ちょっと昔の・・・・
●●●最近の話題●●●
Vol.2
ノルウェートピックス【11】〜【20】
ノルウェートピックス【11】 |
・祝 ノルウェー王国国王夫妻来日 「森総理、ノルウェー国王主催晩餐会をドタキャンして、すし屋に行っていた」珍事件の余波で、思わぬ「脚光」を浴びてしまった国王夫妻ですが、それを除けば、日本のマスコミの取り上げ方は、いたって地味でした。 |
ノルウェートピックス【12】 |
・いくら、北欧の税金が高いといっても... ノルウェーを含む北欧諸国は、高度社会福祉国家を維持するために、国民は高い税金を払わなくてはいけない、と言われています。確かに、それは事実ですが、4月27日付のダーグスアビーセン紙には、いくらノルウェーでも、法外な追徴課税通知を受けた人のお話が出ています。 今回の事件で、脚光を浴びた26歳の男性の年収は、67,000クローネ(約87万円)。彼のもとに、オスロ税務署から手紙が来ましたが、それによると、彼の年収は、2,500万クローネ(約3億2千万)になっており、その他、北ノルウェーのトロムソに所有している住宅や不動産の分をあわせて、しめて6億5千万クローネ(約84億!)の追徴課税が請求されていました。 その手紙を彼は、何度も読み返して、膨大な数字を後ろから数え直したそうです。 というのも、彼は、トロムソに住宅も不動産も持っていないし、住んでいるのはベルゲンの賃貸アパート。おまけに、そんな高額な年収はもらっていません。全く身に覚えのない数字の羅列に、彼自身、動揺したのも当然でしょう。 「税務署に、苦情を言えばいいのか、それとも、すごく収入があると言ってくれて、感謝すればいいのかな」とにわかリッチの彼は、冗談ぽく語ってますが、この途方もない間違いは、彼の職場の書類ミスが原因とも考えられるそうとか。 彼は、オスロ税務署と住民登録局に、間違いをただそうと、1週間も電話をかけ続けていますが、つながらない、と記事にありました。新聞社の方も、コメントを取ろうと、税務署に午後の3時5分に電話したところ、当然ながら、業務終了時間を過ぎている(3時でしょう)ので、つながらなかったそうです。うーーん、ノルウェーらしいオチですね。 「1週間も電話かけてつながらないなんて、話作ってる」と、お思いの方もいるかもしれませんが、私自身、留学中、オスロの移民局に朝9時すぎに電話しても、「事務取扱い時間は、朝の9時から2時まで。かけ直しなさい」という自動テープを何度も聞かされた経験があるので、さほど驚きません。 税務署員の人が、この記事に気づいてくれることを、祈りつつ...。 ←話題のトップへ戻る |
ノルウェートピックス【13】 |
・スリ集団の暗躍 ノルウェーは、他のヨーロッパ諸国に比べ、治安がいいと言われています(治安がいいことに安心し切って、私は、オスロのお店でお財布をすられた経験が..)。 しかし、4月28日のダーグスアビーセン紙には、オスロの地下鉄などで暗闘するスリ集団について取り上げおり、乗客たちに警告を発しています。 「地下鉄は、スリたちのエルドラド(黄金郷)」というタイトルがついたその記事には、オスロのラッシュアワー時(日本とは程度が違いますが...)などで、地下鉄車内と駅のプラットホーム、またバスやトリッケン(路面電車)で、昨年度、スリ被害の届出件数が、1万件だったとあります。この数字は、盗難場所としてはトップ。ちなみに、住宅からの盗難件数2,500件あまりだそうです。 こうした地下鉄構内などでスリを行う犯人は、集団化したグループで、たとえ、あるグループを捕まえても、まだ他のグループがたくさんあるのが現状だそうです。 スリ集団が、主にターゲットにしているのは、バック類を持っている女性たち。 オスロの交通局と警察が、共同して、スリ防止キャンペーンを始めましたが、バックの口を閉め、常に気をつけるように呼びかけています。警察関係者も、交通機関での多いスリ被害を、「重要な問題」と位置付けています。観光で行かれる方も、要注意! ←話題のトップへ戻る |
