「最近の日本語の乱れは嘆かわしい・・・」といったフレーズは大昔から語り継がれたもので、いわば「無形文化財」のようなものと思います。
所変われば何とやらと申しますが、ノルウェーでも同じような繰言をおっしゃる方々がいらっしゃる記事を、ノルウェーからわざわざ友達が送ってくれました。
まず口火を切ったのは、ノルウェー語界の重鎮にして保守的(=ガンコ)な主張で知られるFinn-Erik Vinje教授。「NRK(ノルウェー国営放送)のニュースキャスターの発音が最近、とみに乱れとる。方言なんか許しません。ちゃんと正しい標準ノルウェー話し言葉を使いなさい」といった主旨の「御言葉」を、Aftenposten紙に寄稿しました(2009年10月28日)。
同教授は、23年間もNRKの言語コンサルタントという地位にいて、いわば番犬のような役割を果たしてきましたが、同職を引退後、「なっとらん!」状況になったとお嘆きのご様子です。
以下、同30日の記事から抜粋しますと、
「NRKには規則があるのにも関わらず、守っていない。彼らは標準語の存在を無視しています」
「NRKの影響力は大きいです。
私は、ノルウェー語を習いたい移民や外国人にこう言います。NRKのニュースを聴きなさい、そうすれば正しいノルウェー語が学べますよ、と。」(それなのに現在の惨状は・・・・とお嘆きのご様子)。
国語審議会の会長、Sylfest Lomheim氏もVinje教授の抗議に同調する姿勢を見せています。
こうした「嘆かわしい」言説に反論するのが、現在、NRKの言語コンサルタント職にいるRuth Vatvedt Fjeld教授です。彼女は、「そもそも正しい標準ノルウェー話し言葉なんて存在しない」と、ばっさり切り捨てます。私も、賛成!そんなもん、ありましたっけ?
「Vinje氏は、視聴者が混乱すると言っていますが、どうやってそんなことが彼に分かるのでしょう?調査でもしたのでしょうか?私たちは、視聴者調査によって、7割の人々が、ニュースで方言が使われることに問題なし、8割の人々が地方放送で問題なし、という結果を得ました。」
NRKの言葉の規則が2007年以降、緩和されたのは、Fjeld教授によると、「トレンドによる結果」だそうです。
「民放のTV2で、気象予報士の女性たちが、自分たちの方言を使ったのが新鮮で、好意的に受け入れられたことが背景にある。」とのこと。はい、あの人たち、バリバリの方言で話していますよね~。
11月になっても、この議論は続いている様子です。
みんな、「待ってました!」とばかり、激論を戦わしている様子が、びんびん伝わってきます。
いや~これぞノルウェー。ノルウェー語の状況をどんどん複雑に、外国人を惑わしてください、と遠く極東の果てから、マゾヒティックな気持ちで皆さまたちにエールを送らせていただきます。
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