ノルウェー旅行記2005

第1回

ノルウェーには、オーモットÅmotという地名が、6ヶ所あるとか。
私が行ったオーモットÅmotは、Buskerud地方。一番近い都会が、ドランメンDrammenだそうです。
今回の旅行で、最初の訪問地はオーモットÅmotでした。

成田→コペンハーゲン→ガルデモーエン空港というおなじみの経路。
今回は、ガルデモーエンからコングスバルグKongsberg行きの電車に乗り(車内に温度計と次の駅名の電光掲示板あり。moderne!)、ようやく目的地ホックスン駅Hokksundに到着(現地時間21時15分)。
外はまだ明るいが、およそ一日かけて到着した計算になる。

私がオーモットを訪れるきっかけを作ってくれた友人のガラス作家・浅田昌永(あさだ・まさえ)さんと、彼女のお師匠さんガイルGeir氏が迎えに来てくれていた。
ようやく、ここまで来れたという安堵感、友達に会えた安心感。およそ一年前から、「遊びに行くからね」と浅田さんに約束していて、その希望が叶った達成感--。
と美しい余韻にひたる間もなく、日本との気温差にブルブル震えて、急いで車の中へ乗り込む。
オーモットの風景は、西ノルウェーとは違い、起伏が少なく、穏やかでのんびりしていた。

そう。それまで特に、ノルウェーと関わりなく幸せに暮らしていた浅田さんが、「ノルウェーのガラス工房で働くかもしれない」と教えてくれたのが、約1年前。
それからが大変だった。いちいち列挙しないが、最大の問題は、やはりビザ。
出発前にビザが下りず、ノルウェーへ到着してから、UDI(移民局)と厳しい交渉に臨んだらしい。浅田さんの雇い主であるGeir氏は、遅々として進まない状況を打開するため、弁護士を雇ったり、いろいろな人に相談した。
彼女のストレスも、相当のものだったであろう。ビザがないと、諸手続きが進まないし、宙ぶらりんな気持ちだったと思う。
浅田さんのケースは、ノルウェーの新聞VG紙に取り上げられた。いつもの、「UDIはわかってくれない」調で。
ようやく12月末、彼女が日本へ一時帰国した日にビザは下りた。
ガラス工房入り口と寝そべるワンちゃん今年のお正月、日本で会った彼女が、「遊びに来てね」と誘ってくれた。
誘いに乗って、一日かけて、オーモットまでやって来た。

翌日。心配していた天気は晴天。楽しみにしていた職場訪問!
オーモット中心地にある浅田さんの家から、歩いて15分くらいのところに、Kongsfoss Kunstnersenter(「コングスフォス・芸術家センター」)はあった。
周囲は川と滝に囲まれ、どこまでも牧歌的な風景。Geir氏の工房、Glasshyttaの看板が見える。

中に入ると、すでにGeir氏が朝のコーヒーを飲んでいた。
すぐに仕事に取りかかるのではなく、まず、浅田さんとコーヒーを一緒に飲むのが習慣らしい。そして、その日の創作について思案するそうだ。「違いがわかる男」が出てくるネスカフェ・ゴールドブレンドのCMを地で行くGeir氏。。。

制作中のGeir氏と浅田さん二人のガラス制作が始まった。
工房の中は、溶解炉のせいでかなり暑い。Tシャツ姿で、二人はきびきびと動いている。
素人目にも、ガラス制作は「スピード勝負」なのが、よくわかった。高温のガラスは、早く形をつけないと、固まってしまうからだ。あれこれと迷っている時間は、なさそうである。
「まさえちゃん、かっこいい!」
ノルウェーの寒さにおびえてたくさん着込み、汗ばんできた私は、友達の姿が誇らしかった。

工房の内部は、ノルウェーのほとんどの職場がそうであるように、とても美しい。
壁にディスプレイされている、カラフルなガラス作品は、白い壁によく映える。

               ガラスの作品     美しい青のガラス作品


また工房の窓からは、すぐ前を流れる川の景色が楽しめる。
ガラス制作に疲れたら、ちょっと外を眺めるだけで、浅田さんの心を癒してくれる(はず)。

川景色とガラス      さかな君  ←ちょっとフグっぽいお魚



私が見学している間、見知らぬ女性たちが工房に入ってきた。どうやら、お客さんらしい。
オスロから車で1時間くらいの距離ということ、近くにある観光スポット「青の色工房Blaafarveværketから車の便が良いということが手伝って、大きな看板を出さなくても、ふらっと立ち寄るお客さんがいるようだ。

