フィンツアー掲載エッセイ

「ノルウェー語講師・青木順子さんのエッセイ」として
フィンツアーのサイトに2010.11~2014.8の間、
全46回掲載されたものをまとめました。
【05】


A4バンザイ!

皆さんは、「A4」と聞いて、何を連想しますか?
普通は、「A4用紙」など紙のサイズを思いつきますよね。
ノルウェー語でも同じなのですが、A4=「標準サイズ」という意味から派生し、「平凡、没個性、退屈」といったネガティブなニュアンスを含みます。
例えば、「彼は典型的なA4だね」=「彼は平凡だね、つまらない男だね」といった感じです。コピー用紙の話かと思いきや、恐るべしノルウェー語!

英語では、「square」が「A4」に相当するでしょうか?「堅物」といったニュアンスがあるようです。
映画「パルプ・フィクション」で、ユマ・サーマンがジョン・トラボルタに向かって、「あなたって・・」と言いながら、四角を描くジェスチャーをするシーンがあります。

最近、ノルウェーの新聞に、「A4」に関して面白い特集記事がありました。
解説によると、「A4」という言葉が頻繁に使われ出したのは、90年代以降。特に、ネットや新聞の「パートナー探し」の文章に、相手に求める条件として、「A4タイプでない人を探しています」という表現が散見されたそうです。

オスロ大学の研究でも、20代のノルウェー人に「大事な価値観は何か?」を調査したところ、「自立、オリジナリティー」との回答が最も多かったとのこと。
いかに自分が「個性的で刺激的な人間でありたいか」という欲求が見て取れます。

・・・とだいぶ、旗色が悪い「A4」という単語からさらに発展して、「A4-livet」という表現も生まれました。「A4ライフ」という意味です。
ルーティンで縛られたお決まりの生活、刺激とは程遠い生活といったニュアンスですね。
「そんなのイヤ!」と、ほとんどのノルウェー人は反論しそうですが・・・・

週末の散歩もA4!
週末の散歩もA4!

実は特集記事では、「A4ライフ、バンザイ!」といった「A4ライフ」を送る人物からの反論だったのです。
ジャーナリスト兼作家のオーラヴさんは、若い頃は「A4」とは真逆の生活を送っていました。オスロでも一番刺激的なエリアのグルンネルッカで暮らし、おしゃれ人間が集うおしゃれパーティに夜な夜な繰り出し、エキサイティングな生活を満喫していたのです。ジム・モリソンのように28歳までに死ぬのが理想と思っていたとか・・・!

A4なパンツ
A4なパンツ

で、現在36歳のオーラブさんは・・・
オリンピックの街と知られるリレハンメルに奥さんと子ども2人と大きな戸建に住み、典型的な「A4ライフ」を満喫しています。
なぜ、リレハンメルに引っ越したのか?オーラヴさん曰く「オスロの喧騒に疲れた」とのこと。
子どもたちをより安全な環境で育て、きちんとコントロールできる生活を送りたいという新たな欲求を満たすことができました。
「オスロに住んでいた時は、家に泥棒が入るのが怖かったけど、リレハンメルではどこにクリスマスツリーを捨てようかが悩みなんだ」と笑います。

A4な朝食風景
A4な朝食風景

前述のオスロ大学の研究でも、こうした世代による「価値観の変化」は確認されています。20代の「個性大事!」から30代では子どももでき、「安定性」を重視するようになるようです。

家族の予定表
家族の予定表

確かにノルウェー人、特に小さな子どもを持つ人たちの生活はすごく「規則的」です。
朝起きて、子どもを保育園に送り(父親と母親の交互が多い)、仕事へ行って16時まで働く。子どもを保育園に迎えに行って、夕食の準備をして、テレビを見たり、冬だったら近所でクロスカントリーをしたりなどなど・・・。週末も、ヒュッタと呼ばれるセカンドハウスに行くのも「お決まり」です。

A4な田舎の冬
A4な田舎の冬

私見では、ノルウェー人の生活自体は「A4ライフ」かもしれませんが、1人1人が「A4」=平凡とは限らない印象です。逆に、型にはまらない人を、周囲は「寛容」に認めている気がしますね。
社会的マイノリティーの権利保護に敏感なノルウェー人。これは、「型にはまった考えしかできない」人にはできない行為だと思うのですが・・・。

「A4」タイプ、「A4ライフ」、皆さんはどちらが当てはまりますか?