ノルウェートピックス【14】 |
・メーデーの悲喜劇 日本のメーデーは、近年、めっきり政治色が薄れ、特に注目を集めるようなことはありませんが、今年のノルウェーのメーデーは、ハプニング性に満ちたものになったようです。 5月2日付のアフテンポステン紙によると、現外相で、与党である労働党のヤーグラン党首が、オスロで行われたメーデーの集会で、顔面にケーキ攻撃を受けた記事が載っています。見事に決まった写真が出ていますので、こちらから記事をご覧下さい!(ちなみに、彼の右隣にいる女性は、左派社会党党首のクリスチャン・ハルヴォルセン氏)。 「目にクリームがたくさん入った」と、事件後のインタビューで、ヤーグラン氏は答えています。本当にお気の毒ですが、同時に笑ってしまいますね。 ヤーグラン氏は、前々首相ですが、ブルンラン首相の後だったので、陰も薄く、おまけに不人気で可哀相な人というイメージがあります。口下手なのか問題発言も多く、「清掃といったクソ仕事」みたいなことを、うっかり言ってしまい、清掃業の人たちから、「クソ仕事なんて言うな!」とクレームされた過去もあります(彼の本意は、清掃業に対する侮蔑ではなかったのですが、言い方がまずかった)。 本欄のNo.11に書いてあるように、国王夫妻来日の折、同行していましたが、今回の1件で、更に「可哀相な人」というイメージが強まった感があります。 報道陣は、ケーキをぶつけた人たちを取材したかったようですが、ケーキ攻撃後、一目散に逃げてしまったとか。何とか、匿名を条件にグループの1人に話しを聞いたようですが、労働党の右寄り路線に対する怒りが背景にあるようです。 メーデー当日のスピーチで、最も拍手が起きたのは、ヤーグラン氏の時ではなく、極左政党の赤色選挙同盟(すごい名だ)の党首、ミーレ氏の時だったと、2日付ダーグスアヴィーセン紙に出ていました。彼は、ヤーグラン氏のケーキ攻撃に対して「自分もケーキをぶつけられたことあるけど、すぐ乾くし、大したことないよ。だけど後で、酸っぱい牛乳のにおいがして、嫌だけどね」と、経験者のみが知り得るコメントを寄せています。 政治家も楽じゃありません! ←話題のトップへ戻る |
ノルウェートピックス【15】 |
・フォルネブ空港跡地の住宅地建設計画 98年の秋にガルデモーエン空港が開業しても、「フォルネブの方が、町中に近くて良かったな。空港バスから町中へ走るバスからの眺めも良かったし...」とお思いの方、それは私も一緒です。 フォルネブ空港の跡地は、ITセンター建設などニュースで見てきましたが、6月1日付ダーグスアヴィーセン紙によると、同跡地には、大規模な住宅地建設計画もあるそうです。 竣工は、2003年12月。国内の大手建設会社3社がプロジェクトに参加するそうですが、プロジェクトの計画者、Erik Bølerさんのインタビューから計画内容を紹介してみましょう。 まず、この住宅地区は、緑の多いものになるそうです。地区の真ん中には、大きな公園やプール、またヨットハーバーの建設も計画されています(オスロのアーケル・ブリッゲ地区を意識しているようです)。 住宅は、値段・タイプともバリエーションに富み、子供のいる家族、お年寄り、学生、それぞれを対象にした住宅を建設。周囲の緑とアーバンな空間のコントラストをイメージしているとか。Ummm..完成した暁には見てみたいですね。 この住宅プロジェクトを計画する上で、フィンランドのヘルシンキとスウェーデンのヘリシンボルグ(ヘリシンボリ?)郊外の街並みからインスピレーションを得たそうです。 さらに、この地区の近くに、国内サッカーチーム、スターバクス(Stæbaks)のスタジアム建設計画もあるそうです。チームのファンは、我先にこの地区に引っ越してくるのでしょうか? 問題は、工期がちゃんと守られるか、ですが、こればっかりは誰もわかりません。 ←話題のトップへ戻る |