ここ「コングスフォス・芸術家センター」には、Geir氏以外のアーティストも活動している。
ずいぶん早いランチ(10時半)を食べるために、2階の台所に上がり、オープンサンドを食べていると、彫金師のシーヴSivさんが入ってきた。Hei!
彼女のアトリエにお邪魔して、「芸術家センター」立ち上げのきっかけや作品について、いろいろお話をうかがう。

「ここは、ただの工場跡地だったのよ」
「へぇ~。なるほど」
「工場が中国に移転する話を聞いて、陶芸家のトーリルTorillと一緒に、”それだったら、アトリエにできないか?”って思いついたの」
それからは、ここの自治体コミューネ(kommune)に働きかけて、実現したらしい。現在、「芸術家センター」には、ガラス作家、彫金師、陶芸家、画家の人たちが、それぞれのアトリエを持って創作活動を行っている。

Sivさんのアトリエは、ちょっとした「中世時代」の気分が味わえる。彫金師のSivさん
繊細かつ秘密めいた道具類のせいだろうか。吹きガラスにしても、
彫金にしても、昔ながらの製法を守っているジャンルで、大量生産とは無縁。のどかな「芸術家センター」にふさわしい、と納得する。


アトリエ内部は、創作の場であると同時に、作品のディスプレイを楽しめる。


Sivさんの首飾り     すごく大きな指輪  ←Sivさん自身がモデルになってくれました

ご覧の通り、Sivさんの作品は、「スカンジナビアン・サイズ」!(といっても、Sivさん自身はとても小柄)。
一度見たら、忘れられない個性的なアクセサリー。魅了されました。

Sivさんは、「芸術家センター」がとても気に入っているよう。というのも、
「一人で集中して、アトリエにこもることもできるし、下に降りて、他の人たちとおしゃべりもできるから」。そうそう、ここの人たちは、みんな飼い犬をつれてきていて、飽きずに「犬談話」で盛り上がっていた。
「それに、窓からは美しい風景が見られるし」。Ummm、良いでありますな~。

下のガラス工房に戻ると、勤務時間中の浅田さん&Geir氏は、精力的に作品を作り続けていた。
二人が一緒に働き始めてから、まだ一年経っていないが、あ・うんの呼吸が感じられるほど。

Geir氏&浅田さん    細腕でがんばる浅田さん 長い間、見ていても飽きません。。。手仕事っていいですね


午後3時を過ぎた頃であろうか。陶芸家のトゥーリルTorillさんが、やって来た。
Sivさん同様、小柄で可愛らしい女性である。お言葉に甘えて、またまたアトリエ見学をさせてもらうことにした。
Torillさんは、たくさんの注文を受けて、ややてんてこまい状態。聞くと、地元のスキークラブとか○○クラブといった団体が、記念のマグカップなどを注文してくるらしい。忙しい中、私の注文に答えて、「創作活動中っぽく見える」写真モデルを引き受けてくださった。

たくさんのマグカップとTorillさん      場所を変えて、お願いしました  これをもらえる子どもは幸せ。。。

Torillさんの作品
Geir氏やSivさんと同じように、ここがTorillさんの創作の場であり、
また作品を展示する場でもある。
彼女の作品は、青が基調。部屋を飾るため、実際に使うため、どちらにも
向いている陶器だ。

Torillさんは、話し好き。私が質問をはさむ間もなく、「芸術家センター」のこと、作品のこと、もうすぐやって来る実習生のこと、そして愛犬のことを語ってくれた。
たくさんの注文があって、時間は大丈夫なのかな?終いには私の方が、心配になるほど。。。
きっとお客さんが立ち寄っても、こんな感じでおしゃべりに夢中になっていることだろう。
彼女の優しい人柄が、作品ににじみ出ている。

夕方の4時過ぎ。そろそろ、ガラス工房は店じまい。
私が来る前、浅田さんは、「ここに一日いても、きっと飽きちゃうね」と心配してくれたが、なんのなんの。
時差ボケとは無縁の、密度の濃い時間を過ごせた。 浅田さんをはじめ、皆さん、どうもありがとうございました。

ノルウェーの犬はノルウェー人よりお行儀が良い   ノルウェーの犬は、本当に幸せそう人間もね?



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