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通りの名前

日本に来た外国人は、住所だけを頼りにお目当ての場所を見つけるのが難しいだろうなぁ~と思います。
住所標識がちゃんとあるところ、ないところがバラバラで、特に繁華街はわかりにくいですよね。
その点、ノルウェーは、目的地探しは至ってシンプルです。
通りの標識がきちんと貼ってあり、道をはさんで左右どちらが奇数・偶数の番地と揃っています。さすがに方向オンチの私でも、それほど苦労せず目的地にたどり着けます(でも迷った経験はありますよ~)。

住所の標識
住所の標識

 ノルウェーの住所で多いのは、~vei(ヴァイ)=「道」、~gate/gata(ガーテ・ガータ)「通り」ですね。
オスロで一番の目ぬき通り=ノルウェーで1番の目ぬき通りの名前は、ご存知ですか?
はい、「Karl Johans gate」=「カール・ヨハン通り」です。カール・ヨハンは、スウェーデンがノルウェーを統治していた19世紀のスウェーデン・ノルウェーの国王ですね。

 ・・・ということで、通りの名前の意味が分かると散策も面白い!ということで、オスロ(と郊外)の目についた通りの名前をご紹介しましょう。

家に貼ってある住所プレート
家に貼ってある住所プレート

 地図帳を眺めて「多いなぁ」と感じるのは、著名人の名前をそのまま通りの名前にしているケースです。
ノルウェーが生んだ世界的3人は、もちろん通りの名前になっています。
・Henrik Ibsens gate 「ヘンリック・イプセン通り」・・・「人形の家」などで知られる戯曲家。
・Edvard Griegs allé 「エドヴァルド・グリーグ通り」・・・ノルウェーが生んだクラシック音楽作曲家
・Edvard Munchs vei 「エドヴァルド・ムンク通り」・・・「叫び」などで知られる画家

グリーグの名前由来の通りがオスロにあるのは、ちょっと意外でしたね。
彼はノルウェー第2の街ベルゲンのイメージが強かったので。
では、男性ばかりではなく女性著名人の通りをピックアップしましょう。
・Camilla Collets vei 「カミッラ・コレット通り」・・・ノルウェー初の女性職業作家
・Dronning Mauds gate 「マウド女王通り」・・・ノルウェー独立後初の女王。もともとは英国王室出身(なのでノルウェー人は英国びいき)

観光地の標識
観光地の標識

 ・・・地図を見ていると、それこそ無数の人名由来の通りがあります!これは欧米ではよくあるかと思うのですが、なんで日本にはないのでしょうね??いろいろ問題があるのでしょうか?

 さて他にも、地名を見ていると、「そのまんまじゃない!」とツッコミたくなる通りの名前がありました。
・Arbeidergata 「労働者通り」・・・労働者がたくさん歩いていたのでしょうか?
・Apotekergata 「薬局通り」・・・薬局が多数、並んでいた通り?
・Kirkeveien 「教会通り」・・・まぁ、教会につながる道ですよね。

「まんま」よりは、もうちょっと風情を感じる通りの名前をご紹介しましょう。
・Vårveien 「春の道」
・Sommerveien 「夏の道」・・・オスロではありません
・Vinterveien 「冬の道」
惜しい!「秋の道」がなくて残念!

ノルウェーらしさを感じる通りの名前もあります。
・Vikingveien 「ヴァイキング通り」・・・日本で「侍通り」は考えられない・・・。ですよね?
・Trollstien 「トロール小道」・・・やはりノルウェーと言えば「トロール」?

可愛い通りの名前も見つけました♪
・Jordbærveien 「いちご通り」・・・郊外なのですが、「いちご通り殺人事件」というタイトルのミステリがあったら面白そう!
・Fuglesangsveien 「鳥の歌通り」・・・オスロではないのですが、鳥のさえずりが聞こえてきそうな雰囲気ですね。

 あとデートにぴったりの地名が・・・・
・Kjærlighetsstien「愛の小道」・・・シャイな人には住めない通りですね~。

私がオスロで一番好きな通りの名前は・・・Sorgenfrigata「悲しみのない通り」です!
留学時代にお世話になった日本人の方が、この通りに住んでいました。今では世界的なミステリ作家になったジョー・ネスボも同じフラットに住んでいたそうですよ。もしかして本当に悲しみとは無縁の出世通りなのでしょうか?