ノルウェートピックス【16】 |
・オスロ住民と精神のアンバランス 6月15日付アフテンポステン紙によると、オスロ住民のうち7人に1人が、精神のアンバランスという問題を抱えているという調査結果が、発表されました。 この調査は、オスロ大学のスヴェン・トーゲシェン教授が1994年から1997年にかけて、オスロの住民2000人強を対象に行い、今週の木曜日、アメリカで行われた精神医学の学会で公表されました。 住民の間に発見された人格障害の症状は様々。偏執症の特徴があるもの、他人からの批判に過剰反応するもの、現実逃避、分裂症状、反社会的行動を起こすものなどが挙げられています。 特に、精神のバランスに問題がある人たちのグループとして、町の中心地に住んでいる人、ひとり暮らしの人、教育レベルが低い人、経済的に恵まれていない人などが指摘されましたが、同教授によると、これらの要素と人格障害の因果関係を結論付けることはできないそうです。 ただ、人格障害について、「大都市の現象」と言えるそうで、オスロにおける人格障害者の数は高いとのこと。しかし、他のヨーロッパの大都市と比べると、ほぼ同レベルの数字であろうと教授は言っています。 ←話題のトップへ戻る |
ノルウェートピックス【17】 |
・皇太子の婚約者「独占」インタビューと「インタビュー泥棒」 本欄No.5で取り上げたように、ノルウェーのホーコン皇太子がシングルマザーのメッテ・マーリットさんと婚約をしましたが、メッテ・マーリットさんは、息子の父親に麻薬所持の前科があったり、自らも「ハウス系」の環境に身をおいていたことなどが、マスコミで取りざたされてきました。 そんな話題の渦中であるメッテ・マーリットさんが、6月16日付のダーグスアヴィーセン紙の単独インタビューに応じ、話題を呼んでいます(彼女の写真をご覧になりたい方は、こちらから)。 まず、同紙を選んだ理由は、彼女がフォーク・ユニヴァーシティ(Folkuniversitetet)のジャーナリストコースを受講した折、同紙に実習生としてジャーナリズムを学んだ経緯によるもの。 インタビュー記事はかなりのボリュームで、日本の皇室記者会見とはかなり違った率直な質問が目に付きます。幾つか紹介してみましょう。 −王宮への出勤について 「王宮でいわば王妃研修を受けるため、9時から16時まで王宮に毎日来ている。ヨーロッパの王室について、外交など様々なことを学ぶ必要があるから」 −ニューヨークで30万クローネ(約400万円)分の洋服を買った気分は? 「昔は普通の女の子のようにショッピングは楽しかったけど、今はストレスを感じる。帽子をかぶるなんて自分にとっては新しい経験。洋服も今までとは違ったスタイル。今でも、ジーンズにジョギングシューズが一番好き」 −プロポーズについて 「お互いにプロポーズし合った。別にホーコンが膝まずいてプロポーズしたわけではない」 −貧しいシングルマザーから皇太子の婚約者になって変化はどう? 「お金は自由を与えてくれると人々は思っているけど、今の自分には貧しかった頃より自由がない」 −あなたもうんざりするような家事なんてするの? 「週に1回、ハウスクリーニングの人が来るけど、それ以外の家事は自分たちでやっている」 −皇太子は料理が上手になった? 「あまり上手になってないけど、だいぶ、家庭的になってきている」 −あなたのメッテ・マーリットという名前を、例えばマルグレーテに変えたらという提案があることをどう思う? 「私の名前はとてもいいノルウェーの名前よ。とても気に入っているし、変える必要なんてない」 −あなたについて様々な噂があることについて 「不公平。インターネットに嘘ばかり書かれている。火のないところに煙を立てていると思う。