

彼女にはぜひアジア市場にも乗りこんで欲しいですね。
12月のサロンにぜひお越し願えればな~なんて、私も「大望」を抱いちゃいました。
いずれにしても、ノルウェー・ワッフルファンとして彼女の事業を応援したいです。

恒例ワッフルの隠し味はカルダモンです


2011年12月7日(水)
歯医者に行けません

ノルウェーは高度福祉国家と知られています。出産は無料ですし、医療費も一部負担のみです。
しかし、なぜか「聖域」があったのでした。「歯科診療」です。
18歳までは無料の歯科診療ですが、それを過ぎるとどんどん治療費がかかり、20歳以上では「全額負担」という非常の結末が・・・。
ですから、ノルウェーでは歯科診療が高くつきます。7月のサロンでゲスト講師の小野坂先生が、「安い歯科診療を求めてドイツまで行くノルウェー人がいる」とおっしゃっていましたが、ここまでくると冗談みたいですね。
大学新聞「Universitas」(2011年11月30日)に、この悩ましい歯科診療の話が載っていたので、ご紹介いたしましょう。

学生たちを対象にした調査によると、1年以上、歯医者に行っていない学生は10人中4人。この結果を憂慮し、「これほど多くの学生が歯医者に行っていないと、学生たちの歯の健康が悪化するのでは、と心配です。」とオスロ大学歯学科長がコメントしています。

他の歯科医は、この結果に驚きません。
「学生たちは高校を卒業すると、突然、歯科診療に治療費を払う現実に直面します。なので、数年は歯医者に行かない方を選ぶのです。」

こうした学生たちの「歯医者に行けない」状況を改善するため、学生登録料を値上げし、学生たちが安く歯科診療を受けられるようにする動きがあります。
オスロとアーケシュフースの学生生協(Studentsamskipnaden)は、学生向けにお手頃な歯科診療を受けられる試みを開始しました。
「それでもまだまだ高いです。最後に歯医者に行った時は、42000円くらい出費しました。」と学生のコメントです。

大学新聞Universitasは、学生たちが安価な歯科治療を受けられるよう公的な取り組みに期待すると記事を締めくくっています。

ノルウェー人は、歯の見た目をすごく気にします。小さい時から歯科矯正をやって歯並びに気を配り、食後も爪楊枝でしーはーする人が多いのです。
歯は美しくありたい、でも歯医者は高い、というジレンマに多くのノルウェー人は悩ましい思いをしています。

僕には歯がないよ

2011年12月1日(木)
アルコールCM、解禁へ

この間も生徒さんと話していたのですが、「ノルウェー人でお酒に弱い人、会ったことないですね」という事実。
キリスト教の「禁酒主義」に従って、一切、アルコールに手をつけない人はいます。でも、会う人、会う人、「私、お酒に弱いんです」なんて言うセリフは聞いたことがないような・・・。

そしてノルウェーではバカ高い酒税を設けたり、アルコール専売公社を設けて、なるべく容易にアルコールへ近づけないように工夫しています。
ですが、国民は嬉々として安いお酒を求めて国境を超えます。ある者はデンマークへ、ある者はスウェーデンへ、もっと飛んでスペインへ。もはやお笑いの領域です。

で、テレビのCMでも、アルコールのものは禁止されています。日本では、ビールのCMであふれかえっているイメージですが・・・。
その記事をご紹介しましょう(NRK、2011年11月30日)。

何でも外圧に負けての流れとなったようです。
EUの「テレビサービスに関する指示」に、ノルウェーも加わるように圧力がありました。これにはアルコールのCMに関する条項が含まれます。
ノルウェーは英国と共に、アルコールのテレビCM禁止を盛り込むよう働きかけましたが、失敗に終わりました。
これによって、一気にノルウェーのアルコールCM解禁へ流れが進むのでは?と予想されます。

お隣のスウェーデンでは、すでに莫大な金額のアルコールCMが流れているようです。
ノルウェーにとって、「アルコールCM処女」を捨ててしまうのでしょうか?
どんなCMが誕生するかぜひ拝見したいですね!

は~い、どんどん開けちゃって~


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