・・・・と少しでも意味が分かれば散策もより楽しくなりますね~。

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ケーキ戦争 in ノルウェー(フィンランド人も参戦!)

ノルウェーのバースデーケーキ
ノルウェーのバースデーケーキ

ノルウェー語から日本語に翻訳しにくい単語に「foreldremote」があります。
Foreldre=「両親」、mote=「会議」ですが、一語にするとどんな意味になるか分かりますか?
これは各クラスの親が一堂に集まり、先生と話し合いをする場のことで、日本語ならば「保護者会」が適当でしょう。

ただ日本の「保護者会」は、お母さんたちの集まり、というイメージがあります。
ですがノルウェーは「両親」とうたっている通り、「父親と母親」が会に参加するのが一般的。両親ともに働いている場合がほとんどなので、平日の夜に開催されます。つまり、お父さんも早く帰宅できることが前提にありますね。
なので、日本語の「保護者会」と訳すのが、微妙に違和感があり、「両親の会」と訳したくなるのですが・・・そうすると、日本人には分かりにくくなってしまう。何とも難しい単語です!

さて、そんな「両親の会」ですが、何とも平和な(?)騒動があったそうです。
ノルウェーの新聞の見出しに「kakekrig」=「ケーキ戦争」という見出しが載っていて、「なんじゃそれ?」と好奇心で記事を読んでみたら・・・。

ノルウェー人男性が焼いたおいしいケーキ
ノルウェー人男性が焼いたおいしいケーキ

オリンピックの街で知られるリレハンメルの学校で、ちょっとした騒動が起きました。
「“両親の会”にケーキを焼いて持っていきませんか?」とあるお父さんがクラスのFacebookに呼びかけたところ、何人かのお母さんが「焼きますよ」とボランティアで申し出たのです。
しかし、フィンランド人のお母さんがこう書き込んだのです。「もう“両親の会”にケーキを持っていくことにうんざりだし、外国人には理解できない。今度は男性たちがケーキを焼くべきです。」

それから、クラスの両親たちに波紋が広がり、問題は「家庭における男女の役割」にまで発展したところが、まぁノルウェーらしいですよね~。

前述のフィンランド人母のコメントを引用してみましょう。
「フィンランドでは”両親の会“は問題を話し合う場であり、ケーキを食べて、くつろごうなんて誰も考えません。ノルウェー人は、くつろぐことばかり考えている。ケーキの準備の提案は、別に母親だけに向けられたものではありませんが、母親がケーキを作ることが期待されています。仕事を終えた後、18時の会にケーキを持ってこいなんて・・・。だから女性は疲れ切ってしまいます。」

夏休み前、ケーキ&コーヒーでくつろぐ図
夏休み前、ケーキ&コーヒーでくつろぐ図

同じ「北欧」とは言え、フィンランド人とノルウェー人の違いが垣間見られて、興味深いですね。

私は、ノルウェー人が自分の誕生日にケーキを焼いて職場に持参したり(男性も!)、夏休み前になると、職場では、フルーツやケーキを用意して、みんなでリラックスするシーンを知っているので、「両親の会」の雰囲気はな~んとなく想像できます。

子どもは無邪気
子どもは無邪気

日本の「保護者会」ではこんな「騒動」は起きないと思いますが、どんな時でも「リラックス」や「くつろぎ」を求めてしまうノルウェー人の国民性が面白いですね。

「ケーキ戦争」—あなたはノルウェー派それともフィンランド派ですか?

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お国別観光客の行動拝見!