自分の人生の中で、違うように行動すべきだったと思うことはあるけど、新たに選択することはできない。でもポジティブな面もある。私は、とても辛い時期を経験してきたけど、それを通じてより強くなったと思う」 −結婚式について 「とてもナーバスな気分。結婚式では、(サーメ人の歌手として有名な)マーリ・ボイネ(Mari Boine)と(ジャズ奏者の)ヤン・ガバレーク(Jan Garbarek)が演奏することになっていてなっている」(彼女自身のお気に入りは、ヒップホップ°系) −メディアとの関係 「以前はもっとメディアに対して怒りを感じていたけど、ジャーナリズムの勉強をしてから、以前より怒ることはなくなった」 −あなたの子供マリウスは、自分の兄弟や姉妹が王子や王女になることをどう感じるだろう? 「マリウスにとっては、兄弟や姉妹であることが第一で、肩書きは二の次」 −一夜にして超有名人になったことについて 「最初に自分のことが新聞の一面を飾ったとき、2日間泣いた。今では、自分が一面になっていてもほとんど注意しなくなったけど。アフテンポステン紙が、「メッテ・マーリットと彼女の婚約者がやって来た」と書き、ホーコンの名前すら触れなかった時、とっても面白いと思った。 −あなたの苗字をなくすのは悲しい? 「とても。とても悲しい」 ...とまあ、彼女は最初の単独インタビューを無難にこなし、やれやれだったはずですが、このインタビュー記事には、後日談があります。 まず、ダーグスアヴィーセン紙にとって「独占インタビュー」だったはずなのに、タブロイド紙のVG紙がこのインタビュー記事を「盗んだ」のです!ほとんどインタビュー内容を引用し、あたかもVGのインタビューに応じたかのような記事を作り、しかもこの独占インタビューが、ダーグスアヴィーセン紙に掲載された同じ日に「エセ」インタビュー記事を掲載したVG紙。 当然、盗まれたダーグスアヴィーセン紙もプレス委員会もまた不快感を表明し、アフテンポステン紙もVG紙に批判的な記事を掲載しました。 6月19日付のアフテンポステン紙には「ロビンフッドと逆の行為をVG紙はした」とあります。経営的に苦しく「貧しい」ダーグスアヴィーセン紙から、スクープを盗んだ金持ちのVG紙の行為に引っ掛けてます(日本だったら「反ねずみ小僧」的行為)。 大幅な部数増を期待していたダーグスアヴィーセン紙でしたが、どうやらVG紙の2万部から3万部の売上増に貢献してしまったようです。 で、当事者間の決着のつけ方が面白いと思ったのですが、やはり今回の1件で良心の呵責を感じたらしいVG側は、ダーグスアヴィーセン紙でこのインタビュー記事を書いたニーナ・ヨンスルード記者に、お金を払うそうです(6月19日付アフテンポステン紙より)。 その金額は、2万5千クローネ(約35万円)。この金額は、同記者の「月給分に相当する」そうです。高いか安いかの判断は人それぞれでしょうが、VG紙が2万から3万部も多く売れたことを考えると、ちょっと安い気が...。 せっかくジャーナリストコースを受けて、マスコミに理解を深めたメッテ・マーリットさんにとっては、思わず前言を撤回したくなるようなエピソードでした。 ←話題のトップへ戻る |
ノルウェートピックス【18】 |
・夏休みニュースダイジェスト! 「ニュースとは、新しいからこそ価値がある」。 なんてことは、マスコミ最前線とは無縁の「夢ネット」編集者も、重々承知しております。 ですから、7月11日から8月22日までのノルウェー滞在期間、タイムリーにノルウェーから話題を提供しようと計画。わざわざPCまで持参したのですが、なぜかインターネット接続ができず、あっけなく計画は頓挫。うう。 ただし、日々新聞を平均3紙ほど読んでいたので、新聞の切りぬきもかなりの量になりました。無視するのは惜しい...ということで、鮮度には劣りますが、以下、気になる話題を列挙致します。 ●夏の風物詩−学生寮不足をめぐる話題 「なつがく〜れば、おもいだす〜」のは、日本では尾瀬。ノルウェーでは、「学生寮不足」をめぐる記事。夏枯れ時期の新聞と、学生寮不足に翻弄される学生達の記事は、ミョーにマッチします。 今年の夏も、各紙、「田舎から出てきた」迷える学生たちが、「オスロの途方もない」高額家賃と「絶望的な」住宅不足に翻弄される姿をレポート。必ず、行政側から「学生寮の新たな建設」を約束する言葉が、紙面に添えられるのがお約束。これぞ様式美! こうした「定番記事」以外に、新たな動きがありました。7月24日付のダグスアヴィーセン紙によると、お金に余裕のある両親が、娘・息子のためにアパートを買ってあげる傾向を伝えています。すでにお隣のデンマークの首都、コペンハーゲンでは、半数以上のアパート購入が、こうした「親のお買い上げ」(foreldrekjøp=foreldre+kjøp→すごい、また単語をくっつけてる!)なんだとか...。 親が子供にアパートを買ってあげるのは、「ボロアパートじゃかわいそう」という親心に基づく動機&「将来の投資用」というちゃっかりした動機があるそうです。ひところの日本のように、不動産を買っておけば損はしない、現在のノルウェーの状況を反映しているのでしょう。 ●名前の自由化 1999年、「名前法」が自由化されたことにより、従来にはないようなヘンテコな名前を、子供に与える親が増加し、また行政側もそれを認める傾向を、8月6日付各紙が報道しています。 伝統的なノルウェー的な名前以外が増えている背景としては、移民の増加や外国からの影響が挙げられます。 新たに認められた名前の例として、Janken, Kikkan, Kikki, Noffi, Tutt, Bibbi, Totto, Zett, Mphoなどが挙げられています。似た響きがありますね。 日本の法律と同じように、その名前を得ることによって子供が不利益を被ることが予想される場合、行政側からストップがかかります(日本で、「悪魔」と赤ちゃんに名付けた珍事件ありましたね〜。覚えてます?)。 自由化以降もストップがかかる名前の例として、Kukka(フィンランド語では、「花」を意味するが、ノルウェー語では「男性器」)、musa(イスラム圏では、一般的な男性名、ノルウェー語では「女性器」を表す隠語)などが、挙げられています。なんか悲喜劇ですな。 ●移民局のトップ辞職−大量の未処理案件どうするの? ノルウェーの新聞を読んでいると、「移民」という単語を見かけない日はない気がします。政治難民や移民、留学生などの居住・労働ビザ、永住権の審査をする機関は、UDI(移民局)と言いますが、そのUDIのトップが8月3日に辞職した記事が、8月4日付の各紙を賑わせました。 アフテンポステン紙に、ここ数年、移民局の申請1件あたりの査証期間の増加と、未処理案件の増加が、表やグラフで示されています。それによると、98年3月では、9988件の未処理案件。しかし、今年の6月には、26716件にまで増えています。 問題山積の渦中、UDIの担当大臣であるのシルヴィア・ブルースター(Sylvia Brustad)自治大臣のUDI批判や、UDIの内部調査をした機関(Price Waterhouse Coopers, PWC)により、UDI職員の非効率性を始めとする、様々な欠点を指摘されたレポートが作成されたのを受け、ドレフヴェリン(Drefvelin)局長は辞意を表明し、受理されました。 辞職したドレフヴェリン氏は、すでに冬から辞職を考えていたことを、同紙のインタビューで明らかにしています。そして、96年からUDIの職員を倍増したにも関わらず、それを上回る申請数の増加により、対応に時間がかかったことを告白。 彼の辞職後も、26700人が移民局からの許可・不許可の返事待ち、2000人の難民申請者がデータ登録待ち、500人の難民申請者がUDIのインタビュー待ち、というこれからも前途多難なUDIです。 