何度かこちらのサイトでは触れていますが、「ブラック・メタル」というメタルジャンルはノルウェーで人気があり、国際的なバンドを輩出しています。
ノルウェーのブラック・メタルが国際的に耳目を集めたのは、90年代初頭にかけて、教会放火や殺人などイリーガルな行為がセンセーショナルに報道されたことが関係しています。ブラック・メタラー=悪魔崇拝者、のようなレッテル貼りが行われてのもこの時期でした。
さて2011年。
再び、ブタック・メタラーをめぐる記事を発見しました。教会を燃やした?ノン、ノン。
とある教会が、ブラック・メタラーたちの聖地となっているようなので、ご紹介いたしましょう(Aftenposten紙、2011年9月20日)。
何でもオスロのホルメンコーレンチャペルに、世界中からのブラック・メタラーが聖地巡礼よろしく訪れているそうです。
2008年以降、人気バンドSatyriconのAnders Oddenが、たくさんのブラック・メタラーたちをバスでホルメンコーレン・チャペルに連れて行きました。実はこの教会、1992年に放火され、ブラック・メタラーのVarg
Vikernesが放火罪によって実刑を受けた曰くつきの教会なのです。
何だか嘘みたいなネーミングですが、「ブラック・メタル・バスSightseeing」というツアー会社が、何度かホルメンコーレンチャペルまでのツアーを催行しているようです。目的は、1991年から1993年までの、ノルウェーメタル史に触れて欲しい、とか。
「特に外国のメタルファンには、このバスツアーは人気がありますよ。今年は6回ツアーを催行し、全て売り切れです。」とツアー会社のコメントです。
燃やされた教会は4年後に、建て直されました。その新しい教会にぐっとくるブラック・メタラーが多いようで・・・。
「外国のファンたちは、新しい教会がブラック・メタル教会のように見えると感心しているよ。インド、ブラジル、メキシコの客を連れて行ったけど、新しい教会は真っ黒に塗られ、ヴァイキング時代からの装飾が施されている、って感動しているね。」とAnders
Oddenは語ります。
1992年、11件の教会放火事件がありました。そのうち7件はブラック・メタラーが関与していると言われています。
前述のVarg Vikernesは3件で実刑を受けましたが、Anders Oddenは、「自分は教会放火とは距離を保っていた。いくらキリスト教が好きじゃないからって、建物自体には他にたくさんのクオリティーがあるだろう。たとえばCDジャケットのモティーフになったりとかね。」と最後は冗談ぽくコメントしました。
さて当の教会側はどう思っているのでしょう?
実はAftenpostenが取材に行くまで、バスツアーに気づいていなかったようです。そ、そんな・・・黒ずくめの怖い人たちが教会をじろじろ見倒していたかと思うのですが・・・。
オスロの教会団体にインタビューすると、「別に問題ない」とのクールな回答が。
「もしブラック・メタラーたちが教会にやって来て、それに感動するのならば、問題はありません。ちょっと変だとは思うけど、教会を訪れたり、写真を撮ることを邪魔することはできませんから。」
ということで、さすがキリスト教関係者の方は昔、たくさんの教会が放火という憂き目にあったのに、「迷える子羊」たちに寛容ですね。まぁ、宗教の本質でしょうか?
日本からもブラック・メタラーたちがこの教会を訪れるようになって、「どこにでもいる日本人」の称号をぜひ勝ち取って欲しいものです。
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Holmenkollen kapell
Foto: Matthias Rosenkranz
no.wikipedia.orgより転載(写真をクリックしてご覧になれます) |