5月にノルウェーへ行ってきました。

前半は、世界各国のノルウェー語翻訳者150人が招待された「翻訳者セミナー」に参加し、その後は「観光客」に徹し、オスロ、ベルゲン、フィヨルド地帯を訪れました。

素敵なヒゲのムッシュー
素敵なヒゲのムッシュー

改めて「観光スポット」めぐりをして、実にいろいろな国籍と思える観光客が来ているのね~、と感心。ついついその人たちのふるまいを観察してしまいます。

わが道を行くドイツ人
わが道を行くドイツ人

意外と多かったのがフランス人。フランス語でずっとおしゃべりしているので分かります。
「フランス人は愛(アムール)の国民」というステレオタイプがありますが、さすがに景観を走るフロム鉄道で、いちゃついているフランス人はいませんでした。一眼レフのカメラで律儀にシャッターを切っています。

あと、どこの国籍かは断定できませんが、スペイン語を話す観光客も意外と多かったですね。ベルゲンのお魚レストランで、メニューに載っている「バカラオ」を見て、「バカラオ!バカラオ!」と大騒ぎしていたからです。

バカラオ
バカラオ

バカラオは、ご~くかいつまんで説明すると、乾燥タラのトマトソース煮でしょうか。スペイン語圏の食べ物ですが、この乾燥タラが「ノルウェー産」であることから、ノルウェー人は「バカラオはノルウェー料理」と信じている節があります。
そのスペイン語圏の皆さんたちは揃って「バカラオ」をオーダーしたようですが、祖国でも食べられるものをわざわざノルウェーで?と思うのは・・・はい、余計なお世話ですね。

「アメリカ人、意外と少ないのかなぁ」と思っていたら、いました~!フロムからのフィヨルドクルーズ船をミュルダールで降りて、目がくらむようなヘアピンカーブをバスで降りていきます。そのバスにアメリカ人が結構、乗っていたのですが・・・・。

ヘアピンカーブ
ヘアピンカーブ

 

私はアメリカ人を映画やドラマといった媒体を通じてしかあまり知らないので、過剰な思い込みがあります。
常に「グ・ジョブ!」や「ジーザス!」と大げさな相槌を打ち、すぐに「ハイタッチ」。学校ではチアガールの女子とアメフト男子をトップとしたヒエラルキーが存在し、ハイスクール卒業時には「プロム」なる恐怖のイベントがある・・・。ああ、アメリカに生まれなくて良かった!と思っています。

すみません、話が脱線しました。で、そのアメリカ人たちに注目していると、「オー・マイ・ゴット!」をリアルに聞くことができプチ感激しました~。また、ポテトチップを片時も離さない女の子がいて、この姿にも納得。
そして、バスが見事にヘアピンカーブを降り切ったところで、アメリカ人たちは、「ヒューヒュー!」と口笛を吹き、拍手喝采をしたのです。これ、これ!このテンションの高さを常にキープしている姿勢に感動・・・・。バス酔いとは無縁の人々です。

さて、ノルウェーですら、「日本人観光客=カメラ片手」と烙印を押されていましたが、今回の旅行で新たに気づいたのは、「被写体ポージング」です。
アジア系の人々(中国?韓国?台湾?)は、「あなた、モデルさんですか?」というくらいポージングを決めて写真撮影をしていました。
特に印象に残ったのは、オスロのヴィーゲラン公園での出来事。ここには、ノルウェーの彫刻家ヴィーゲランの彫刻がたくさん並んでいます。ま、普通は彫刻の写真を撮ったり、せいぜい彫刻と並んで写真を撮るくらいなのですが・・・。

とあるアジア人3人組は、なんと男女が座って抱き合っている彫刻を「まねて」中年男女カップルが座って抱き合います。それを何の逡巡もなくシャッターを切る女性・・・いや~、これにはさすがに驚きました!生徒さんたちにこのエピを話して、「どこの国の人だと思います?」と聞き回ってますが、みなさん答えがバラバラ・・・詳しい方、教えて下さ~い。

名作の再現
名作の再現

・・・とノルウェーの自然を前に、相変わらず下らないことに思いをはせる楽しい旅でした~。

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子ども新聞 in ノルウェー

仕事柄、ノルウェーの新聞は購読したり、ネット版をチェックしています。
愛読紙「アフテンポステン」が2年前に「アフテンポステン・ジュニア」紙をスタートしたことを知りました。子ども向けの新聞と銘打ってあります。
以前、「ノルウェーについて学ぶサロン」で「ノルウェーの社会科教科書」について取り上げたことがありました。完全に大人と生徒が対等である教科書づくり、社会の負の面にも言及し、地に足のついた内容に驚いたのです。
ですから、この「子ども新聞」がどんな内容なのかすご~く気になりました。すぐに見たかったのですが、Web上では公開されていません。今年5月に渡ノルした際にようやく現物をゲットしました!