移民局からのこうした長い返事待ちを、上手く利用した人もいます。 アルバニア人の政治難民申請者、Ermir Pulahaさんは、去年の11月来ノルした際、全くノルウェー語はできませんでしたが、本HP「本・音楽」欄でも紹介した「ほとんど人間のいない遠くて、寒い国」(Thomas H. Erikses著)という本をノルウェー語から翻訳し、また、皆様お馴染みの「ソフィーの世界」という大作の翻訳までもこなし、すでにコソボの出版社が出版を決めているそうです。 Pulahaさんは、来ノル前から7カ国語をマスターしていたそうですが、来ノル後は地元のノルウェー語講座に通っただけで、すでに2冊の翻訳とは、ナマケモノには耳の痛いお話しでした〜。 ●秋の選挙を控えて−人気作家が選挙キャンペーンに登場ほか 滞在中、皇太子の結婚をめぐる話題と共に、報道量が多かったのが、この秋に実施される国政選挙をめぐる話題。 今ではすっかり女性党首が減ってしまったノルウェーの政界で、左派社会党(SV)の党首、クリスティン・ハルヴォルセン(Ktistin Halvorsen)は、健闘しています。未だに不足気味の保育園を増やすこと、学校への予算増など教育の重視を公約にしていますが、8月13日に選挙運動開始セレモニーを開きました。8月14日付各紙が報道しています。 その場には、SVの政治家を始め、ジャーナリスト、子供たち、そしてなぜかうさぎやブタが参加していましたが、ノルウェーを代表する若手人気作家、アーレン・ロー(Erlend Loe)までもキャンペーンに登場し、自作の"Kurt blir grusom"(「クットがひどくなった」の意味)から、詩を朗読しましたが、その朗読で笑ったのは、わずか2人だけだったそうで、人気作家氏もさぞ、居心地悪かったでしょうね。ちなみにその詩は、以下の通り。 Kurt er best, Kurt er best クットが一番、クットが一番 Best, best, best 一番、一番、一番 Heia, heia, heia! やったー、やったー、やったー! Mens SV nå sier utdaninng, utdanning, utdanning かたやSVは、教育、教育、教育と言っているよ この本自体は、非常に面白いので、「本」欄で紹介致します。そうすれば、よりこの詩の意味がおわかり頂けるでしょう。 その他、選挙全般で言うと、高すぎる税金や間接税を批判する保守党が、滞在前半中、世論調査で労働党の支持率を上回ってましたが、本格的にTV党首討論などが始まった8月中旬過ぎの世論調査では、労働党の支持が高まりつつあります。 いずれにせよ、劣勢が伝えられる労働党に、「一票投じましょう」と宣言したのが、労働者とは程遠い億万長者のルッケ氏(Røkke)。同日14日付のダグスアヴィーセン紙によると、この超リッチな氏が労働党を支持する理由として、「私の両親は、労働党支持者なので、親の意向に沿いたい」と、今どき珍しい親孝行発言をしています。 確かに彼は、西ノルウェーの漁師を皮切りに、今の地位まで上りつめたわけですから、原点を忘れないということでしょうか?でも、ヨット遊びと金儲けに忙しくて、本当に投票に行くのかな〜?億万長者に愛される労働党、逆説的で面白いです。 ●バーゲン広告に偽りあり! 人々が休暇から戻る8月中旬過ぎ頃から、家電製品の派手なバーゲン広告が目立つようになりました。「朝、7時開店!」などと、ノルウェーとは思えぬ商魂、働き者ぶりの広告を見て感心していましたが、消費者オンブット(Forbrukerombud)は、こうした「安値をうたった広告を信じちゃいかん」と警告しています。 8月13日付ダグスアヴィーセン紙によると、8月や1月の一斉バーゲン時期でうたってある値段は、ほかの時期の値段と変わらないのにも関わらず、あたかも「お得ですよ!」