子ども新聞
子ども新聞

「子ども新聞」は、大人向け新聞と同じ体裁をとっています。海外・国内ニュース、特集、経済、科学、スポーツ、意見コーナーなど。簡単な表現や言葉は使っていても、子ども向けでも内容は「シリアスかつ現実的」です。

例を挙げてみましょう。
まず国内ニュースの特集は、「子どもに対する虐待」です。Q&A方式で、「子どもに対する虐待って何?」「どうして大人はこんなことをするの?」「どうして声を上げられない子どもが多いの?」などの質問に、明快な答えを与えています。

何を考えている?
何を考えている?

虐待にあっている子どもたちの心配である「自分が訴えたら、残された家族はどうなるの?」、「ママやパパはどうなっちゃうの?」といった質問に対しても、児童局の仕事について分かりやすく説明し、子どもの不安を和らげようとする意図が見えます。
特集全体を通じてのメッセージは、「周りの信頼できる大人に伝えること」。
これは、翻訳出版に携わった「パパと怒り鬼」というお父さんのDVに悩む子どもの絵本と共通したメッセージです。

他に目を引くのは、「国際面」の充実ぶりです。
ノルウェーに留学して驚いたことの1つにニュース番組や新聞で「海外ニュース」の報道比重の多さがあります。
それは「子ども新聞」でも同じでした。まず1面と2面は、世界のいろいろな国でどんなニュースが起きたか、そして特集ページでは、昨年11月にフィリピン台風で被災した子どもたちのレポートが掲載されています。
ノルウェーは小国で国内ニュースが少ないから、海外ニュースが多いという解釈もできます。ですが、海外での内戦などが起きたら、難民としてノルウェーが受け入れる、ノルウェーが派兵するといった「身近な問題」として、また国内にたくさん住んでいる移民や難民の母国情勢を知るうえでの助けとなるという事情もある、と考えるようになりました。
早い時期から「海外に目を向ける」姿勢が、紙面から読み取れます。

どうしたの?
どうしたの?

ノルウェーは世界でも屈指の「男女平等の先進国」です。
よく「どうして北欧やノルウェーは、男女間の不平等が少ないのですか?」という質問は受けますが、小さい頃からの教育の積み重ねは大きな要因ではないでしょうか?
子ども新聞では、「どうして男の子が多いスポーツ、女の子のスポーツがあるの?」という特集が組まれていました。
例えば、「乗馬」。「男の子のスポーツ」というイメージがある国が多いですが、ノルウェーでは逆です。
そこでこの特集では、希少な「乗馬を楽しむ男の子」を写真入りで取り上げ、「女の子のスポーツ、男の子のスポーツって決めつけるのは変だよね」という男の子の率直なコメントが掲載されています。
他にも、フィギュアスケートをやっている女の子は390人に対し、男の子は8人。フェンシングは男の子が613人に対し、女の子は155人、と具体的な数字を挙げて、「へえ~」と改めて男女の違いの現状が、わかる記事になっています。

さらにさらに驚いたのは「経済面」です!
高校生の社会科教科書でも驚きましたが、「お金」について真正面から考えさせられる内容が盛り込まれています。
「お金が余ったら貯金をしよう。そうすれば利子がつく。もっと長い間、貯金をすれば将来は株が買えるようになる。」と子ども相手に「株購入」までアドバイスする新聞って・・・。カルチャーショックですね~。

紙面では、大人からの一方的な記事を与えるのではなく、子どもたちの意見や質問などにも多くのページを割き、「対話型」のツールになっています。
「おかしいと思うこと」
「自分の意見をはっきり言うこと」
「困っていたら声を上げること」
簡単そうでできないですよね。でも、小さい時からのトレーニングで、やがて「声を上げられる大人」に育つのだなぁとしみじみしちゃいました。

スクールツアー
スクールツアー

「どうせ子どもだから分からない」ではなく、「子どものうちから、目を開かせよう」というノルウェー人らしさが垣間見られた「子ども新聞」。
ノルウェーやノルウェー人についてからかってばかりの私ですが、素直に「いいね!」ボタンを押したい気分です。

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歯医者コワイ

世界に冠たる福祉国家ノルウェー。様々な福祉サービスは充実しています。例えば、入院や出産費用は無料です。通常の医療行為は、日本と同じように「一部負担」を払うシステムです。