という印象を与える広告作りが、消費者オンブッドによって指摘、広告の中止を訴えています。 9並びの値段設定を始め、いずこの国も同じ事情ですね。 ●「パパ、家から追い出さないで!」と訴えるイタイケな46歳男性 中古ニュースのオンパレードにお疲れ気味の皆さん。我慢して下さい、これで最後です! タブロイド系の新聞、ダーグブラーデ紙(8月8日付)に髪の毛の寂しいコワイ顔の中年男性(46歳)の写真が大きく載っています。 写真は西ノルウェーに住むローラン・ヘッゲム(Roland Heggem)氏。彼は、46年間の生涯、一度も両親の家から引っ越したことはありません。20歳前後には親元を離れるのが一般的な、ノルウェーにおいて珍しいケースです。 可愛かった息子も今じゃ、全然可愛くない中年になってしまい(失礼!)、父親は、弁護士を通じ、「家から引っ越して欲しい」趣旨の手紙を、2回ほど息子に渡しています。ちなみに息子は、一度も家賃を払ったことはありません。地元の裁判所からも、「家から出るように」と決定された息子は、「もし家から追い出されたら、もう2度とこの村には戻ってこない。俺は、自分の生涯で一度しか引越ししないと決めてるんだ」と同紙に語っています。全然、イタイケじゃないですね〜。 地元の保安官もこの珍事件には参っているようですが、保安官によると、ちゃんとこのローラン氏は、自治体のアパートが提供される運びになっているとか。いい加減、出て行きましょう! ←話題のトップへ戻る |
ノルウェートピックス【19】 |
・女性でも「パパ育児休暇」を取得できます ノルウェーの先進的な家族政策の例として、男性の育児休暇制度(「パパ・パーミッション」)と、同性愛者間の婚姻関係を公的に認める「パートナーシップ法」が、よく引用されますが、今回ご紹介するニュースは、その2つをくっつけたようなケースです。 10月14日付ダグスアヴィーセン紙によると、ベルゲンで暮らすある女性が、勤め先の病院に「パパ育児休暇」を申請し、有給2週間の休暇が認められたと書いてあります。 「どうして女性が、そんな休暇を取れるの?」と、?が浮かびますが、彼女には認められる事情がありました。 今回の取材で彼女の名前などは明らかになっていませんので、仮にAさんとしましょう。 Aさんは、女性であるBさんと事実婚の関係にありますが、そのBさんに女の子が生まれました(どういう経緯でBさんが妊娠したか、などの詳しい事情は記事にありません)。 出産後のBさんと彼女の娘と一緒に、多くの時間を過ごしたいと願ったAさんは、勤務先の病院に、「パパ育児休暇」を申請し、認められたというわけだったのです。 「パパ育児休暇がちゃんと認められて、とっても嬉しい。雇用者には、本当に感謝しています」と、Aさんは喜びを語っており、自分たちと同じような同性愛者のカップルも、思い切って職場で「パパ育児休暇」を申請してみるように、と勧めています。 今回のケースに関して、子供・家族大臣のカリータ・B.オールハイムは、「異性・同性カップル間に、寛容と平等が増してきたことが、今回のケースと一致するでしょう」と、積極的に評価し、同性愛者のカップルでも、「パパ育児休暇」を取得できることを、もっと公に知ってもらえることが重要とのこと。 全国的な組織である「同性愛者解放全国組織」(すごい硬い訳になってしまってすんません)のリーダーが、やはり今回のケースに「同性愛者の権利獲得に向けた闘いにとって、とてもすばらしいケースだ」と喜びのコメント。リーダーは、類似のケースを知らないとのことで、もしかしたら記念すべき「第一号」だったかもしれませんね。 今回のケースは確かに、「大きな一歩」ですよね。が、このAさんが、記事で名前も写真も出したくないと言ったのは、この1件で、彼女の同僚やご近所で、派手に噂が飛び交ったことが原因とあり、制度が整っていても、人の偏見や意見を変えるまでには、まだ時間がかかるのだな、とも思いました。 何はともあれ、このAさんBさんとお嬢さんが、これから幸せに暮らしていって、「同性愛者が親なんて、子供がかわいそう」、といった意見(キリスト教民主党の党首による発言)を、変えることにつながって欲しいもんです。 ←話題のトップへ戻る |