歯科診療に関しては、18歳まで無料。19歳、20歳は一部負担ですが、20歳を超えると「全額負担」という名の「試練」が待っています。これ大げさな表現ではありません。

 

高校生だから歯医者は無料
高校生だから歯医者は無料

ノルウェーの医療サービスは公的なものが多いですが、こと歯科医は民間が大勢です。

「ノルウェーの歯医者は高い」とよく聞いていました。あまりに高くて、ブルガリアやハンガリーなどへ行きホテルに泊まって歯科診療を受ける、といったエピソードは珍しくありません。そこで、どれくらいノルウェーの歯科診療が高いのか、あるオスロの歯科医の料金表を見てみました。
 

検診=約12500円~

かぶせ(デンタルクラウン)=約70000円~

ブリッジ=同上

義歯=約93000円~

 

これちなみに最低料金表示です。日本とおなじでかぶせるものの材質によって値段はどんどん高くなるでしょう。あと料金表で笑えたのは・・・・

 

患者を落ち着かせるための会話および歯医者恐怖症をなだめる=無料

 

これってマクドナルドの「スマイル0円」みたいと感じるのは私だけでしょうか?

 

歯磨き粉ではありません
歯磨き粉ではありません

ノルウェーで歯科診療が高額であることと、人々が「完璧な歯」を目指しているのは、ある種の皮肉を感じます。ノルウェーの恩師が来日した際、「日本の子どもはあまり歯科矯正していないわね」と感想をもらしました。確かに、ノルウェーの子どもはもっと矯正をしていたような・・・・これは、「きれいな歯並び」を重んじる国民性ゆえと想像します。

18歳までの歯科診療は「無料」と書きましたが、「矯正」は別です。18歳までの矯正は、その治療によって最大75パーセント保険でカバーできるようです。それでも「娘の矯正に26万かかった」というコメントを新聞記事で見つけました。これが全額だったら・・・やはり子どものうちに矯正です!

 

白い歯っていいな
白い歯っていいな

例えば「教育」は、「どんな家庭環境でも平等に教育を受ける権利がある」という基本方針がありますが、歯科診療は、お金に余裕がないので10人に1人が歯医者に行けないという統計があります。お金がないため歯医者に行けず、歯が欠けていている女性が「恥ずかしくて人前で歯を出して笑えないし、外での食事も考えられない」とコメントしている記事を読みました。こうなると深刻ですね。

ノルウェー人の友達が、ビンボーな息子さんに「歯医者のプレゼントカード」を贈ったという話を聞きました。主に誕生日プレゼントに利用する人が多いようですが、そのプレゼントカードを持参すれば「検診=約16000円」とか「ホワイトニング=34000円」など歯医者で利用することができるそう。まさにノルウェー商法!

 

これだけ「歯医者はお金がかかる」と人々は骨身にしみているのか、虫歯や歯が汚れないように、「歯を磨いた後は、水しか飲まない」、「歯間歯ブラシの利用率高い」「つまようじはおっさんだけが使っている訳ではない」と歯の衛生には注意を払っています。

ノルウェーが誇る歯ブラシメーカーJordanのつまようじは鋭くて、「歯垢は取ってやる!」という執念を感じます。

 

左)Jordan 右)日本のつまようじ
左)Jordan 右)日本のつまようじ

もっと遡れば、幼い頃からの「虫歯防止への啓もう活動」がありました。ノルウェー人ならば誰もが知っている『Karius og Baktus』(カリウスとバクトゥス)という絵本があります。

歯磨きが大嫌いな男の子イェンスの口の中で「カリウスとバクトゥス」という虫歯菌が元気に活動。特にイェンスがキャラメルクリームやふわふわの白パンを食べると彼らは大喜び。でもイェンスが虫歯の苦しみから歯を磨き、挙句、歯医者へ行ってしまうので、カリウスをバクトゥスはイェンスの口の中から追い出される、というストーリーです。

全然、説教臭くなく楽しい歌も挿入されていて、1949年から愛され続けられた人気キャラクターです。

 

カリウスとバクトゥス
カリウスとバクトゥス

素朴な疑問。「なぜ歯医者だけ全額負担?」これは、国民のほとんどが「一部負担にすべき」と思っているのに、未だ実現できていません。福祉国家にも「自己責任」の面があるという教訓でしょうか?

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