ノルウェートピックス【20】 |
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・秋の国政選挙の結果と新内閣誕生 え〜と、もう1ヶ月以上前のことですね。ノルウェーで国政選挙があったのは。 投票結果はすぐに出たのですが、保守・中道政党の連立内閣確定までに、紆余曲折がいろいろあって、「もう付き合ってられん」と、私もあまりニュースをチェックしなくなってしまったのですが、とうとう10月19日。新内閣の閣僚メンバーが、国王のもとへ挨拶に行き、ようやく新閣僚の顔ぶれが、わかりました。 最初に、選挙の結果から。
前回の得票率と比べて、お分かりの通り、労働党がかなり得票率を下げました。歴史的な大敗だったそうです。それとは対照的に、保守党が予想通り、票を伸ばしました。また左派社会党は、前回に比べて2倍以上の得票率で、躍進を果たしました。 なお、投票率は74.5%。日本のそれに比べると、とても高い数字に見えますが、なんと戦後最低の水準だったそうです。 また気になる女性議員の割合は、35.8%。前回が36.4%だったので、微減でした。 と、こんな感じの選挙結果でしたが、組閣作業は、躍進した保守党が、キリスト教民主党と自由党と保守・中道内閣を目指し、ぐずぐず進みました。 新閣僚は以下の通りです(年収・資産は、1クローネ=14円で計算)。
全閣僚19人中、女性閣僚は8人ですので、割合は42%(前回と同数字)。今回も、女性が男性を上回ることはありませんでした(今まで一度もありません)。 首相は、キリスト教民主党のボンネヴィークになりましたが、その他、外相や財務、防衛などの主要ポストは、やはり選挙で大勝した保守党が押さえているのが、注目です。 その他の特徴としては、閣僚の出身が、オスロやその周辺地域が多く、北ノルウェーからの閣僚は一人だけになっています(都会派内閣?)。 閣僚の年収や資産ですが、日本の政治家に比べたら、「清貧内閣」と言えますね(大体、ノルウェー人の年収が300万円くらい)。ただ、民間出身の閣僚は、さすが!の年収ですね(運輸・通信大臣)。でも、資産ゼロの閣僚が、かなりいますが、計算方法が日本とは違うのでしょうか? 最後に新内閣が抱えている問題点について、まとめましょう。 まず、10月21日付ダグスアヴィーセン紙によると、新漁業大臣は、「フリーメーソン」のメンバーということがわかり、左派社会党などは、「特定の団体や個人に便宜を図ってしまうのでは?」と、問題視していますが、ご本人は「フリーメーソンを辞めるつもりはない」とのコメント。 同じ日のアフテンポステン紙からは、ボンネヴィーク首相が、前回の在任中、「うつ病」にかかってしまったことを取り上げています。首相に返り咲いた金曜日、精神科医のもとへ通院していた首相は、「もう元気だ」とアピールしても、周囲の人々が、再発の予感を抱いている様子が、取り上げられています。 あれだけなりたがっていた「首相」のポストですから、早々に手放すことはしないと思いますが...。 内閣全体では、減税・民営化を唱える保守党と、必ずしも意見が一致していないキリスト教民主党の綱引き。さらに、国会運営には、労働党や左派社会党など、手強い野党に対抗するため、進歩党との同調が必要と言われています。進歩党の存在も、与党内の意見調整を難しくするかもしれません。 今回は慣れない「政治」を取り上げて、すっかり疲れました! ←話題のトップへ戻る |